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「自分は発達障害ではないと言い張る母親」を解説

00:00 OP
02:39 どうして変化を拒むのか
07:08 発達障害がある人にはなかなか入っていかない
10:25 全員、発達障害?
13:38

本日は「女性の発達障害と母親」というテーマでお話しします。

特に、発達障害をなかなか受け入れられない、「自分は発達障害じゃないか」というタイプじゃなくて、「自分は発達障害じゃない」と思ったり、「私は人のことを考えてるんだよ」「私は人より敏感なんだよ」と思っている人たちに向けて撮る動画です。

それはどういうことなのか、ということを説明します。
特に自分が困っていて、「でも母親もそうなのにな」と思って相談したり伝えると、反逆に遭ったりするんです。

「私、発達障害かもしれない」と言っても、お母さんは「あなた、そんなことないわよ」と言う。「だけどこうでしょ」と言ったら「いやいや、そんなことないわよ。甘えてるわよ」と言ったりする無自覚な母親。
これ、あるあるなんですよ。

だいたい臨床していても昔は母親が来ることが多かったです、私うつかもしれない、と言って。
うつ病かもしれないと思って来るんだけれども、実際これは発達の人だろうな、と思って説明に苦慮するパターンが結構多かったです。

あなたが今必要なのは抗うつ薬ではなくて、ミスが減るように、衝動性が落ち着くように、ストラテラやコンサータ、インチュニブでないの?ということを説明することが結構あったんです。

それをやると、だいたいどこかでキレられるんです。
キレられて口コミ1を付けられるんですが、これは苦慮したんです。

どのタイミングで言うかは難しくて。
じゃあ益田、それは初回から言うんじゃなくて、信頼関係が出来てから言えばいいだろう、とそういうことを思われるかもしれないんですけど、そんなことはなくて、初回だろうが、信頼関係ができてからだろうが、発達障害傾向がある人に対して全く無自覚にそういう彼らの認知を根本から変えるようなことを言ったら、ただ反発にあうだけだったりします。

これは結構難しくて、いわゆる古典的な精神医学の理解、古典的な心理学の理解では対応できないものなんです。
そこら辺をちょっとお話しします。

今日は発達障害の人の抵抗ということを中心に話そうかなと思います。

どうして変化を拒むのか

精神科は病気を治すために来るじゃないですか。
病気を治すために来るのに、どうして変化を拒むのか、ということを話します。

今の自分の主観的な世界に困りごとがあります。
これを自分が見たいように見ていたら、やはり問題解決に至らないんです。

会社の業績を立て直す、サッカーや野球で弱いチームがこれからもっと勝つためにどうしたらいいのかというと、自分はこう思うけどこういう練習したらいいなとかそういうことをやったら絶対強くなれないです。

客観的なデータをもとに、一番弱いところを補修する、もしくは得意なところを伸ばしていく。
そういう戦略的に考えて行くことが必要で、自分の見たいものじゃなくて、より客観的な世界を見ていかなきゃいけない。

それは何でもそうなんです。
科学の世界がそうだし、自分の好きな実験データを集めて論文を書いても、それは上手く行かないですから。

ダミーの情報が多すぎて、これは自分の実験が悪かったんだとか言って、理論の方を守って実験データを信じなかったりすると、やはり良くないです。

やはり主観ではなくて、客観的に捉えていくことがとても重要です。
それはメンタルの問題に限らず、どんな問題もそうです。
もちろん他のやり方があるのかもしれないですけど、現代においてはこれが完全なゴールデンスタンダードなやり方です。

客観的に見る。
そのうち、客観的なものを考えた中で、じゃあ取り得る選択肢はいくつかあるんです。
その中で一番合理的なものを選びましょう。

客観的に見てもなお「やはりこれがいいな」「ああそうか、俺って今、全然サッカー上手くないんだ。でもやっぱサッカー選手になるのは子どもの頃からの夢だから、30歳になった今もまだ諦めずに練習したいです」とかいうのは合理的じゃないんです。

やはり合理的な選択。
思いとか欲望ではなくて、現実的なものを受け入れていく。
そしてそれが社会的になっていくということでもあるし、大人になっていくということでもあるし、成熟していくということでもあるし、何より一番本人にとって楽だし幸せになれることなんです。
こういうものを、僕は患者さんには分かりやすく「主観2.0」みたいな言い方で説明します。

でもこのどれを選ぶのかというのは僕らが決めることではなくて、やはり患者さん自身が考えることだと思います。

僕らがやるべきことというのは、主観的なものをより客観的に見るためのお手伝いで、客観的なものから何を選ぶのかという候補を出したり、それぞれのメリット/デメリットを明らかにしていく、物事を整理していくためのお手伝いです。

最終的にはメリット/デメリットが7:3、6:4、5:5であっても、時には5:5を選ぶことだってあるわけです。
他の人から見たら愚かに見えるかもしれないけど、自分はこっちを選ぶよ、というパターンもあるんです。
そういう時はその人しか見えてないものもあるだろうし、尊重していくということが大事なんですけれども、基本のイメージはこうなんです。

じゃあなぜこれをできないのか、なぜ抵抗をするのか、なぜ変化を拒むのか、ということです。

拒む原因としては、古典的には主観による困りごとの把握に認知の歪みがあるからと言われます。
あとは精神分析だったら無意識とか呼ばれたり。
転移や投影と言ったりするんですけど。

正しく見えないための何か。人間の脳が持っているバイアスみたいなものがあって、そのバイアスを指摘して学ぶことで、心理学や精神分析、認知行動療法を学ぶことで、より客観的に世界が見えますよ、と。
これを言ったんです。

発達障害がある人にはなかなか入っていかない

どう行動するかというのも一人ではなかなか言えないよね、じゃあ脳のメカニズムを活かした方がいいよねと言って、行動療法とか、ゲーミフィケーション、ゲームを真似たり報酬系を意識するとか、脳がもともと持っている特性、認知心理学とも言われますけど、そういう特性を利用してやってみる。

例えば、お酒をついつい飲んでしまうのであれば飲まないように、お酒を家に置かないというのも行動療法です。
そういう形で、できるだけ止めやすいことをすることを目指していった。
これがいわゆる古典的な治療のあり方なんです。

でもどうしてもこれをやっても上手く行かない、このパターンをやっても上手く行かないということが多いんです。
あれ? 何で上手く行かないんだろう?

初学者の人は、心理士さんもそうですけれど、自分の腕が悪いのかな、自分の喋り方が下手なのかなとか思ったりします。自分にも弱いところがありますから。
あの先生ができて自分ができないのは、キャリアが足りないのかな、見立てが悪いのかな、喋るテンポが遅いのかな、早すぎるのかな、このプランニングのところが下手なのかな、と思ったりするわけです。

でも実際はぶっちゃけ関係ないんです。
仙人みたいな技を目指しても、もちろんあるんでしょうね、職人みたいな世界があって、人間技じゃないようなことも人はできたりするんです、訓練によって。米粒に絵を描くみたいな。
ああいうこともできるし、できちゃう人がいるからまた問題なんだけど、みんながそれを目指せるわけじゃないんです。

で、ちょっと嘘があるということです。
その嘘とは何かと言ったときに、現代ではわかっていることがあって、それが発達障害ということなんです。

発達障害がある人は、指摘してもなかなか入っていかない、指摘してもなかなか理解していけない。
こちら側が通常のやり方をしても、なかなか入っていかないということがわかってきた。

それは、いくら正しくやってもなかなか治療が上手く進まないケースを見ていく中で、やはり相手の立場に立つことがどうしてもできない。
それはほとんど欠落と言ってもいいぐらい、正確に言うと違うんだけれど、臨床感覚で言うと欠落にも近いような感覚があったりします。

本人も全然治す気がないので変わっていかない。
それに対してすごく無力感を抱く。
カサンドラ症候群と言ったりしますけど、夫が発達障害で奥さんがうつになるのをカサンドラと言うんですけれども、似たようなことが起きちゃうということがわかっている、ということです。

それが「お母さんはこうでしょう?」と、いくら客観視をしてもらおうと言っても全然変わっていかないんです。全然進まない。

それはなぜかというと指摘をしても進まなくて、それは元々ある生物学的な岩盤というか、そういう欠落みたいなものがあるからだ、ということがわかってきたということです。

全員、発達障害?

じゃあ益田が言うことがそうだったら、客観的に見れない人は全員発達障害じゃないかとか言われそうですけれど、半分正しくて半分間違っています。

この前、茨城の大きいクリニックでリワークプログラムのセンター長をしている作業療法士さんとちょっとお話しさせてもらう機会があったんですけど、うつ病のリワークプログラムなのに、ウチのところに来ている人はやはり半分ぐらい発達なんですよね、とそういう話をして「ウチもそうですよ」とか「あれ、ウチもウチも」みたいな感じで、みんなが「あれ、やっぱそうですよね」という感じで喋ってたんです。

今は精神医学とか心理学が普及していって、難治性と呼ばれる人たち、残ってる人たちが発達障害の人が増えているというのは臨床的な事実です。
発達障害じゃないかと言われるのは半分正解だし、半分間違いというか。
でも全体から見たらそんなに増えてるわけでもないので半分間違いだったりするんですけど、それだけ注目されているというか、それだけ増えてるというか、そういう特性がある人が困るようになっていて、それが可視化されているというのはあるのかなと思います。

僕は言論というか、人文系の言論のものを最近YouTube研究で見るんですけど、よく言うんですよ、学者の人たちが。
今の人はバーチャリティーの世界に生きている。
身体性を理解していない。
人の気持ちが分からない人が増えてる、と言ったりするんです。

でもこれは何かと言ったら、突然人間の脳の知能指数が変わるわけじゃないので、単純にあなたたちが言ってるのは、発達障害が増えてる、発達障害の話ですよね、という感じなんです。

そして発達障害が増えていて、今、それが学校教育で問題になっている、企業の中で問題になっている、それが問題でうつ病の人が増えている、そんなの当たり前の話をしてませんか、とという感じで、「お前ら知識人のフリして何も知らねえじゃないか」みたいな気持ちになるんですけど、口が過ぎました。

でもそういう時にすごくふがいなさを感じます。
トップの人、経営者の人、知識人の人たち、そうやって彼らをあがめるような中年のおじさんたちがいらっしゃるんだけれども、発達障害とかそういう困ってる人、本当の困ってる人たちをちゃんと見るということしてないなと思います。

口当たりのいい言葉ばかり言って、何言ってんだ、という感じがしてしまいます。
これは愚痴、僕の余談ですけど、そういうのは思います。

喋るつもりないこと喋りました。
これは余談なので忘れてください。
全然アドリブで喋っちゃいました。

一本槍では上手く行かない

指摘だけで治っていく、指摘や解釈だけで治っていく人たちは、やはりいわゆる普通の人たちだったり、好きな人たちです、メタ認知が高く、そういう哲学や心理学が好きな人たちがやはりこういう解釈だけでトントントンと良くなったりします。

ただ現実的にはそうじゃなくて、うつ病やそういう人たちであれば、やはり精神エネルギーそのものが枯渇してるので、認知を変えてあげるということ、自分が持っているフレームワークを1回壊してつくり直す体力がないんです。
体力はまだ回復してないので、やはりなかなか上手く行かないし、まずは治療、休養と薬だよね、ということになる。

不安障害という感受性が強い人、いわゆる医学用語ではないですがHSP的な人は、不安が強すぎるのでなかなか勇気を出せない。そういう脳の特性があるので、言葉だけじゃなくて一緒に行動してみる、変えるのを手伝ってあげる、ということをしなきゃいけなかったりもします。

あとは依存症の人であれば、やはり脳の報酬系の問題だったりするので、自分の意志の力だけでどうしても止められないんです。

客観的に見たらそうだよね、という話をいくら言葉でしても全然良くなっていかない。
報酬系をどう止めればいいのかということで、無理やりお酒を止めて、無理やりお酒を家から捨てるとか、性依存症であればお金を持ち歩かないようにする。ホスト依存症でもそうですが、親が管理する、夜の時間はつい行きたくなるのを防ぐ、そういうことがとても重要だったりします。
ギャンブル依存もお金を持たないようにするとか。

そしてできるだけやらないようにしていけば、報酬系がだんだん忘れていきますから。
そしたら我慢できるようになる。
気持ちでやめるんじゃないです。

僕もお酒を止めたんですけど、それまでは週7で飲んでたんですけど、止めたんです、3年か2年前ぐらいに。
その時はお酒を飲みたくて仕方がなかったですよ、最初は。
1日本当に、焼酎半分ぐらい瓶であけたりとか普通でしたから。

動画でお酒が出るシーンや食べ物が出るシーンは全部カットする、甘いものとかケーキはいくら食べてもいいというルールにして、ケーキを1日に2~3個食ベていましたから、ホントに。
缶ビール1本、2本買うノリで甘いデカいケーキを1個、2個とコンビニで買ってむしゃむしゃ食べてましたから。

そういうことしていると時間が経つと忘れるんですけど、それは概念を変えるとかそういう話ではないんです。
もちろんそれがそれが無駄だってわけじゃないんだけども、それだけだと上手く行かないよ、という話です。

あとは人格障害とかトラウマの問題、PTSDとか。

あと残りは何かというと、境界知能や知的な能力の問題、もしくは発達障害の問題があるのかな、と。
結局、心理学的に考えるというのも重要なんですけど、一方で僕らは医者なので、医学的なカテゴリーを使って、医学的に脳の特性を理解しながら治療していくアプローチが重要です。

一本槍では上手く行かなくて、色々変化球・応用技を使う必要があります。
境界知能の場合は言葉で理解していくということは難しかったりするので、いつまでも理解しがたいというのもあるだろうし、発達障害の場合は自分は理解した気になっているんです。
だけど欠落があるというか。

境界知能の場合は無意識ですね。
無意識で理解してることはたくさんあるんだけれども、言葉は足りないよ、という感じです。
子どものみたいなものです。

子どもって、ウチの子どももそうですけど、本当に赤ちゃんぐらいのときから空気をなんとなく読んでいるんです。
空気を読んで上手くやれます。
言葉で理解していないのになんでこれが理解できるんだろう、と不思議に思うことがあります。

ということで、今日は女性の発達障害と母親、というテーマで、どうして母親とトラブルが起きるのか、その原因はこの自覚がなくて、それはいくら伝えても伝わらない。
それは発達障害ゆえの特性、欠落的なものであり、そういうものがあるということをまず理解してもらいたい、という感じです。


2023.1.29

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