東西線「早稲田駅」徒歩1分。夜間・土曜も診療。心療内科・精神科。自立支援対応

WEB予約はこちら

再診患者専用

03-6233-9538

予約制:木・日・祝休診

0362339538
初診WEB予約

  

再診患者専用TEL

03-6233-9538

抗不安薬と睡眠薬の依存と危険性

00:00 OP
00:58 ベンゾジアゼピン系とは
02:51 いろいろな弊害
07:05 短期使用が望ましい
08:29 テイクユアピル
09:40 なぜ長期使用に?
11:59 問題がある人

本日は「ベンゾジアゼピン系薬物の危険性」というテーマでお話ししようと思います。

いわゆる抗不安薬や睡眠薬がこれに該当するんですけれど、薬の効果とか、副作用、危険性をお話ししようと思います。

どうしてこの動画を撮ろうかと思ったかというと、結構リクエストが多かったんですよね。
危険じゃないのかとか、これを出す医者はやぶ医者なんじゃないかとか、自分は飲んでいるけど大丈夫ですかとか、インターネット上ではこの薬の危険性がすごく騒がれているけれど、本当に飲んでいていいんでしょうかとか。
いろいろなコメントをいただいているので、一度精神科医目線で、本音で、本音で語ってみようかなと思います。

ベンゾジアゼピン系とは

ベンゾジアゼピンは言いにくいので「ベンゾ」と呼びます。
ベンゾ系とはそもそも何かという話からしますね。

「ベンゾ」とは、GABA系を介して脳の興奮を抑える化学物質なんです。
例えば、不安な時や緊張している時は興奮しているんですよね。
興奮しているので、それを抑えてあげると落ち着く。動悸が収まるということになります。

寝られない時も興奮しているんですね。ちょっと覚醒しているので、ベンゾ系の薬を飲むとリラックスして眠れるということになります。

あと興奮してるというとてんかんですね。
てんかんは脳が過剰に興奮している状態なんですよ。過剰に興奮しているので、手がガチガチになって筋肉まで硬直したりするということですね。
これもベンゾ系の薬を入れることで鎮静がかかり興奮を抑えられるので、てんかんを抑えたり、てんかんの予防になったりします。

こういうリラックスさせる薬、自律神経系を副交感神経系に持っていくような薬、抑えてあげるような薬を「ダウナー系のドラッグ」と言ったりします。仲間としてはアルコールだったりします。

逆に集中力を高めたい時は、アッパーのドラッグをみんな使っているんですよ。
いわゆるカフェインですね。カフェインはアッパー系のドラッグなんです。
違法薬物だと覚醒剤とかがこれに当たります。
精神科で使うものはメチルフェニデート、いわゆるコンサータです。

いろいろな弊害

この薬は危険や依存の問題はないんですかということですよね。
もちろん薬なのであります。

ダウナー系のドラッグでアルコールが仲間だと言うように、アルコールと似ているんですよ。
アルコールほど危険ではないんだけど仲間ですね。

まず依存の問題があります。
不安な時に飲んで楽になったという経験があるので、不安になるとまた飲みたくなるんですよね。
良くも悪くも薬は効いているので、効くと欲しくなっちゃうんですよね。成功体験として脳が覚えているので。

だからそういう精神的な依存もあるし、身体的な依存もあるんですね。
お酒と一緒なんですよ、飲むのが当たり前になって飲まないと寝れなくなってしまうみたいなね。
飲んでいる状態が自分の平均になってしまうと、薬をやめるとなんか落ち着かなかったりしますね。そういう身体的な依存もあります。
お酒ほどじゃないんですないんですけど、耐性というのがある。
だんだん薬の量が増えていってしまうというのも問題としてあります。

適切な量を使っていけば大丈夫なんだけど、たくさん飲み続けると強くなってしまうんですよ。
これもお酒と似ている。
お酒も最初はコップ1杯で顔を真っ赤にしていた人が、おじさんになるとジョッキ3杯くらい飲むわけですよね。だから耐性が付いているわけです。強くなっちゃう。

だけどそれ以上飲めるかというと、みんなが大酒家になっていくわけじゃない。
たくさん飲むわけじゃないんですよ。だけど、これも毎晩毎晩飲んでいるとお酒が弱かった人もどんどん強くなりますよね。
ワイン1本空けちゃうとか2本空けちゃうみたいに。

同じようにベンゾ系の薬も、医師が定めた量よりも勝手にたくさん飲んでしまうと耐性ができてしまうという問題があったりします。
ヤフオクとかで勝手に手に入れちゃうとか、メルカリで手に入れちゃうとか。

急に飲まなくなることを離脱と言うんですけれども、そうすると離脱症状が起きる。
お酒と似ているんですよね。

今まで薬の力でリラックス側に来ているので、薬がなくなったとたんポーンと反対側に行っちゃうんですよ。飲んでいる状態で真ん中だったのが、急に飲まなくなると興奮側に行っちゃうんですね。
心臓が早くなってきて動悸がしたり、手足が震えたり、汗が出たり、緊張感が高まったり、不安感を感じたりする。

これを離脱と言います。
そわそわして落ち着かないというのがあったりします。
二日酔いの時も離脱なんですよ。お酒を飲んだ翌日は何か妙にイライラしたりしませんか?
変に攻撃的だったり落ち着かないなみたいなことがあると思うんですけど、それは離脱で、お酒を飲むことでリラックスしていたので、お酒の効果がなくなると反対側に行ってしまうんですよね。

後は認知症のリスクが上がるんじゃないかというデータもあります。
毎晩睡眠薬を使って寝ていると、認知症のリスクも上がるんじゃないかという研究データが出ていたりします。

でもこれは違うんじゃないかという意見も多いんですよね。
睡眠薬を毎晩飲まないといけない人だから認知症になりやすいんじゃないのとか、そもそも寝れてないから認知症になるんじゃないのとか、いろいろな要素が絡む。
データの取り方はどうなのとかいろいろなことがあるので、よくわかっていないですけが、そういうのも一部言われているという感じです。

これが弊害です。

短期使用が望ましい

ベンゾ系の薬というのは、基本的には短期使用が望ましいんですよ。

うつ病のひどい時とか、うつ病の治療の中でどうしても寝れないとか落ち着かない時にちょっと抗不安薬を入れるとか、睡眠薬を飲むとか、パニック障害の人で発作がひどい人にはベンゾ系を使うとかがいいんですね。

1ヶ月以内、3ヶ月以内に止めなさいというのは、国際的にはそういうルールだったりします。
ただなかなか守られていないのが現状ですね。世界的にもそうです。
勝手に手に入れてしまうとかありますので、日本でもなかなかそのようにできてないというのがあります。

睡眠薬に関しては新薬と呼ばれるものもできてきて、ロゼレム、ベルソムラ、デエビゴというのがあるんですけれども、ロゼレムはちょっと弱すぎるし、デエビゴやベルソムラだと朝に残ってしまったり、妙に悪夢を見てしまうパターンがあったりするので、「ベンゾ系の方がやっぱりいいです。しかも安いし」みたいな感じの人も多いんだけれども、できれば新薬系に移行していった方がいいよとガイドライン的には言われています。

それが問題です。

テイクユアピル

NETFLIXで「テイクユアピル」の第2弾を見ていたら、アメリカでもベンゾ系の薬は問題視されている。

若い子、10代の子は落ち着かないんですよね。
まだ理性が十分に育っていないというか前頭葉系が育っていないので、すごく不安に襲われやすい。
知識もないし経験もないからついついこういうのを飲んでしまうとか、こういう薬が必要だったり。
あと有名人や歌手、アイドルが使っていたりすると、自分もと真似する人もいるし、メキシコから違法輸入されているものを使っちゃうとかね。騒がれていましたね。そういう問題があります。

一度にいっぱい飲むと呼吸が止まったりします。
抑制がかかってしまうこともあります。

例えば、お酒と一緒に飲むとめちゃくちゃ効いてしまうんですよ。レイプドラッグという形で意識を失って使われることもあるし、お酒と一緒に大量服薬をすることで呼吸が止まり掛けることもあったりします。
だから、やっぱり薬なので危険だったりしますね。

なぜ長期使用に?

と言いつつ、なぜ現実の臨床では長期使用になってしまっているのかという話をします。

短期的にではなく、数ヶ月とか数年使っているケースは別に珍しくないですよね。
どうしてですかということなんですけども、なかなか止めにくいんですよね。
そういう問題があります。

精神科の患者さんは不幸の連続だと僕は言うんですけども、困っているのは病気だけの問題じゃないんですよね。
家庭環境だったり、人間関係だったり、恋人との関係だったり、職場の人間関係だったり、借金の問題とか、元々ある劣等感とか、自分の過去のトラウマの問題とか、いろんなものがある。

いざちょっと病気が良くなった、パニック発作がよくなった、うつがちょっと良くなったとかあっても、やっぱり現実の病気に至る原因だった現実が待ち構えているわけですよ。
そういう時に、じゃあ今から薬抜こうかと言ってもなかなかそれどころじゃないということがある。

優先順位が薬を抜くことよりも、トラウマの問題の解決だったりすることって多いんですよね。
そもそもうつ病はそんなに早く治らないですからね。3ヶ月とか半年かかったりするので、本当に急性期だけ、ポイントだけというわけにはなかなかいかなかったりします。

その後、途中で調子が悪くなったりもすることもあるし、実際の臨床ではなかなか難しいなということもあります。

あとは元々寝れない人もいます。
そういう人には発達障害の問題があるとか、睡眠リズムがずれている人もいるので、そういう人は現代社会に合わせるためには薬が必要というケースも一部あるなと思います。

問題がある人

問題がある人に対してはどうするのかということですよね。
医師の処方通り守ってくれるんだったらまだいいんだけども、医師の処方を守らない、医師のルールを守らない場合、勝手に飲んじゃう。

1ヶ月分出したら最初の1週間、2週間で飲んでしまう場合はどうしたらいいのか、ということを最後に話そうと思います。

こういう場合はなかなか大変なんですよ。1週間ごとにしか薬を出さないとか、そういう形で何とか我慢してもらうということもしたりします。

でもうまくいかないことも結構多いですね。きちんとカルテに書きながら出してますけど、やっぱり医師を逆恨みする人っていうのも出てきます。
何で出してくれないんですかとか、私の責任だからいいでしょう、先生は意地悪だとか、きちんと説明してもなかなか理解できない人たちはいます。

精神発達遅滞いわゆる知的障害の問題だったり、発達障害の問題でこだわりが強くてなかなか入ってこなかったり、パーソナリティー障害、人格障害みたいな形があったり、そもそももう明日死ぬからいいですみたいな形で希死念慮に支配されていて、漫然と希死念慮に支配されているからルールを守らないとか、そういう人もいたりしますね。

こういう場合、医師はどうすべきなのかということですけれども、やはりきちんと説明した上で出さないというのはルールですね。
その結果患者さんが怒るとか怒鳴るとかありますよ。
でもズルズル行ってしまうので、やっぱりダメなものはダメと早めに言ったほうがいいですね。

それで別の病院に行くとか転院することは珍しくないです。
後から口コミで1つけてくる人はいっぱいいますね。
それで不安だなとか医師は困ったりすることもありますけど。

後は院長に告げ口されて自分の職を失うんじゃないかとか、そういう不安に支配されて出してしまう人もいますけど良くないですよね。

その結果、他の患者さんに悪影響が出る時もあるんですよね。
「怒鳴ってる人がいましたね」「この病院に通ってていいのかな」とか、そういうこともあったりするので結構難しい問題ですね。

ただ、それでもやっぱりノーと言わなきゃいけないというのはありますね。
そのスタンスを曲げないのは結構重要だなと思います。
転院したら転院したで、そこの先生が同じようにノーと言えば患者さんは理解することが多いんですよね。
ここでもダメだった、あそこでもダメだった、じゃあやっぱり自分が悪いんだなと思うことはあるんですよ。

恋愛に似てるなといつも思っていて。
最初の恋人とうまくいかない人の方が多いと思うんですけど、別れた後に反省すると思うんですよね。反省しなきゃいけないことがあって、次の恋人ができた時も同じような失敗を繰り返したりとかするわけですよ。

最初の時にはわからないんですよね。でも同じ問題を繰り返したことでわかってくるとか、自分の問題だと気づける。
転職とか仕事もそうで、あの時はあの上司が悪いんだとか、この職場だからダメなんだ、この会社がダメなんだと思うんだけれども、次に行くとか次の次に行くと、だんだん自分のことがわかってきて、ああ自分が悪かったなと思えることもある。

でもだからこそ最初からスタンスを変えないのはとても重要だなと思います。
ズルズル行っちゃうとこういう問題が起きてきますから、やはり長期使用はできるだけ控えた方がいいけれど、きちんと保険の範囲内でやることがとても重要です。
でもそれを超えてしまうと問題が起きてしまうということです。

今回は、ベンゾジアゼピン系薬物の危険性について解説しました。


2023.6.1

© 2018 早稲田メンタルクリニック All Rights Reserved.