本日は「20代女性、統合失調症のケース」をお話してみようかなと思います。
創作のケースなんですけれど、こういうパターンがあるよという話をすると、精神科医がどんな日常を送っているのかがわかりやすいと思うので、ちょっと話をしてみます。
この創作はChatGPTに作ってもらっているんです。
ChatGPTでこんな感じの症例を作ってみてくださいと言って作ってもらって、それを僕なりにちょっと肉付けして皆さんに提供しているという感じです。便利ですね。
コンテンツ
ASD? 統合失調症?
タイトルとしては「ミステリアスなASD?」。自閉スペクトラムなのか、それとも本当に統合失調症なのかと迷ったケースという形で話をしようかなと思います。
こういうケースは最近増えていると思います。
いわゆる幻覚妄想が明らかで、すごく興奮状態にある人というのは実は減っていると思います。
どちらかというと妄想がなかなか見つかりにくい、本人がなかなか言わないケースが増えていると思うんですよね。
その背景には、彼ら彼女ら自身が精神医学の知識や心理学の知識を身につけていて、これは変かもしれないから言わないでおこうとか、そういう規制もあったり、知識があるから妄想を悪化させずに受診につながるとか色々あります。
情報がない時には悪魔が取り憑いたとか、そういう妄想を抱きやすかったけれど、最近は妄想なのかどうなのかちょっとわかりにくい妄想が増えている。幻聴が増えてる感じはします。
今回のケース(創作)
一人っ子で24歳女性、デザイナー兼社内モデルみたいな、フリーのモデルをしているという感じのMikaさんという人です。
両親は長野にいて、今東京で一人暮らしをしているというケースです。
初診の時にはあまり喋らない感じ。
自分から積極的に喋らずに、すごく困った感じ。
自分ではうつなんじゃないか、調子が悪くてうつ病なんじゃないかということを言っているという感じですね。
なんかいまいちよくわからない感じなんですよね。
何でうつなのかがいまいちよくわからなくて、何で元気がないのかがよくわからない。
コミュニケーションがそもそも苦手で、だからすれ違いがあったり、嫌味を言われたり、モデルやデザイナーの業界は気の強い人が多いから、そこで揉まれて落ち込んでいるのかなと思ったという感じです。
これだけだと一人暮らしをするのが大変なので、夜の仕事もしている。
キャバクラとか水商売もしていたりするので、そういう疲れから落ち込んでいるのかな、うつなのかなと思う。
しばらく通っても良くならなくて、今度は一緒に暮らしているという彼氏と一緒に来るんですよね。
彼氏がねちょっとやんちゃ系というか、ブレーキングダウン的な感じの人だったりして、これって何なのかなと。
彼からも普段の様子を聞いたりすると、よくわからなくて、男女問題なのかなとか、もしくは違法薬物とかそういう形で調子が悪いのかな、落ち込んでいるのかなとか、なんか痩せてきて食べないんですよ、こいつ最近と言うと、摂食障害の問題があるのかなとか。モデルだからね。
いろいろ考えるんだけど本人は黙っていて、あんまり喋らないからよくわからない。
それである時に、結構通院していく中でわかるんですよね。
「実は人から悪口をよく言われているから外出できないんです」とか言ったりする。
そこで幻覚妄想が明らかになる。
「人から悪口をどこで言われるの?」
「家では言われないんだけど、外を歩くと大体ブスとか言われるんです。太っているとかよく言われるんです」と言う。
「それは歌舞伎町とかだけ?」と聞くと「いやどこでもそうです。新宿駅もそうだし、どこでもそうなんですよ。すごい言われて。電車の中でもよくいろんな人から言われて」とか言ったりする。
これは幻覚妄想っぽい、幻聴っぽいなと思っていろいろ聞くと、「ストーカーが実はいて、でもモデルだからそうなのかな」とか言ったりして明らかになってくるみたいなケースです。
治療をどうしていけばいいのかということで、ご両親を呼んだりして、東京だと暮らすのはきつそうだということで、治療の構造を見直したりするんですよね。
そうすると今度は親子問題があったりする。
長野から出てくると、父親がすごく強く出たり、母親は優しいんだけど理解がなかったり。
「だから東京なんか出ちゃダメだったんだ」とか言って。それで本人はすねちゃったりする。
親子問題をどう解決したらいいのか、キャリアの問題はどうするのか。
例えば今働けないからといって地元に帰っていいのか。
「地元へ帰っちゃったら、モデルの仕事もデザイナーの仕事も全部なくなって退職になっちゃうんです」と言って、それでいいのかとか。
やはり厳しいから入院した方がいいのか、妄想がひどいから食べられなくなってきているし入院した方がいいのか、そういう話をしたりすることがよくある感じですね。
こういう流れは結構あるあるですね。
統合失調症を疑い続けるのは基本
統合失調症を常に疑い続けるというのは、精神科医の基本です。
初診のみならず、幻聴とかそういうものを疑う要素があったら聞いていくことが大事です。
でも実際、疑い続けるのも患者さんからしてみれば嫌な感じですよね。
本人は妄想とか幻聴だと思ってないところで、外から悪口聞こえますか? 変な人から見られてませんか?とか毎回聞かれると人間扱いされてない感じもするでしょうから、どういう風に聞くのかもタイミングがある。
「ブスってよく言われるんです」と言っていたのも、もっと聞くとわかるんだけども、「職場で言われるのかな」とか「モデルさんだったらそういうことも気にするのかな」とか、「ちょっとした一言を気にするのかな」とか、なんか理解してしまうような時があります。
統合失調症はなかなか治りにくい病気ですし、薬も一生飲み続けなければいけないこともあるかもしれないので、疑っただけで薬を開始するとか、疑っただけで病名をつけるというものでもありません。
それよりも先に信頼関係をつくる方が大事だったりする。
後半に出てくるように親子問題とかキャリアの問題まで踏み込んでいって、一緒に考えていかなければいけないこともあるので、そうすると病気のことだけを主治医側が関心を持ってしまうとうまくいかなかったりもするなとか、よく思ったりしますね。
でも、最初からすぐわかる統合失調症のケースは減っていて、どちらかというと2回、3回の通院の中でなんとなく見えてくることも結構多いですね。
典型的な妄想も減っているしね。
SNSで悪口言われてるんですというのも、なんかね、というところもあります。
臨床のポイント
臨床のポイントです。
どこで治療するのか、通院しながらやるべきなのか。
薬も良い薬が多いので外来で治療できることも多いのですが、一人にしておいていいのかとかそういうのはあります。
働けなくなるとお金の問題も出てくるし、東京にずっといられるのかということもあります。
挫折体験にもなるので、東京から離れることが本人には耐え難いかもしれない。モデルやデザイナーとして1人前になるために夜まで働いていた子だからどうなんだとか。
夜の仕事をやってた時のトラウマみたいなところもあるかもしれない。
そういうものも含めてやっていかなきゃいけないので、精神科医の仕事は大変ですよね。いつも思いますね。
その人の人生とか、本当に人格ごと見ていかないと解けていかない問題だと思います。
薬物療法が中心
統合失調症の治療は基本的には薬物療法が中心で、薬をしっかり飲むことで急性期が終わるし、幻覚も抑えられます。
薬は基本的には抗精神病薬というのを使います。
抗精神病薬は定型と非定型というのがあって、昔の薬が定型ですね。簡単に言うと。
最近のものは非定型と言います。
だいたい非定型ばかり使いますね。
代表的な薬は、リスペリドン、ラツーダです。ラツーダは新薬で双極性障害のうつにも使ったりします。
あとは、オランザピンとかクエチアピン、いわゆるMARTAと呼ばれるやつです。
それからアリピプラゾール(エビリファイ)。
オランザピンやクエチアピンも双極性障害に使ったりします。
薬の副作用としては、パーキンソン症状があります。
ドーパミンが過剰に出るので幻覚妄想が起きると言われているので、ドパミンを抑えます。ドパミンを抑えると、パーキンソン病のようになってしまうんですね。
手が震えたり、仮面様顔貌とか、仮面様顔貌というのは表情がなくなる、乏しくなる。
歯車様固縮と言って固くなる。
そういうパーキンソン病のような症状、パーキンソン症状が出たりすることもあります。
あと糖尿病ですね。糖尿病になってしまうこともあるので、薬はどういう風に使うのかというのは結構難しいというか、考えどころだなと思います。
幻覚妄想が落ち着いた後も、陰性症状と言ってうつ症状みたいなのがあったり、元気が出ない感じがあったりします。
ここも治療のポイントですね。
治療導入をしっかりした後も、再発予防のために薬を使うこともあるし、今後のキャリアですよね。20代で統合失調症と診断された後にどういう仕事をするのか。今までの仕事を続けられるのか、もしくは仕事を続けられないならどういう仕事をするのか。
親元で暮らすのかどうするのか。
いろいろなことを考えなければいけないですね。
カップルはどうなるのか、子どもはどうするのか、いろいろなことを考えていかなきゃいけないし、一緒に悩むというのが精神科医療だなと思います。
答えはないですね。
今回は、20代女性の統合失調症というテーマで臨床にまつわることを話しました。
統合失調症
2023.5.22