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人間が生きる価値を理解する方法。功利主義や道具主義を超えて…

00:00 OP
00:28 資本主義の世界を生きている
03:33 説明がつかないこと
05:50 ただ価値があることを信じられるか
07:31 ただの現象に意味はない

本日は「功利主義や道具主義では説明がつかないもの」というテーマでお話しします。

難しいね。
難しいですけれども、よく聞いてください。

資本主義の世界を生きている

皆さん結構勘違いしてるなと思うんです。

資本主義の世界を僕らは生きているんです。
資本主義や民主主義と呼ばれる世界に住んでいて、資本主義とは何かというと、お金儲けをすることで結果的に神の見えざる手が動いて、みんなが幸せになる。
より役立つもの、より儲かるもの、経済を回すことが意味があるんだ、という形です。

・功利主義

人間の価値とは何かというと、人が幸せになるために生きている、より幸せになる行動の方が素晴らしい、価値がある、より役に立つものが価値がある、という考え方をしがちなんです。

「功利主義」というのがそうなんです。
○○より価値、幸福、意味の高いものをした方が良い、すべきだ、みたいな考え方が功利主義なんです。

自分だけではなく社会全体で価値が高まることをやった方が良い。
自分はちょっと幸せになるかもしれないけど、周りの人が不幸になるんだったらそれをやらない方が良い、社会として幸せが減るから。

自分の幸せはちょっと減るかもしれないけれども、その分3人くらいが喜ぶ、幸せになるんだったらそっちの方が良い、自己犠牲をした方がいい、その方が社会全体の幸せが増えるから、というのが功利主義の考え方です。

・道具主義

「道具主義」というのはもうちょっと単純で、○○は役立つから良いという考え方なんです。

僕はよく自分のことを道具主義だとか言ったりしますけれど、それはどういうことかというと、YouTubeは役に立つから良い、患者さんの治療に役に立つから良い、今の説明は科学的じゃないかもしれないけれども臨床的に役に立つから良い、そういう価値観というか考え方を道具主義と言ったりします。

これらはすごく現代的なんです。
資本主義との相性が良くて、お金儲けに向いてるというか、今の経済活動に向いていたりします。

説明がつかないこと

これだと説明がつかないものがあるんです。
それは何かと言うと、「人間が生きている意味」です。
これはこの考え方だと説明がつかないんです。

私はお金を生んでいないから生きている意味がない、私は人の役に立ってないから生きている意味がない、そういう考え方になってしまう。

あなたが生きていることで、あなたが将来的に子どもを産んだりするから生きてる価値があるんだよ。

あなたがやっている行動はいつか社会の役に立つかもしれない、今は無駄だと思っていることが、逆に誰かの将来に役に立つかもしれないから生きている意味がある。

あなたがいることでより有能な人が生きがいを感じて何かするかもしれない。

逆にあなたのトラブルが他の人を刺激して何か偉大な発明や偉大なものを生み出すかもしれない、偉大な成果を生み出すかもしれないから生きている価値があるんだよ。

そういう言い方で功利主義や道具主義の延長線上で語られたりすることもあるんですけど、それだとやはり理屈が合わなかったりするんです。

なぜかというと、私が感じている不幸とこれから社会に与える幸福と釣り合わないじゃないか、個人の不快と社会の幸福はどうやって比較するのか、それはわからないわけです。

経済的なもので置き換えても白々しいし、神様というものを置いたって、それはもう信じられないですからね、僕らは神様を。

だけど結局、そうじゃないんです。
そこだと説明がつかないです。
説明がつかないことの方が多いです。

ただ価値があることを信じられるか

臨床においては功利主義や道具主義を一回離れた概念は大事です。
ただただ人間というものには価値がある。
一見宗教と思われそうですけれども、「ただ価値がある」ということを信じられるか、というのはすごく大事なんです。

人間にはただ価値がある。
人間にはただ尊厳があり、ただただ価値がある。

ここの感覚に医師や治療者、周りの人がなれるのか、そしてそれを本人にもわかってもらえるのかはとても重要です。

こういう価値観があるんだということです。
ただただ価値があるというこの一点なんです。
曇りなき一点が重要だったりします。

功利主義や道具主義とは違って、ただただ価値があるとか、そういう風に思えることは重要です。

色々なものを見ていると、こうだから幸せだ、ああだから幸せになれる、ああいう人は幸せになりにくい、それは功利主義とか道具主義の展開や延長にしかすぎず、それだけだとどうしても治療は行き詰まるし、ブレークスルーを果たさないんです。

ただただ人間には価値がある、まず人間には価値があるんだ、人間は考える葦なんだ、人権というものがそもそも人間にはある、そういう信念というか、基本前提として「人間にはただ価値がある」ことを感じることは重要です。

ただの現象に意味はない

そんなこと言ったら、そもそも人間が生きている意味なんかないわけです。
人間が生きてる意味も、太陽がある意味も、輝いている意味も、宇宙が存在してる意味なんてないですから、
ただの現象なので。

ただの現象に対して人間は意味を感じるようにできているんです。
感じないと脳が情報処理できないんです。
ただただ存在しているなとか、因果関係じゃなくて相関関係なんだなと思っていたら、脳みそは破綻するんです、情報を処理できないので。

何か意味を感じたり、物語を考えたり、そういう風にしないと脳はこの複雑な世界を捉えられない、処理できないようにできているみたいなんですけれども、本質的にはあまり価値はなかったりします。

ただ現象にはまったく意味がないということと、現象には意味がある、人間が生きていることに意味があるということはほぼ等価なので、そこの部分を理解していく、ここを理解できると本当に強いなと思います。

でもここの発想の飛躍ってなかなかしにくいし、今回色々な人と喋っていても理解しにくかったり、わかってもらえなかったところなので、今回もう一回お話ししてみました。

ということで、今回は功利主義道具主義から人間に話を超えて、人間はただ価値があるということをお話ししました。


2023.3.11

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