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うつ病、適応障害になりやすい人の特徴

00:00 OP
00:31 5年前は
03:01 今はどんな人がうつになりやすいか
06:31 どうやって治していくか

本日は「うつ病・適応障害になりやすい人」というテーマでお話しします。
このテーマで動画を撮ったことは何度かあると思いますが、最新のやつをお話しします。

5年前は

僕がクリニックを開業したのは5年前です。
5年前に開業して、その時うつ病や適応障害になりやすい人はどんな人だったかというと、今と結構キャラが違ったんです。

いわゆる真面目な人がなりやすかったんです。
仕事をきっちりやる、やり過ぎちゃう、残業しちゃう、ほどほどができない、完璧にやらないといけない、働きすぎる。
あとは昇進する、出世すると緊張して、自分で自分にプレッシャーを与えてうつになってしまう人。

あとは人間関係に巻き込まれてパワハラを受けたり、妙に深刻に考え過ぎてしまう。
パワハラされてもそれを真に受ける、上手く逃げられない、相談できなかったり。

セクハラもそうです。
上司から言い寄られたときに逃げられない、そういう人がうつになりやすかった感じです。

相手に申し訳ないとか、相手に迷惑をかけるんじゃないか、そういうタイプが多かったです。

5年前に開業した当初は、なかなか通院ができなかったんです、そういう人は。
仕事を休んで通院することはなかなかできなくて、だからクリニックは夕方4時ぐらいから夜の10時まで開けていたんです。

夜10時はなぜというと、東京で一番遅くまでやってるクリニックは10時だったんです。
ウチのクリニックは東京で一番遅くまでやってるクリニックということで、夕方の4時から夜10時までやっていた感じです。
野心があったんです、そのときは。

でもそんなことやっていたら経営は上手く行かないんです。
働く人も少なくなってしまうし、働く人の幸せを考えていないから。
それで最初はそういう風にやってスタートして行ったという感じです。

徐々に雇用形態を変えていって、今のウチのクリニックは昼間が中心なんですけれども、実際のニーズも減ってきたんです。患者さんのニーズも減ってきた。
夜も働く人が減ってきたんです。

働き方改革で長時間労働が禁止されたり、会社もパワハラやモラハラに対する規律というかルールというか、セクハラに対するルールがだんだん浸透してきて、こういうタイプの人がうつになるということは減ってきたんです。

今はどんな人がうつになりやすいか

今はどんな人がうつになりやすいかということです。

在宅勤務もあるし、残業もしてはいけないことになっているので、効率よく物事をこなすことができない人が、やはりうつになりやすいんです。

他の人はパパッと要領よくやるところを「うーん」とやっていて、今までは残業して何とかこなしていたのが、残業もさせてくれないし、家で仕事するなと言われてできなくて「う~」となってつぶれちゃうという。

あとは周囲の人間と上手く関係を築けない。
これも昔っぽいやつとは違うんです。
飲み会で仲良くなれるとか、プライベートな感じで仲良くできるとか、そういう意味での「上手く関係を築く」ではなくて、仕事で必要なことを上手く頼んだり頼まれたりするという、そういう関係性を築けない人ということです。

上手く関係を築くというのも、上司に気に入られるとか、おじさん同士の恋人関係、おじさん同士なのにあたかも恋人関係のような、兄弟のような関係、ホモソーシャルな関係を築くという感じとはちょっと違う感じの人間関係ができないとかです。

あとは言語的コミュニケーション能力が低い人です。
上手くスパッと説明できる、しっかり自分の思いや考え、やりたいことを要領よく伝えられる、言葉にできる、文字化できる人たちは求められているし、それができないとやはりつぶれやすかったりします。

やはり今はSNS世代です。
見せ方が上手いとか、言葉にするのが上手い人が多いと思います。
上手い人が多いということなので、相対的にそれができない人達がやはりつぶれやすかったりします。

自分の気持ちを正直に言えばいいんだよ、と言われて「ああ、正直に言えばいいんだ」と思って、「でもなかなか正直に言えないな」と思って苦しんでいる患者さんはいっぱいいるんですけれども、そこじゃないのよね。

たぶん正直に言ったところでつぶされちゃう、だから言えなくなるわけで、ここはどちらかというと上手く交渉する技術、上手くネゴシエーションする技術が足りてないのかな、という風にいつも思ったりしてます。
最近の臨床現場ではそういう話が多いです。

これを聞くと「もしかして発達障害のひとたちじゃない?」と思う人が多いと思うんです。
まさにその通りで、発達障害ないし発達障害グレーゾーンと呼ばれる人たちが、やはりうつないし適応障害になっているというのが今の臨床かなと思います。

こういう人たちは学校生活では困ったりしていなかったりするんです。
学校現場は上手く配慮されたり、個性を大事にという形で、あまり葛藤が起きてないというか摩擦が起きていないみたいです。
社会に出てから初めてぶつかることがあって、結構参ってしまうパターンが多かったりするのかなと思います。

どうやって治していくか

こういうものはどうやって治していくのかということになるんですけれども、やはり世間全体、社会全体が「友達いない」とみんな自由に言えるようになってきたというか、日本全体がひきこもり化してるようなところはあるんじゃないかなと僕は思います。

コロナの影響もありますし、アクティブで外に出てワーワーというよりは、ひきこもっちゃう。
ひきこもっていく、一人でやる、自己完結できるみたいなものが求められているというか、求められていたというか、そういう感じはします。この3年間、少なくとも。

社会としては自己完結性が求められるし、自己完結できるようなサービスは多いんです。
映画館に行かなくても映画が観られるNetflixとか、出前を取るとか、そういうことができるようになりつつある。

かと言って、やはり自己完結していると上手く行かないんですよね、社会生活というのは。

自己完結するのではなくて、自尊心を上手くコントロールしながら、自分の心や自己中心性を上手くコントロールしながら社会と調和しなければいけないんだけれども、これがなかなか難しいんです。
どこまで自分のやりたいことをやるのか、どこまで自分を抑えるのか、自分の希望や欲望を抑えるのか、そこも上手い駆け引きが必要なんです。

自分のやりたいことはしません、相手の言う通りにします、自分のやりたいことができないならもう死にたいです、そういう話じゃなくて、上手く駆け引きをして、ちょうどいい塩梅を見つけつつ、時には自分の主張をして、時には主張を曲げたりして、上手く交渉していく必要があるんです。

きちんと交渉していく、相手の情報をしっかり取る、そしてこちらの情報をしっかり提供する。
時には自分の能力を見せる。
能力同士のぶつかり合いもあったりするだろうし、本当に国際政治と一緒です。人間関係も。
そういうところはすごく重要なんです。

でもこれがなかなか上手くインプットされていないんです。
自己完結的な社会だということもあるし、あとは主体性です。
主体的になれとか自分のやりたいことをやれという風に学校の先生も親もみんな言うから、自分を折る、社会で調和するというのが悪いことみたいに思ってしまう人も多いみたいですね。
社畜になるみたいな形で悪い言葉みたいに思われてるんですが、そうじゃなくて、やはり社会とどう妥協するのか、調和するのかはとても重要です。

この自尊心の問題は、昔の世代の自尊心とはちょっと違うんです。
昭和の世代だと、やはりエリートになるとか勝ち組・負け組というものがあったんです。
そういう言葉で自分を傷つけたりしていたんですけれども、今の人達の自尊心は、エリートとかそういうものとはまた違う、「主体的であらねばならない」みたいな呪いにかけられてるというか、やりたいことをやってないといけないというか、そういう呪いにかかってるなという気がします。

あとは「調和する」というのは、なかなか難しいんです。
年を取ると結構楽なんですけれども、10代、20代の脳みそというのは、これをやるのがとても難しいです。
社会や親に反抗的であるということが本能的にインプットされている、本能的に命じられているので、なかなか調和するというところには行かないんです。

親やそういう世代と調和するのではなく、ドパミンに支配されて友達同士でつるんだり、社会に対して怒りを持ったり反抗することで成長していくのでなかなか難しいです。
そこで過度に押し付けられると、屈服してしまうと潰れてしまいます。

かと言って社会と調和していなかったり、自分のやりたいことをやれということになると、適切な学びや教育を得られなくて、大事な時期に教育を受けずに刹那的な快感、快楽に溺れてしまう。刹那的な目標に追われてしまって中長期的な目標を達成しにくい、社会の中でどう自己実現するかという目標は持ちにくかったりするので、ここも結構難しいんです。
親が良い親か悪い親かによっても違うし、教育格差の問題もありますし、難しいなとは思います。

これは今の10代、20代の話ですが、とにかく今の30代、40代、50代にとっても今のうつになりやすい人というのはこういう特徴があったりします。

ということで、前半は特徴と治療論というか、どうやって治療していくのか、つまり関係を築くのか、自尊心を抑えて上手くやっていくのか、効率よくこなせないけれども何とかやっていくのか、そういう話をしました。


2023.3.26

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