本日は、「自分はダメな奴を解決する方法」というテーマでお話しします。
「自分はダメな奴」というものを、認知を変えていった結果どうなるかというと、「自分を受け入れる」ということに変わるのかなと思います。
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自分はダメな奴の反対は?
ここで重要なポイントは、「自分はダメな奴」の反対は「自分はすごい奴」ではない、ということです。
すごい奴というとキリがないので、どちらかと言うと、成功者になれば良いという話じゃないんです。
自分を受け入れることが目指す目標であって、成功者を目指すことではもちろんないんです。
成功者だけが自分を受け入れているということであれば、世の中の多くの人は自分のことをダメだと思ってうつになってるということです。
うつになっていないですからね、世の中の9割の人は。
人生でうつを経験する人は1割しかいないんです。
1割もいるとも言えますが1割しかいないわけで、多くの人は自分のことを何となく受け入れています。
それは成功者じゃなくても、ということです。
自分を受け入れられるライン
どのラインに立てば自分を受け入れられるのか、ということを考えていくと、人の役に立っているから自分を受け入れられるのか。
そもそも犯罪を犯してない、人に迷惑かけていないなら受け入れていいんじゃないか。
努力をしていること、自分は何かに対して頑張っているのであれば受け入れられるけれども、何も頑張っていないんだったら受け入れられない、結果じゃなくて過程だよ、ということです。
結果じゃなくて過程がちゃんとあるんだったらいいとか言うかもしれないけど、そもそもあなたはこんなに苦しんでいるということは、頑張っているということですよね。
「いやいや、それは頑張っていることになりません、なぜなら結果が出てないから」とか言って「じゃあ努力しているかどうかは結果で決まるんですか」と言うと「う~ん」と考えたり、そういうことです。
運・不運の問題もあります。
あとは外見の問題、例えば、綺麗とか愛されているとか、そういう外側の方で自分を受け入れられるか受け入れられないかと決めちゃう人もいます。
それって綺麗じゃなくなったら受け入れられないということですか、他の人はどうなんですか、そういうことになります。
そういうことを聞いていると、「他の人もダメだ。私は誰も受け入れられないんです。だから自分のことも嫌いだし他人のことも嫌いです。だけど他人のことを好きになれない自分が一番嫌いなんです」と言う人もいます。
こういうことを言う人というのは、摂食障害の人に多かったりしますけれど、どうやったら自分のことを受け入れられるのか、ということです。
どのラインだったら自分を受け入れていいのか、ということになります。
ただ、それが話していくと混乱したり、話していても議論が深まらなかったり、上手く行かなかったりします。
白黒思考
それはどういうことなのかということを、もうちょっと深掘りして考えてみると、結局白黒思考で判断してしまう人、というのが多いのかなと思います。
今回、白黒思考の話をします。
現実は「良いか/悪いか」で判断できるものではありません。
そもそも現実というのは、いくら理解しようと思っても理解困難なものなんです。
客観的に理解していくということはできない。
人間の認知では把握しきれません。
人間の認知よりも無意識を含めたもの、人間の脳全体でやっても、まだまだ全然世界のことって把握できません。人間の意識だけではとてもではないけれど現実は把握できないです。
人類がどれだけ生存して、どれだけ科学を発展させても、現実というものを本当の意味で理解することはたぶん無理だと思います。
できたとしてもAIが勝手に理解しているだけであって、人間の認知としては理解できないと思います。
それは置いておいて理解困難なんです。
そもそも現実というのは色々な要素があるから。
けれども、その人の頭の中では白と黒で判断しようとしてるんです。
だからどうしてもズレが起きちゃう。
ズレが起きるにもかかわらず、現実を理解しようとするのではなくて、白黒で判断したりしようとするし、できないからストレスになっちゃう。
白黒で考えようとするからバリエーションが少ないんです。
多様性が生まれてこないんです。良いか/悪いかでしか判断しないから。
ちょっと良い、ちょっと悪い、こういうパターンもあるんだ、好きでも嫌いでもない、色々なパターンがあるはずなのに、それがやけに単純化されちゃってるということになります。
そうするとうつっぽくなってしまうし、うつになればなるほど、より視野が狭くなって複雑なことを考えることができなくなりますから、やはり白黒思考が強化されるという悪循環が生まれる。
なので、多様性の理解が不十分だったりします。
うつの人もそうだし、発達障害の人もそう。
摂食障害の人とかも結構ありますけれども、とにかく白黒で判断している限りは、自分のことを受け入れたりすることは難しいし、逆に自分は優れてるんだと言って変な万能感に浸ってしまうこともあります。
世の中というのはもっと多様性があって、バリエーションで理解しなきゃいけないんだけれど、なかなか人間はそういうことは難しいようです。
精神医学に関心がない人も多かったり差別が多いのはなぜかというと、自分たちだけじゃなくて相手側も白黒思考で考えているし、あまり多様性ということを理解していないんです。
だから多くの人は差別や偏見を持ってしまう。それは僕もそうだし、皆さんもそうだし、皆さん以外の人たちもそうです。
そして、より白黒で判断しやすい我々精神科の患者さんたちは、うつになりやすいということなのかなと思います。
自責的ですしね。
これが他罰的だと、上手く逆に社会に適応していたりもします。
なぜ現実を理解しないのか?
じゃあなぜ人間というのは頭が悪いのか、人間は現実を理解しないのか、白黒で考えがちなのか、ということを考えてみると、複雑に考えたらすぐに判断できないからです。
人間が現代で生きている状況は特殊なわけであって、もっと長い時間サバイバル生活をしていたわけです。
動物に襲われたら食われる、自然の脅威に対してパッと判断してパッと動かなきゃいけない。
ライオンが出たと言ったらすぐ逃げなきゃいけない。
そういう時に、白じゃない、黒じゃない、という考え方をしていたら追いつかないです。
これはギリギリ黒かもしれないから逃げないでおこう、これは黒に限りなく近いから逃げたほうがいいかな、そういうことを考えていてはダメで、白か黒か、ヨシ逃げよう、ヨシ大丈夫だ、みたいな形で考えなきゃいけないということです。
あとやはり複雑に考えていたら、過酷な自然の中では生きていけません。
僕はYouTubeでサバイバル動画見るのが好きなんです。
すごい雪山の中でテント張って生活をしてみるみたいな、そういうのを見るのも面白いから好きなんですけど、ああいうことが好きな人たちが単純に考えているわけじゃないけれど、ああいう状況の中で複雑に考えたりしていたら、やっぱり生きていけないです。
だから白黒で考える、神様がそう言うからもう考えるのはやめよう、目先のことに集中するためにダメになったらダメって考えよう、そういう風に考える分には良いのかなと思います。
現代は複雑
ただ、現代は白黒で判断したら、やっぱり上手く行かないんです。
平均的にはどうなのか、偏差はこうなのか、統計的にはどうなのか、複雑なデータを複雑なまま扱っていかなければいけないので、白黒思考では上手く行かないです。
複雑なものを複雑なまま判断していくということが求められる。
ということは、多様性の状況、複数の選択肢がある状況を上手くマルチタスク的に考えていかなければいけないので、やっぱり苦しいです。
人間の本能に背くような形で思考を使っていかなければいけないので、やはりうつになる人はなるだろうなと思います。
精神科の患者さんは、炭鉱のカナリアというか、世の中の変化に対して一番最初に脱落してしまう人たちだったりするんですけれども、ここの変化を上手く取り入れられないと、やっぱり上手く行かないんだろうなと思います。
誰が悪いではなく、やはり白黒思考であることに気付いたら、白黒じゃないもの、多様性を理解していく、多様なものを多様なまま判断していくという習慣を身につけていく、そういうテクニックを脳にインストールしていくということを考えてもらえばいいんじゃないかなと思います。
今回は、自分を好きになる方法ということで、自分をどうやって受け入れたらいいのか、受け入れるためには、複雑なものを考え、複雑な状況を受け入れて、好きか嫌いかではなくて、ほどほど好きだな、ほどほど嫌だなというものを入れながら、自分を妥協して受け入れていくことが重要だ、ということをお話ししました。
前向きになる考え方
2022.11.27