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発達障害(グレー)はどうして起こるのか?

00:00 OP
00:26 炭鉱のカナリア
02:10 社会変化
07:12 社会変化による発達障害への影響

本日は「発達障害(グレーを含む)の社会問題」というテーマで、なぜ発達障害という診断がこれだけ増えたのか、なぜそれが問題なのか、なぜそれが社会的な問題になり得るのか、ということをお話しします。

炭鉱のカナリア

よく精神科の患者さんは、不幸が重なって起きるんだ、不幸の連続で起きるんだ、ある種の炭鉱のカナリアなんだ、と僕はよく言います。
それはなぜかというと、社会が許容しているある種のパワーがあるとしたときに(上に行くから優れているというわけではないが)、パワーが低い人から脱落していく、社会の中で揉まれてうつになってしまうことがあるわけです、雑に言えば。

大体1~2%ぐらいの人は潰れてしまうんです。
社会が許容できない範囲と言ったりします。
でもそれがある場合の社会においては、もっとこのライン(許容の閾値)が上がってきたりするんです。

ラインが上がってきて早めに潰れちゃう人たちがいると、次はその上の層なんです。
そして次はその上の層ということがわかってくる。
これが逆に「炭鉱のカナリア」たる所以で、ここの層が潰れているということは、早くこの人たちが潰れている原因を社会課題として考えて解決していかないと、次はここ、次はここと、社会が上手くいかなくなってしまうということなんです。

残酷な言い方をすると、このラインだと許容してしまっても仕方がないのかもしれないけど、もっと上に行くと緊迫感があるというか、そういうことになります。

「炭鉱のカナリア」とは何かというと、カナリアというのは炭鉱に連れて行ったときに先に死んじゃうんです(人間が気づかない濃度のガスに気づく)。
カナリアが死ぬということは、これ以上行ったら自分たちは危ないなとわかるので引き返すことができる、それが炭鉱のカナリアということです。

社会変化

では社会問題はどういうことが起きているんだろうということを、臨床の中でいつも思っていることを語ろうと思います。

社会変化とは何かいうと圧倒的に変わったのは「スマホ」です。
スマホの時間が多いということです。
僕もそうですけど、スマートフォンに触れている時間が多いんです。

普通の人間同士のコミュニケーションが少ない、もしくはスマホですぐ調べることができる、これが圧倒的に変化を与えています。
スマホを中心に世の中の色々なものを考え直さなければいけないし、スマホのアプリケーションも変化に応じて世の中を考え直さなければいけないということが起きている。

コロナももう3年経ちますけど、コミュニケーションが減りました。
確実に減ったと思います。
僕もコロナをきっかけにお酒を飲まなくなって、本当にコミュニケーションは減りました。
逆に仕事の効率がすごく良くなりました。

コミュニケーションのあり方も変わったんです。
デジタルなところにシフトしたり、色々な人とコミュニケーションすることが増えましたけど、でも昔ながらの密なコミュニケーションは減りました。
嫉妬したりそういうもつれるような感情の交流というのは減りました。

引きこもりとかゲームというものが増えたんです。
社会的な引きこもりという形で、職場には行くけれど、在宅で仕事はしているけれど、あまり友達と遊んだりせず家にずっといる。そういう人が増えてます。

AIとかを駆使すれば単純作業をしなくて済むので、逆にマルチタスクが増えたということが起きているなと思います。

今までだったら100人がかりじゃないと作れなかった映画が、最近だと1人か2人で撮れるわけです。
100人分の仕事を1人か2人でできるということは、マルチタスクが100倍になっているということでもありますから、そりゃあ増えるよねという形です。
マルチタスクに対応できない人は潰れやすくなっているということかな。

スマホですぐ調べない人たちとのギャップというのもあるし、だから混乱している人たちというのもいるなと思います。

何か問題に当たったときに、すぐに元データ、それって本当はどういうことなの?と考え直して、スマートフォンで調べたりすることができるんです。
互いに意見が合わなかったときに、もう1回元データ辿ってみようよ、それってそもそもどういうことなの、ということを辿ることで問題解決しやすくなっているんです。本当によく思います。

僕が医者になる前後ぐらいのときは、まだ病院にインターネットがつながっていなかったので、患者さんが言ったことを本か何かで調べなきゃいけなかったんです。
だけどスマホも持つようになってきたので、患者さんが今何言ってるのかな、とわからないことがあったらスマホで調べたりしていたんです。

でも当時は診察室でスマホで調べて何かを発言したら「怪しいヤツ」という感じだったし、それどころか薬のことも処方する前にと調べて出したら「あいつは薬ことを何も知らないんじゃないか」「普通に書けないんじゃないか」と言って怒られていたんです。
でも今は患者さんに「こうですよね」とインターネットで調べた情報をパソコン画面で見せながら説明した方が信頼される医者になっているじゃないですか。

この10年くらいで全然変わったんです。
10年くらいで本当に調べることが普通になったし、逆にすぐ調べてくれない人は信用できないという形になったんです。

先日のYouTubeライブだって「わからないです。じゃあ一緒に調べてみましょう」と言って、A型作業所は最低何時間働かなきゃいけないのかと探して、そのライブ中に探して、厚労省のデータがあったのでそれをみんなでシェアして、「ああ、なるほど。規則はないけれども事業所に渡す給付金が減るから、事業所ごとにルールを出してるんだね」ということを言ったわけです。

これは僕の知識じゃなくて、調べて説明したということなんです。
調べるためには前提知識なければいけないことは確かにそうなんだけれども、でもこれだけ習慣というのが変わってきたんです。

ただ高齢者の人や上の人たちはそういう習慣がなくて、昔ながらのやり取りでやってたりするし、正しいか正しくないかはデータや何かに基づいて喋るのではなくて、記憶の中にあるデータに基づいて喋ることが多いんです。

怪しかったらすぐ調べる、そういう人もいます。
もちろんいるんだけれども、そうじゃない人たちも結構いたりしてそこでギャップが結構あるなと思います。
世代間のギャップというのはどんどん生まれているし、そのギャップに対して混乱している人もいるなというのは思います。

社会変化による発達障害への影響

こういうところから、発達障害の問題というのは出てるなと思うんです。

スマホ時間が増えてコミュニケーションが減ってひきこもりが増えたから、逆にコミュニケーションが下手な人が増えた。
今までだったら100時間かけて覚えていたもの、障害があるがゆえに時間をかけないと覚えられなかった人たちが、時間をかけられないから覚えられず脱落してしまうということが起きている。

マルチタスクが増えたからマルチタスクが苦手な人たちは潰れちゃっている。

世代間のギャップがどんどん増えているので、そこに対して、あの人にはこういう風に言おう、この人にこういう風に言おう、という使い分けが苦手な人は、やっぱり潰れてしまっているんだろうなと思います。

それがさほど下手じゃない人まで潰れ始めているというのが、今の社会的に起きていることだろうなという気がします。
このラインがどんどん上がっていっているということです。

どこまで上がり続けるのかはわからないですけど、1%が3%になるだけで3倍なので結構大きいです。
全体から見たらそんなに変わらないのかなとか、消費税も1%ずつ上がっていると増えてるのか増えてないのかよくわからないなと思う人いるかもしれないです。
でも結構じわじわと苦しむことが増えている感じです。

本当に最近そんなことばかり考えます、年末だから。
どんどん変わっていくし変化が早いし、東京と地方でも全然違うし、温度差も人によって違うし、何かすごいなと思います。

本当にシンギュラリティが来るのかもしれないです、このスピードの先には。
来ないと僕は思ってますけど。
でもスピードはもっと速くなるのかもしれないなと思います。

ということで、今回は社会問題とかそういうことについて発達障害の社会問題、という観点でちょっと雑談を述べました。


2022.12.16

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