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恨みごとの多い中高年の「診断」と治療

00:00 OP
01:47 外因
03:53 内因
08:09 心因

本日は、恨みごとの多い中高年の「診断」と特徴、というテーマでお話しします。

恨みごとの多い中高年は全員病気か?みたいな感じの、なかなかアグレッシブなタイトルなんですけれども、もちろんそういうわけではなくて、人を恨みやすい人の中にこういう病気が隠れているんじゃないの、という意味でのタイトルです。
それに伴う治療法までお話しします。

精神疾患の多くは10代、20代発症のパターンが多いです。
10代から20代で発症していて、見つかるのが中高年というパターンもあるのですが、多くは10代から20代の病気で、中高年の人で精神科の病気と言うと「そうなの? 僕らもかかるの?」という気がして不思議な気になるかもしれませんが、やはり多いです。

中高年の人はどういう病気が多くて、どういう人が恨みごと、他罰的だったり、攻撃的だったりするのか、ということをざっくり話してみようかなと思います。

精神疾患というのは外因/内因/心因という分け方をするんです。
これは古典的な分け方であって、現代ではあまり良い分け方ではないんです。
科学的根拠がある分け方じゃないので。
ただ割とわかりやすいし、教育的には良いので、この分け方を使わせてください。

コンテンツ

外因

外因とは何かというと、身体の病気で脳に影響があることです。

例えば認知症です。
認知症が始まり攻撃的になる、恨みごとが多くなる。

甲状腺機能亢進症、甲状腺機能が上がっている場合は、アグレッシブになっていたりして、結果的に攻撃的なことが増えたりします。

あとは脳炎、せん妄、中毒症状のときに攻撃的になったりして、恨みごとが増えたりすることもあるかなと思います。

甲状腺機能が一回上がって行って、それで甲状腺が壊れたときにあふれてその後甲状腺機能が落ちるんですけれども、落ちると攻撃性というよりはむしろうつっぽくなるんです。
その前段階の話をよく聞いてみると、恨みごととか攻撃的な時期があったりします。
あまり受診につながることはないのですが、国試によく出ます。

皆さんにとって身近なのは認知症かなと思います。

あとはドラッグです。
ドラッグの影響でちょっと怒りっぽくなっている。
ドラッグの離脱症状です。

例えばアルコール依存症でなくてもお酒を飲んでいる人、二日酔いの時は結構イライラしています。
このイライラが人から見たら恨みごとが多いとか攻撃的のように見えることもあります。
お酒が抜けているとき、離脱症状の不快感でそうなっていることもあります。

内因

「内因性疾患」と言って、うつ病、躁うつ病、統合失調症を疑うこともあります。
うつ病の不安焦燥のときに、ちょっと攻撃的になってしまう。
躁うつ病の躁状態のときに、万能感や元気が良すぎて人に対して攻撃的になってしまう。

統合失調症やパラフレニー(妄想)の影響で、隣人が悪口を言っているんだとか、隣人が攻撃してくるという形で攻撃的だったり、恨みごとを言うことがあります。

これは結構皆さん知られているみたいですね。
この前ネットニュースを見ていると、中高年発症の統合失調症(遅発パラフレニー)の方が、空き家に火をつけたという事件が流れていたんです。

隣の家は誰も人がいないのに、「うるさすぎるんだ」と言って火を点けたというのがニュースになっていたのですが、それを見たコメント欄には、これはこういう病気なんじゃないか、精神の病気なんじゃないか、という言葉で溢れていました。

ああ、みんなよく知ってるんだなと思った一方で、コメントの中に「通院に行けたらよかったのにね(独居老人だった)」「どうやったらこの人を病院につなげられるんだろうね」というコメントは見えなかったです。
ああ怖いな、絶対触りたくないな、みたいなことを言っていました。

知ってもらう意味ではステップ1はクリアしてるんだけれども、次のステップ、どうやって治療に結びつけるかというところまでは皆さんまだ啓発されてないんだなということはわかったんですけど、そんな感じです。

今日話したかった内容はここなんです。
ちょっと変だなと思ったら、通院につなげてほしいなと言いたくて、今回動画を撮りました。
先にこのまま話を続けます。

実際、上司が急に性格が変わったみたいになって、僕に対して攻撃的になった、嫉妬するようになった、みたいなことを聞くことが時々あります。

70代、80代の会長・社長的な人が50代、60代のリーダーというか部長職に対してパワハラをするというケースで受診に来ることは時々あります。
よく聞いてみるとその社長の突然の人格変化みたいなものがあり、自分の謂れがない事件が勝手にねつ造されている、みたいなことが起きているということがあります。そういう相談を受けます。

そういう相談のときに、じゃあこういう病気かもしれませんね(本当はこういうこと言っちゃいけないんですけど、診断しないと)、こういうことを考えてるんですか、と聞くと、そうなんですよ、と言います。突然の人格変化なのでそういうことがあるのかもしれないと僕も思っていました。

ただ、全てが妄想に支配されているわけじゃないので、周りの人も否定しがたくて、そして相手はお金も持ってるから反発できないんです、みたいなことを言ったりしました。

これもひとつの社会的なテーマなんです、トピックというか。

ロシア-ウクライナ戦争が始まったときに、もしかしたら某大統領はこうなってしまったんじゃないか、こういう病気を発症したかもしれない、みたいな憶測が流れました。
その場合、謂われのないことで事件事故が起きるんじゃないか、みたいなことが囁かれてましたけど、これもリーダーの高齢化に伴う人類の課題というか、人類が抱えている問題なんだなと思っています。

心因

あとは恨みごとが増えるとしたら依存症です。
特にアルコール依存症は嫉妬妄想が起きやすいです。
アルコールの問題はちょっと怖いなと思います。

元々あったパーソナリティ障害が、上の人など本人を押さえつけるものがなくなって目立ってきたパターンもあります。
自己愛性P.D.、反社会性P.D.、境界性P.D.、そういうパーソナリティの問題が出てきたよ、ということもあるかもしれないです。

あとは神経症圏の問題です。
勘違いというか、いわゆる普通の拗らせているような感じ。
地位、お金、そういうものへの嫉妬、いわゆる心理学的な問題です。
そういうことも結構あるなと思います。

忘れられがちになるのが知的な問題です。
知的な問題や発達障害の問題も結構あるかなと思います。

部下や子供の立場からだと、親や上司の知性の凸凹や意外と抜けているところがわからなかったりすることあります。
特に発達障害と言わなくても、国語力や想像力が一部抜けている、細かい意味でのある種の欠如、欠落みたいなものは見逃されがちです。

発達障害じゃないと思いますよ、だって感覚過敏とかないですし、ルールを守れますから。
忘れ物が少ないから発達障害じゃないと思います、だけど自分で何かを考えたりレポートを書くのが苦手、自分からプランニングができない、相手の立場に立つことが苦手、そういうことで、すべての条件は満たさないんだけど、そういう要素のある人も時々いて、それがパワハラや誤解、攻撃性に変わっていることもあります。

パーソナリティの問題もそうですけど、知的な問題も、上から押さえるもの、構造的に押さえるものがなくなった結果、本人たちが自由に動いて下の人を攻撃するということも珍しくないなと思います。

あの人の性格だからなあとか、あの人は厄介だなと思っていたんだけれども、最近はこういうことも僕のおかげというか、僕のせいというかわからないですけど、精神医学の知識が増えてきて、そこに関連するのかなとか、診断には至らないけれどもグレーゾーンなのかな、と患者さんから聞かれることも増えました。

でも実際、未治療の人もいるし、変に誤解されているということも多かったりします。
攻撃しているというのは、愉快で攻撃しているというよりはやむを得ず攻撃している。すごく自分が追い詰められた感じがしてやっていることも多いんです。

某大統領にしても、自分の国が壊されてしまう、侵略されてしまうんじゃないか、という恐怖というか不安感から戦いを始めてますから。お前が悪いんだぞと攻撃性ばかりに注目して、その人の弱さや内面に関心が及ばないというのは、本当の意味で共感があるとは言えないですし、治療的な態度とは言えないんじゃないかなと思います。

だからまあ何ていうのかな、色々あります。
けれどもこういう知識を持っていただけるといいかなと思います。

親子のことは『親を憎むのをやめる方法』というKADOKAWAの本でちょっと書いたんですけれども、そこも興味があったら読んでほしいのですが、今回は認知症を発症した時に、周りの人はどういう対応したらいいのか、ということにちょっと関心を持ってもらえればなと思います。

本当に自傷他害がひどい場合は警察に通報してもらい、警察から措置入院に移行するという形もあります。
強制的な治療をしていく、行政サイドの命令による強制的な治療というのもあるんですけれども、なかなかそれに至らない場合は、どういう形で治療につなげていくのか。
これはこうしたらいいという絶対的なものはないんです。

強制的な法律はないのですが、変だな、かわいそうだな、助けてあげたいな、と思っている人は、おそらくあなただけじゃないはずなので、何かしら手段があると思います。

そのときに親がいるのか、兄弟がいるのか、家族がいるのかわからないですが、あなたが直接その人に言うのは難しいけれども、信頼してくれてる人経由で受診につながることもあります。こういうことを頭の隅に入れてもらえれば、救える人もいると思います。

ということで、今回は、恨みごとの多い中高年の診断と治療、ということで、どんな病気が多いのかということをざっくり解説してみました。

もちろん全員が全部が病気とかそういうわけじゃないですから。
こういうのもありますよ、という意味で動画にしました。


2023.2.5

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