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40代、孤独と汚部屋の発達障害女性の治療。創作ケーススタディ

00:00 OP
01:35 ケース紹介(創作)
11:38 情緒的な豊かさ、自分の価値に気づいていく

本日は「40代女性、ASD/ADHD」というテーマで創作のケーススタディーをやってみようと思います。

発達障害の治療はどういうものなのかというと、なかなかイメージしにくい人が多いみたいですね。
具体的に言うと、どういう薬を飲むのか、どういう治療をするのかはわかっていても、実際どれくらい良くなるのかとか、いつまで薬を飲めばいいのかがイメージしにくい人も多いと思います。

創作ではあるのですが、こんな感じで治療していきますよということをお伝えしようかなと思います。
こんな感じで、毎週月曜日は創作のケーススタディをやっているので、今回の動画が面白かったら毎週月曜日に観てもらえたらなと思います。

余談ですけど、2023年4月から曜日ごとにテーマを変えて動画を撮っています。サムネイルの色でも分けるようにしていますので、興味のあるテーマが見つかったら前の週など見てもらうと学びやすくなると思います。

ケース紹介(創作)

A子さんは一人っ子。母親と離れて暮らしている。
両親は離婚している。
転職回数が多くて今は派遣事務の仕事をしている。
一人暮らしなんだけど部屋の中が汚い。独身である。

自己肯定感が低い、自尊心が低くて常に自信がない感じの人です。
自信がないから不安も多いという感じ。
ミスが多いので、何度も確認する癖がついているという感じの人です。

これまでも精神科を何回か受診するんだけれども、あなたは発達障害じゃないよとか、あなたは不安が強い人だねという形で終わってしまっていて、発達障害と診断されずにきたという人です。

でも、やっぱり発達障害なんじゃないかということで、また受診に来たというケースです。
結構いますね。
発達障害かもしれない、薬を使いたいという人は、どちらかというと若い人よりも40代の人の方が多い気がします。

ある程度年齢を重ねた人の方が自分の障害を受け入れやすくて、薬への抵抗感が低い人が多い気がします。
若い人だと薬を飲むことの怖さとか、自分が病気だとか障害があるということを受け入れ難かったりして、通院の足が遠のく人もいるんですけれども、このくらいの年齢の人だと逆に自分のことを受け入れてはっきりとしているので、通院しやすいとか受診につながりやすいケースも多いという感じです。

発達障害で受診する人というと若い人のイメージありそうですけど、うちのクリニックの場合はこの年齢の人が多いなと思います。
もちろん、僕がYouTubeをやっているからというのもあるかもしれないですけどね。そんな感じのことです。

聞いてみると、発達障害のASD受動型がメインみたいな感じの人でした。
だから受け身なんですよね。
自分から喋っていくのが苦手。わかりにくいかもしれないですけど、エヴァンゲリオンで言う綾波レイみたいな感じ。
無口キャラみたいな感じで黙っていると綺麗だし、美人な感じなんだけども、相手とうまく交流ができないし、自分も不安が強いし避けてしまうので、恋人が今までいたことがない。

仲のいい友達も少ないという感じですね。高校時代の友達が一人二人いて、連絡を取ったりするんだけども、それも月一回あるかないかみたいな感じということですね。

おそらく発達障害傾向は父親由来だったりするんですよね。
発達障害の夫だったので、母親はちょっとカサンドラっぽくなっちゃって離婚になった。
二人で暮らしていて、わりと過保護に育てたんですよね。
過保護になってしまったというか。

A子さん自身が積極性がなくて、常に受け身だったので、母親がフォローしなきゃいけなかった。
母親もこの子は自立させなきゃいけないということで、半ば強制的に母親から独り暮らしをプッシュして独り暮らしをした。

独り暮らしをしたら、今度は自分の力で母親のところに戻りたいと言うことも、なかなか言えない。
そういう主体性がないので、汚部屋ながらも一人で何とか生きている、命をつないでいるという感じです。

表面的には自立しているし、お金は稼げているんだけれども、何となく生活が破綻していたり、内面もボロボロだったりするという感じです。
ある種女性のASDの受け身型の人は、埋もれてしまって伝わりにくいんですよね。困り事が。

だから病院を何回か受診していても、あなたは大丈夫じゃないと言って突き返されちゃうということがあったりする。
よくわかりますけどね。突き返す主治医の気持ちもよくわかるんですよね。
甘えさせちゃいけないんじゃないかとか、この人の生活リズムを壊しちゃいけないんじゃないか、母親と同じような気持ちですよね。
無理に自立させた母親と同じような気持ちなんだけれども。

でもそれはなんかちょっと古い価値観というか、古い臨床の捉え方で、現代的にはやっぱりこういう人もきちんとフォローしていくことで、幸福度を上げることができるので、あえて自立させるように突き放すよりもちょっとかばってあげた方がいいことも結構あります。

転職回数が多いというのは、なかなかコミュニケーションがうまくいかなくて人間関係のトラブルがあったからだとわかります。
派遣事務で転々とするので、深い人間関係にならないから済んでいる。
出世していくのではなく、与えられた仕事を任せられてやるだけなのでやれている。

あとは部屋が汚い。
それはADHDの症状だったりします。よくあります。
ミスが多いので、ミスを防ぐために何度も確認する癖がついている人も多いです。

こういうことがあったので、発達障害と診断し、通院から半年後には精神障害者手帳3級を取りました。
手帳を取ると税金の免除額が増えるので、所得税が減るんですよ。
基礎控除分が増えるので、手取りがちょっと増えて良かったなと。

薬物療法をしつつ、ADHDの症状をちょっと改善しつつ、精神科の治療としては計画するということとか、日常のアドバイスをするとか、人間とはこういうものだよねみたいな形で情報を提供していくというか、教育していく心理教育をするというような外来治療をしていく。

通院の過程で、1年2年と経ってくると主治医のことを好きになってしまうんですね。
ご両親は離婚されているので、父親という存在がよくわからなかったり、今まで不安で男の人と喋ることが少なかったのが、一対一で喋る時間というのが定期的に来るようになってきた時に、相手に対して陽性転移を起こす。
だから恋愛感情を抱くようになってしまう。

その自分が持つ恋愛感情というか、生々しさに驚愕し、恐ろしくなってしまって調子が悪くなってしまうんですよね。
どうしたらいいかわからなくなってしまって、だんだん通院に来るのが苦痛になってしまって、冷や汗をかくようになってしまう。

だけど、自分からやめるとは言えないんですよね。主体性が乏しくて。
そういうことをしながらやっぱり転院しますという決断ができるようになる。でも、転院してもうまくいかなくて、やっぱり戻ってきているということをぐるぐるやったりする。

半年くらい来なくなったなと思ったら、また通院を再開するみたいな感じです。
主治医サイドは相手の陽性転移に気づいていても、その生々しさを彼女が今扱える段階にないなと思ったら言わないですね。

これが臨床的に扱えるテーマであれば言うんだけれども、それをもし言ってしまったら、あなたは僕に対して恋愛感情を持っているんじゃないですかとか言うとですね。
この人は壊れちゃう可能性があるんですよね。

その生々しさをダイレクトにぶつけられることで壊れてしまうかもしれないので、そこはこちら側が距離を取りつつ、しっかり距離を取って相手のプライドを傷つけないように、でもちゃんとした医療をやっていけばいいということですね。

その中で本人はその生々しさを少しずつ受け入れられるようになるんですよね。
恋人のように思う恋愛感情だったものが、実は恋愛感情でなく、ある瞬間には父親のようなもの、甘えたい父親、甘えたい両親を主治医に重ねている時もある。
冷静な時は推しという感じで、ちょっとファンですくらいに戻るのかもしれないしね。
そういうような人間の感情の生々しさを臨床の場面で味わい続けるということですね。

情緒的な豊かさ、自分の価値に気づいていく

そうなっていくと、心の不思議さということを何となく体験しながら、心の不思議さとか自分自身の中にある情緒的な豊かさに気づかされる。

それは決して生々しくて恐ろしいものではないし、非日常的で自分だけが持ってしまう欠点でも奇跡でもなく、日常だということに気づくんですね。
ああ、これが人間なんだなとか。
こういう弱さやそういうものって、自分だけじゃなくて多くの人が持っているものなんだなということを味わうんですよね。

通院の中で雑談とか心理教育の中で、裏のテーマとしてはこういうものが起きるんですよね。
裏のテーマでは、そういうことが起きていて、それを1年2年と通院していく中で味わったり考えたりする中で、自分の持っている人間らしさとか、情緒的な部分を受け入れたり、言語化していったり、手に取って眺めることができるようになってくるという感じですよね。

最初はですね。私の価値って何なんだろうとわからなかった彼女ですけれど、ある外来では自分の価値をこういう風に言うんですね。

私がいると職場がギスギスした感じが減るみたいです。それは他の同僚の人が言ってくれたんだけれども、私がいることでなんか空気が柔らかくなっていいって言ってました。だから、私はミスが多くてある種劣っているというか、足を引っ張ってるんだけども、足を引っ張る私がいることで、みんなが私を助けようという気持ちが湧く。それが全体の空気を良くしているんだということに気付く。だから劣っている人も必要なんだ、みたいなことを言うわけなんですよね。

それは一見残酷な言葉のように聞こえるんだけれども、彼女が手にした真実でもあるし、どこか温かみのある言葉でもあったりするんですよね。
この話を聞くと、ああ、同僚とも結構喋れるようになっているんだなということがわかったりもするしね。

いつまで薬を飲むのかというかどこまで一緒に伴走していくのかは、正確にはよくわからないところがあります。
発達障害という概念が出てきて、まだ10年20年ということですよね。
今みたいな精神科医療の形、駅前のメンタルクリニックが出てきたのもやっぱりここ10年20年くらいの話ですよね。

だからまだ人類はどういう形で精神科医と付き合っていくのか、精神科医療というものがあるのかは経験していないんですよね。
本当に20年30年通っていいのかはみんなよくわからないですね。
僕も医者人生まだ10何年ですよね。まだまだわからないことはいっぱいありますし、長く通院している人でも5、6年とかですから、よくわからないこともいっぱいありますけれど、でもまあ一緒に人生を過ごせるというのは、僕目線ですけど、医者人生として楽しいなと思いますね。

それは僕自身も人間の不思議さというか、人間の持つ心とか社会の豊かさを体感できるという意味でやっぱ面白いというか幸せというか思ったりしています。

今回は40代女性、ASD/ADHDというテーマで創作のケーススタディーをやってみました。


2023.6.19

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