本日は「社会に関心ありますか」というテーマでお話しします。
精神科の患者さんは、「人のことがすごく気になるんです」「相手からどう見られるかがすごく気になります」と言いつつ、気にしてるようで結局相手のことが見えていないということが多いです。
相手からどう見えるのか、相手が何を考えているか、相手のことに関心を持つことが少ないです。
「いやいや、すごく関心があります」と言って、時々ストーカーみたいな人がいなくはないですが、でもそれはもう超超超例外みたいな感じで、だいたいあまり関心がなくて自分のことばかり見ている感じです。
今回は、自分のことを見ないことが大事だよ、ということを伝えるために、こういうテーマでお話しします。
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整形を繰り返している人
たとえば整形を繰り返す人、整形依存というか醜形恐怖症の人、結構患者さんはいますけど、整形を繰り返す人は、相手からどう見えるかわからないところを直したりし始めます。
し始めますよね、と言うとアレですけど、この前、麻生先生という超お金持ちの、超有名な、超有能経営者の麻生先生、ドクターAの麻生先生とコラボ動画撮らせてもらったときに麻生先生もおっしゃっていました。
豊胸と二重の目は結構コスパはいいけれど、他の部分はほとんど自己満であまり関係ないよみたいなことを言ってました。
すごいこと言ってましたけど。
確かにね、だからそうなんだよね、相手からどう見えるか。
でもそういう人たちは相手からどう見えるかは関係なくて、自分がやりたいからやるんです、と言います。
そういう発言は、やはり精神科の患者さんぽさがあります。
精神科の患者じゃなくても、みんな自分にこだわりがあって、自分のことばかり考えてるじゃないかと言われたら、正にその通りなんですけど。精神科の患者さんだけじゃないでしょう、と言われそうですけど、でもまあそうですね。
世渡り上手は自分のことをあまり考えてなかったりします。
自分の体調
だいたい調子が悪い人、一番調子が悪い人は自分の体調をすごく喋るんです。
自分の心臓がどう動いたのか、どれくらい動悸があったのか、どれぐらい苦しかったのか、どれぐらい元気が出なかったか、ということを話すんだけれども、そこは意外と僕らは聞いても情報としてそんなに得るものはないんです。
だからと言って薬は変えられないよな、だったら薬増やした方がいいのかなと思って、そこで終わるんです。
患者さんの関心事と僕らが聞かなきゃいけないこと、聞きたいことと結構ズレていることがあります。
でもそこをずっと「私はこうで…」というときは、やはりそれだけ調子が悪かったりするのかなと思ったりします。
僕らは、調子を良くするためには、自分たちが喋りたい話ではなくて、もうちょっと別の話に話題を振っていく必要があります。
自分の内面、周りの人
今の内面です。内面や内的な葛藤はどうなのか、という話を聞き出そうとする。
内的なこと、葛藤を語っているときというのは、病気の2段階目という感じです。
体調のことばかり話すよりはいいんだけれどもでも、かといって「周りの人が…」と言っても、本当の周りの人の反応ではなくて、「投影」だったりします。
投影とは何かというと、自分が感じていることを相手が感じていると思っているだけ。
自分が腹が立って嫌いだと思っていたら、相手が嫌いだとか腹が立っていると思うような感じです。
相手が本当にそう思ってるかどうかわからないという感じです。
自分の内面のことを考え過ぎていて、ひとふねり、三ふねりとかしちゃって、何かかグチャグチャになっている。
脳の中は相反する感情、矛盾する情報が流れているので、それがグチャグチャ流れているので、目立つ感情を一個だけ取り上げれば良かったりするんです。
細かい感情を拾っていくと却って混乱することがありますから。
そこの内面に関心がありすぎて、拾わなくてもいい、自分の感情まで拾っちゃうという状態だったりします。
そして、拾わなくてもいい感情は相手にぶつけて、相手が感じているとか、本来自分が感じるべき主要な感情は、相手が感じているかのように錯覚しちゃうみたいなことあります。
ネトウヨの人たちとかもそんな感じですよね。
過去と今、未来
もうちょっと良くなってくると、自分の過去、今のこと、将来のことを語ったりします。
どちらにしても自分のことですね、これも。
周りの人の過去、身近な人の生い立ちのこと、周りの人の未来のことにはあまり関心がなかったりします。
こういうときは転移が起きることが多いです。
相手のことをよく見ている、相手のことを怯えてる、相手のことが気になるといっても、それは本当の相手を見ているんじゃなくて、過去にある自分の記憶や体験した相手を、その感情、その時の記憶の中に出てくる登場人物を、目の前の人に重ねているだけなんです。
あの上司はすごく怖いんです、嫌な人なんです、あの人のことばかり考えてます、と言ってよく聞いていると、その上司のことを考えているというよりは、過去のお父さんとのいざこざやお父さんのことを考えているとか、そんな感じだったりします。
お父さんを重ねている、「転移」だったりします。
社会のこと
ここを超えてくると、第4段階だと、社会のことを学ぶんです。
社会に関心を移すと、驚くほど多様なんです。
他人はすごい多様だし、他人は意外と自分のこと、これまでの自分同様に全然自分のことに関心ないんです。そういうのに気づきます。
そうすると、歴史、国際関係、技術、科学のことに関心が移って、そういう話をしたりすることが多くなります。
これが行き来するんですよ。
第2段階にいたら第3段階へ行って、次にもう第4段階にしか行かないということじゃなくて、行ったり来たりしながら治療は進むし、治療を終えた後も人間というのは行き来するんですけど、こういう部分を考えてもらうといいかなと思います。
あまり自分のことを考えても仕方がないんですが、そうは言っても自分のことばかり考えてしまうというのが人間だと思うので、無理やり社会のことを考えるというか、外に目を向けるということをするのが大事なんです。
前頭前野のトレーニング
本能に従うのではなくて、やはり知的なもの、理性にコントロールしてもらうということも必要なので、無理やり本能に逆らって社会のことを考える。
これが前頭前野のトレーニングだと思ってやってもらうといいと思います。
やりたくなくても、自分のことを考えたくても、頑張って外のことを考えるということです。
前頭前野とは何かというと、脳の前の方の部分のことなんですけど、これがいわゆる理性的な部分に該当するもので、ここが活性化してると感情のコントロールが上手くなるんです。
論理的に考える力も上がってくるので、不安やストレスを感じにくくなりますから、あったとしてもそれを抑える力は強くなりますから、トレーニングだと思ってやってもらうといいと思います。
そうすると認知の歪みが減ったりしますし、積み上げていく力、自分の中で自己肯定感を高めるような力、一回崩れても、自分の中の価値観やアイデンティティが崩れても、もう一回すぐ積み上げていく力が伸びてきますので、こういうトレーニングもやってもらったらなと思います。
能天気そうに見えて、案外こういう力が強かったりするんです。
自分をもう一回肯定する、自分のことを積み上げていく力があったりします。
これは別に何かを達成したからとかではなく、優勝したから自分は優れているんだとかではなくて、そういうものとはまた違った力だったりしますので、結果があるから自己肯定感が高いではなくて、自分の中で目に見えないものを信じる力だったりします。
それはどこから来るかというと、前頭前野のトレーニングから来るので、前頭前野のトレーニングだと思って社会のことを学ぶ、社会に関心を寄せるというのが大事だなと思います。
今回は、気にしているようで相手が見えていない人、特徴と対策として社会のことを考える、前頭前野のトレーニングだと思って社会のことを学ぶことの重要性を語りました。
前向きになる考え方
2023.4.9