本日は、不安に耐える力を高める、不安に耐える力をどうやって身につけるか、というテーマでお話しします。
不安にかられると困ります。
そのまんまみたいな言い方ですが、不安になると頭が整理できない、正しい行動ができない、合理的な選択を取れない、判断ができない、色々なことになります。
不安をなくすということはできないんです。それは無理です。
古今東西、不安がなくなったこと、不安をなくしたことがある人はいませんから、不安がなくなることはないんですけれども、不安をある程度抱えることができる、そして抱える力を増やしていく、ということは大事だったりします。
今回は抱える力をどうやって増やしていくのか、どうやって不安に耐えていくのか、ということをお話しします。
不安で混乱している状態とは
臨床上、不安な状態で混乱してる状態はどういう状態が多いのかというと、主に3つ挙げられて、1つはうつ状態です。
心理的プレッシャー、ストレスに長期間さらされることで判断力が低下し不安な状態である。
疲れ切っている、心身が衰弱している。
衰弱というとちゃんとした医学用語があるのでアレですが、軽い衰弱というか疲れているという感じです。
疲れている結果情動に左右されやすく、自分の理性がコントロールが効かなくて不安に耐えられないということです。
あとは体質の問題というか、環境的な変化を強いられているのか、不安を感じやすくなっている。
何度も何度も確認してしまう、強迫的になっている。
そういう心理状態になってしまっている場合もひとつあるなと思います。
不安障害、社交不安障害、回避性パーソナリティ障害、最近だとHSPみたいな言い方ですね。
HSP自体は医学用語じゃないのですが、不安に感じやすい人だよねということで理解されたり、解釈されることもあるかなと思います。
あとそもそも不安に対処する力が弱いということです。
知的に何か問題がある、精神発達遅滞、境界知能、発達障害などがあると、やはり問題を捉えにくかったり、俯瞰的に見えにくいので不安を感じたり、感情的になりやすかったりします。
問題の本質が見えないので、困ったなと思いがちです。
問題解決能力が低く自分の能力を超えていると、不安を感じたり混乱しやすいので、まああるかなと思います。
どうやって不安を解決していくのか
どうやって不安を解決していくのか、不安に対応していくのかというと、ひと息ついて、深呼吸してみて、ちょっと落ち着いてみようという感じです。
落ち着いてみて、「それってそもそも解決できる問題なんですか?」ということを考えてみるといいと思います。
いや解決できないよ、だから悩んでるんじゃないか、と言うかもしれないんですけど、解決不可能というのは、例えば死ぬ、寿命がある、ということです。
そういうのはできないけれど、本当に解決できない問題なのか、というのをもう一回考えてみる必要があると思います。
本当にその問題は解決できないのか?
もう一回冷静にやってみて、どれくらいできないのかということを考えてみる。
そうすると案外解決できる問題になることが多いので1回考えてみる。
でも本当に解決できない場合、もう明日死刑が決まってるんですよとか。それは詰んでます、ある意味。
本当に解決できない場合であれば諦めていく。諦めを受け入れる。
そして心的充足です。問題解決よりは自分の心の満足、充足を目指していくということになります。
でもここを先に選ぶことは稀で、基本的には解決できる問題なんじゃないか、どこが解決できてどこが解決できないか、ということを考えることはとても重要です。
この問題の本質は自分の問題なのか、他人もしくは組織の問題なのかということを考えることが大事です。
自分が悪いのか、もしくは自分の問題じゃなくてそもそも相手の問題なんじゃないの、ということは大事です。
アドラー心理学でも言いますよね、「それはあなたの問題なんですか? 」。
これは結構見誤っていることが多いです。
「そういえば私じゃなくてあれは上司の問題かも?」
「いや、でも私が悪いから上司は意地悪してるんです」
いやいや、それはあなたとか関係なしにみんなに意地悪しているんじゃないの?
そういうことは結構多いです。
もし自分の問題であるのであれば、もう1回それが本当にどんな問題なのかということをきちんと考えてあげる必要がある。
そもそも今自分の中でどんなことが起きているのか、自分にはどんな問題が起きているのか、というセルフモニタリングが重要です。
今、自分はどういう状態にあるのか、疲れているのかいないのか、今何が欠けていて何が足りないのか、どういうものが劣っているのか、そういうことを考えてあげる必要があります。
そういうことを言うと、いや短所はこうだけど長所もありますよね、と長所を考えがちなんです。
もちろん僕はあなたが人間として価値がない、長所がないと言ってるわけじゃないんですよ、もちろん。
だけど今、問題を考えるにあたってはどこが問題なんでしょうね、という話をしているので、問題を考えるときにはあなたの長所を並べ立てても仕方がないのです。
それよりも今何が起きているのか、何が問題になっているかを先に考えた方がいいですよね。
良いところばかりを見続けていると問題解決に至らないので、良いところも認め、良いところも確認しつつ、自信を取り戻しつつ、やはり問題点をしっかり洗っていくことはとても重要です。
そして問題の性質の見極めです。
どんな問題が起きているのか、どんなトラブルが起きているのかを見極めて整理していくことが大事です。
自分だとその問題がわからない。問題は混沌としているので、その混沌とした問題を整理して片づけていく、整理して見極めていくというのは、混沌に秩序を与えていく、秩序立てていく行為なので、これは結構難しいんです。
知識としてはあるけれど、現実の問題として知識を使えるのか?
精神医学は知っているけれど、きちんと診断できるのか?
知識としてあるけれどもこの薬が正しいと判断できるのか?
そこは結構違う能力だったりします。
ましてや今調子が悪いのであれば、なかなかできないので他人を利用したりすることが大事です。
僕も色々な人に色々なことを言って、自分でプレゼンして、こう思ってるけどどう思う? とか色々なことを言って他人の反応を見つつ考えてるんです。
「益田は天才的な感じで先を見る目があるのかな」と誰も思ってないと思いますけど。
もちろんそんな能力なくて、普段こうやってるんだよね、と色々考えながら、こうなんじゃないとか色々な人の意見を聞いて、「ああ、それがいいんだ」と思いながらやっています。
あまり理想があるタイプではなくて、どちらかと言うと色々な人の意見を聞きながらやってるタイプです、意外とね。意外とそうなんです。
すごいわがまま人間に思われてますけど(思われてないかな?)、そういうわけじゃないです。
あとはコミュニケーション能力、問題解決能力、色々あるんですが、そういう能力を高めていく。
日頃から高めていくと、やはり不安に耐える力が出てきます。
「私は誰ともしゃべりません」「そういうのは苦手だからもうNoです」と言ってると、不安に耐える力が伸びていかないです。
コミュニケーション能力は少しずつ高めることができるので、ちょっとずつでいいから溜めていく。
今まで100人中5人ぐらいにしか喋れない、あとの残りはみんな苦手だと言うかもしれないけど、それを100人中30人ぐらいと喋れるとなるだけで結構違います。
そういう形で喋れる人を増やしていくというのがいいかなと思います。
ちなみに益田はどうだと言われたら、僕なんて口コミの半分くらいは1ですから。
そもそも僕は半分くらいの人とは喋れないですからね、僕なんて本当に。
精神科医でこんなにやっていても半分の人と上手く喋れないわけですから。
まあ何て言うのかな、そもそも野球だって3割打てれば上出来なので、そういう意味でやっていけばいいと思います。
あとは他人や組織の問題なのか。
だいたい他人の問題だったり、システム上の問題だったりするので、どういうシステムで動いているのか、という見極めも結構重要だなと思います。
あの人は合う人だ、あの人はこんな人だ、ウチの会社はこうだ、というカテゴリーで考えてもあんまり意味がないと思います。
あの人は発達だからダメだ、あの人はうつ病だからダメだ、使えないとかそうじゃないんだよね。
もっと複雑なので、カテゴリーじゃなくてパラメーターで考えていかなければいけないんです。
複雑なものを考えるときに、単純にカテゴリーしてはダメで、もっとパラメーター的に考えていかなければいけないんです。
精神疾患って変じゃないか、発達障害も色々な人がいるじゃないか、それは意味がよくわかりませんと言われるんですけど、まあそうなんだよね。
もちろんその通りで、精神医学は基本的には何もわからない状態から始まっているのですが、とりあえずカテゴリーを分けるところからスタートしたんです。
脳のことがわかるにつれて、そのカテゴリーだけでは病気の解明に至っていないということはもう明らかなんです。
うつ病と双極性障害、統合失調症、自閉症、病気になる遺伝子というのは全部違うのかというと、共通するところがあまりにも多かったりするんです。
だから単純なカテゴリーじゃないということです。
それは精神疾患もそうだし、世の中にある複雑な機能を持つものはだいたいカテゴリーできずにパラメーターで分けていく必要があります。
分かりにくいと思うんですけれども。
例えば、同じカテゴリーのものというと、「精神科医YouTuber」というのも同じカテゴリーです。
僕がこの世で一番僕に似た人間は誰かと言ったら、誰だと思います?
松崎先生なんですよ。
僕が一番似ている人、僕に一番似ている人、というのは社会的に考えて松崎先生なんです。
同じ精神科医で、臨床経験があって、そしてYouTubeをやっている。そして交流がある。
これが一番近い属性なんです。
日本全国で世界中で一番僕に近い人というのは松崎先生なんですよ。
びっくりしたでしょう?
僕もこの前、その事実に気がついて驚愕したんですよね。
なのにこんなに違うんだって。
人間は一番近いはずのもの、カテゴリー分けしたら一番近いもののはずなのにこんなに違うんだと思いました。
もちろん松崎先生以外にも色々な先生がいて知り合いもいるし、お師匠さんと呼べる先生もいっぱいいます。
でもやっぱりね、益田裕介といえば、たぶん開業医、自衛隊出身のドクターと思うよりは、精神科医YouTuberと思う人は多いと思うんです。
それが今代表的な肩書きだと思いますし、それで僕は恥ずかしい、恥ずかしいかもしれませんが、恥ずかしくないと思ってますけど、その代表的な肩書きを一緒に持つ、そして一番近いのが松崎先生ですから。
そういうことを考えると日本全国の中で本当に自分と似たような人、似た人はいないんだな、と思いました。
それは別に、決して僕だけじゃなくて、多くの人がそうなんだと思います。
子どものときの友達、子どもの時の親子の関係、師弟関係みたいな、そういう理想的なものは皆さんあると思うんですけれども、それはすごく幻想的で、実際はあり得ないんです。
これだけ複雑なものなので全然同じものはない、という感じです。
そういう視点で考えていくと、私は孤独なんだなと思わなくて済むんじゃないかな、と思います。
益田と松崎先生が一番近いんだったらまあ私もそうかなとか、そんなに私と同じような人いないよな、お母さんわかってくれないよな、と思うと思います。
だってウチの親より松崎先生の方が僕のことをよくわかると思いますもんね。
同じ仕事の悩みという分野では。
それでも結構違うので、人間って不思議というか面白いなと思います。
それは年を取ってわかったというか、実際自分がYouTubeをやってみてわかったことでもあるし、面白いなと思います。
ちょっと余談が過ぎますけど、社会が可視化されてきたというか、可視化できているものが増えてきて、今までこうかもしれないなと言ってふんわりしていたものが、だんだん霧が晴れてきているというのはあるんだろうなと思います。
その中で、精神医学が日の目を見る時期もだんだん差し迫っているのかなと僕は感じています。
ということで、今回は不安に耐える力、というテーマで解説してみました。
似た仲間はいないと言いつつ、オンライン自助会やってますから。
みんな違うんだと言いつつも、似た仲間が集まって色々話し合ったり、慰めたり、少しずつ色々な能力を高めようとしてます。トレーニングをやっていますので、もしよかったらご参加ください。
心について考察
2023.2.19