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コールセンターで働く人必見 クレーマーの心理と対策を解説

00:00 OP
03:17 よくある疾患
12:28 対応策

本日は「クレーマー」について解説しようと思います。

主にコールセンターで働いている人向けに、クレーマーの人とどう付き合っていけばいいのかを精神科医目線で語ってみようかなと思います。

クレーマーの多くは、精神疾患を抱えている可能性が高いという研究や論文があるんですね。
実際僕もクレーム対応もしていますし、いろいろな会社の人と話すことがあるんですけれども、実際そういう病気を疑うことも珍しくないです。

なのでそういう話をよく会社の人と喋る話をここでもしたいなと思います。
こういう話をすると差別じゃないのかと言われそうなんですよね。言われたりとか、偏見を広げるんじゃないかと言われかねないなと思います。

「お前ね、診断してない人のことを勝手にそう言うなよ」「喋っただけの人に対して、勝手に素人が診断していいのか」とか言われるかもしれないなと思うんですけど、診断しろとは僕は言っていなくて、こういう病気の可能性があると考えることは重要だと思っています。

それは結局、心というのは脳でできているんですね。
脳は病気になるんですよね。病気の知識をみんなが持てば早期発見につながるし、早期発見することで早く受診につながるかもしれないんですね。

クレーマーの人たちは意地悪をしたいとか、そういうつもりでやっているわけじゃないんですよね。
助けてほしいという訴えだったり、苦しいという訴えだったり、こうしてほしいという訴えなんです。

その訴えが合理的じゃない場合、病的なものが隠れている可能性があると。
病的なものが隠れているのであれば、こちらは知識があるなら勧めてあげる義務があるのかなと僕は思います。

クレームがどんどん悪化していくんじゃないかという時には、その結果、自傷他害の恐れがある。例えば、それで怒りになっていって事件になってしまうとか、逆に自分で追い詰められてしまって、自分を傷つけてしまうことになった時は、やはり治療的関与がないからですよね。

だから僕は精神科医としてこういうことがあったら病気の可能性があるから専門家に相談してみたらどうですかとひとこと言えるような仕組みを作っていきたいし、社会もそういう風になってほしいと思っているという感じです。

と言いつつ、クレーマーの種類やタイプをいろいろ話してみようかなと思います。

よくある疾患

まず精神科医目線で言うと、クレーマーの人に本当に合理的ないわゆるサイコパスと呼ばれる人たちはいないと思いますね。
陥れてやろうとか、知能犯みたいな人たちはクレーマーにはなりにくいんじゃないかなと僕は思っています。

一回ぐらい電話をするとか、2、3回追い詰めるような電話してくることはあっても、継続的に何度もしてしまうことはないですね。
こういう共感性が低くて反社会的なことも躊躇なくできて、自分の利益を中心に動く人たち、自己中心的な人たちはやはり合理的なので、喋っても無駄だなと思うとやらないんですよね。
クレーマーにもならないので、非合理的という時点で、また別の要素があるんじゃないかなと考えたりします。

うちのクリニックもそうだし、自助会もそうだし、よくある疾患というのはここら辺かなと思います。

まず精神発達遅滞、知的障害の問題ですよね。
なんかよくわからない、よくわからないから訴えるしかないと思って、何度も電話をして自分の意見を聞いてほしいと言うパターンがあります。

こちら側が説明しても、相手はやっぱり理解できないんですよね。
理解ができないので何度も何度も電話してしまうというパターンがあったりします。

この場合はどうしたらいいかというと、本人の目線に立ってわかりやすく説明してあげる必要もあるし、できないことはできないというルールを明確にして伝えることも重要です。

例えば、これ以上電話が長引くと対応できないので、当社では15分以上のお話は控えさせてもらっていますとか、切らせてもらいます、みたいな感じをしっかり言うといったことが大事かなと思います。

似たものとしては発達障害ですね。
ASD/ADHD/LDとかありますけど、こういう人たちも理解しにくかったりするし、自分の考えを変更したり、変えることは苦手なんですね。
ASDの人が特にそうですよね。自閉スペクトラム症の人は、自分のこだわりがあって、怒っている時にそのこだわりをなかなか変えることができないんですよ。

なのでその人にも話を聞かなきゃいけないし、しっかり本人にわかる形で説明しなきゃいけないというのがあります。
特性を踏まえて説明することが重要だったりします。

話が飛んでしまったり支離滅裂になってしまうのは、ADHD傾向があるかもしれないので、その場合だと一回話を戻してここからもう一回話しましょう、みたいな特性を踏まえた喋り方が必要です。

あと書いているので読んでください、ということもあるかもしれないけども、LDの人もいるんですね。学習障害の人とかもいて、文字が読めない人とかもいたりします。
なのでやはり口頭で伝える必要がある。

今度はASDの人たちは、耳から入ってくる情報を整理するのは苦手だったりするんですね。
書いたものを見せないとわからない時もあるので、その場合はホームページを見ながらここを読んでくださいとか説明しなきゃいけなかったりしますね。

あとは強迫性障害ですね。
強迫性があって、確認しないと落ち着かない人はいるんですよ。
例えば、食品メーカーだったら○○という薬品は使っていませんか? そういう噂があるけど使ってませんよね?とか。当社では安全性に配慮してこういう添加物は使ってません。ご安心ください。といって安心して終わる。
だけど、また30分とか1時間経つとやっぱり不安になってきて、確認したくて仕方がなくなっちゃうんですよね。
さっきも聞いて申し訳ないんですけど、もう一回教えてもらえませんかとなるパターンもあります。

この場合はもう病気の症状なので、本人がやめたいと思ってもやめられないんですよね。
これは治療が必要だったりするし、薬物的な治療が必要だったりしますね。
本人もそれが病気だとわかっていなかったりするので、アナウンスをどういう形でするのがいいかわからないですけども、伝えていくのが重要かなと思います。

あとはパーソナリティー症としては、自己愛性パーソナリティ症と呼ばれるものがあって、すごく自分のことを偉いと思ったりとか、自分は優れていると思う人ですね。
こういう人たちがクレーマーになる場合があったりします。
これは本人のプライドを傷つけないように、できないことはできないとしっかり伝えつつ対応していく必要があったりします。

境界性パーソナリティ症の人もいるんですけども、こういう人たちも同じで、できないことはできないということを伝えていくことが重要だったりします。

あとは妄想ですね。被害妄想を持つ場合、統合失調症とか妄想性パーソナリティ症と呼ばれる人たちもいます。
お前のところが盗撮しているんだろうとか、お前のところが私の個人情報を引き抜いてんだろう、嫌がらせしているんだろう。
いやいやしてませんよ。いや、わかってんだ。こっちは証拠だってあるんだ、とかいうパターンですね。

これは統合失調症の幻覚妄想の可能性もあったりするので、これも薬物治療をすることで良くなったりします。
この場合も、話をずっと聞いていても治療は進まないんですよ。
例えば、当社では精神疾患メンタルヘルスの普及をしていくことをポリシーとしています。
当社は盗撮はしていません、でもそういうことを訴える人たちの中でこういう病気を疑うこともあります。なので専門家の人に相談してみたらいかがでしょうか、みたいな形で伝えることは決して差別しているとかではないんじゃないかなと思います。

そうしないとやっぱり苦しいんですよね。本人も苦しいから電話しているので、きちんと病院につながって治療を受けることで、この苦しみから解放されるので、やはり薬物使用は大事だと思います。
これが電話だけで良くなったりしませんね。会話だけで良くなることはないですから。

もしそれだったら精神医学は不要とは言わないけど、こんな風になっていないわけで、僕らは本当に話を聞くよりも薬を出した方がいいとわかっているからやっているんですよね。
精神科医は本当にそうですよ。医療従事者はね。

どういう形がいいかわからないですけども、社内のマニュアルを見直しつつ誘導してあげることがいいんじゃないかなと思います。
コールセンターで働いている人たちにとっても、精神衛生上良いと思うんですよね。

ちょっと余談が続きますけど、自分たちもただ切るとか、ただ意地悪なことをしていると何か罪悪感を持ったり、嫌な感じになるんですよ。
そうじゃなくて、この人たちは苦しんでいるし、電話してくれている、だけど自分たちは医療につなげることで、この人たちの悩みが解決するんじゃないか、楽になるんじゃないかということをすることで、1時間とか30分クレームを聞いていた時間が、でも治療的な関与ができたとなると、働いている側も辛かったけども、社会貢献できたなと、メンタルヘルス上いいんですよ。
だからそういうことも考えてもらえたらなと思います。

あとは双極性障害の躁状態ですね。
躁状態になって元気がありすぎて、そして攻撃的になって細かいところが気になって、いろいろなところにクレームをかけたりとか、攻撃的になるパターンもありますね。

いろいろなところに電話をかけまくっちゃうとかあります。
躁状態はすごく元気で3日寝なくても大丈夫とか言う人もいたりしますね。
だから閉鎖病棟で治療しなきゃいけなかったりするんですよ。躁状態の程度は人それぞれですけども、激しい人はそれぐらいもうずっと元気だということですね。

年に1回か2回、突然元気になって電話をかけ続けるようなタイプのクレーマーの人はこの可能性があったりしますね。
躁状態の時はめちゃくちゃ頭の回転が速くて頭も良くなるんですね。
IQもメチャ上がるみたいな感じなので、もう何を言っても言い負かされちゃうんですよ。
そういう時はやっぱり躁状態を疑ったりします。

あとは認知症の人、特に前頭側頭型認知症の人でクレーマーっぽくなる人もいたりするので、これも治療の対象になったりしますね。

クレーマーの人たちの中には、やはり精神疾患の患者さんがいることは否定しがたいと思います。

対応策

コールセンターなどで働く人たちは、事前にこういう研修を受けて知識を得ておくことが良いと思います。
突然何か言われたり、突然会うとびっくりしちゃうし、傷ついちゃうわけなので、事前に研修することでダメージは減らせます。

これはよくやるんですよ。僕も自衛隊のときにやっていましたけど、例えば被災地に行くときに、何人かはPTSDになるかもしれませんとか、何人かは辛くてうつになるかもしれません、だけどこういう治療すれば良くなります。だから、チームのメンバーは周りのメンタルの状況も見ましょう。

怪我や疲労状態を見るだけでなく、心の疲労状態も上司の人やみんなで互いに注目して、互いにケアしあいましょう。そしてそういう風に落ち込んだりPTSDになった人たちは、心が弱いんじゃなくて、病気というのはそれぞれ起きるんですよということですよね。

別に正しい食生活をしていたり、たばこを吸わなくてもがんになる時はなりますから。それと同じですから、そういうことをしっかり研修してフォローし合える体制をつくっておく。

そしてマニュアルも作っておくことが大事ですよね。
こういう時はこうしましょう、15分以上電話が続いたときにはこうしましょう、こういう人が来たときにはこういう対応しましょうとか、パターンを事前に作っておくといいと思いますね。

だから電話しているときに自分で考えてやろうとするとパニクってしまうので、このマニュアルを読めばいいんだといってマニュアルを開いて、マニュアルを見ながら対応していったりするとやりやすいかなと思います。

あとはフォロー体制ですね。
長く30分とか1時間つかまっていた場合、「話を早く切らなきゃだめよ」とか上司の人が、「こっちだと忙しいんだから、そういう人はうまく切らなきゃダメよ」みたいな感じで言われると傷つくわけですよ。
そうじゃなくて、1時間大変だったねとか、30分大変だったね。どういう人だったの?とかフォローをする。

後はそんなにいらないですと言っても、こういうシステムとして気にせずに聞いてねとか言ってくださいねと言って、1時間経ったからシステムとして休憩時間を持っているから、1時間大変だったから、今から10分間休んでいいから気兼ねなく休んでねとか、そういう体制を作っておくのがいいですね。

あとはルールを明確化しておくことですね。
例えば、精神発達遅滞や発達障害の人、強迫性障害の人もそうですし、自己愛の人もそうかな。いわゆる妄想とか躁状態でない場合、きちんと文章で書いてたりホームページにあったりするとわかってくれたりすることもあるんですね。
わからないからやってもいいんだと思ってやっちゃうこともあるので、対応はここまでですよとか、我々ができるのはここまでですよとか、30分以上の話はできないので、30分というルールにさせてもらっていますみたいなことを明確化しておくといいと思います。

そうするだけで、全部を消すことは無理でも減ると思います。クレームの数が。
クレームの数というか相談したい人の数が減ると思います。

あとはきちんと受診が必要な場合はつなげるということですね。
でもこれはかなりデリケートな問題ですね。

組織としてどう振る舞うべきなのかはとてもデリケートなので、もし丁寧にやるのであれば、きちんと倫理委員会を作ることが重要かなと思います。
多職種で倫理委員会を作り、マニュアル化していく。
こういう場合はこうするというのを決めておくことが重要かなと思います。

個人とかその場の長に任せるのではなく、社長も含めて倫理委員会をきちんと作って、そこで我々の組織がどういう風に振る舞うのか、我々の組織は精神疾患というものをどう考えていくのか、どういう風に伝えていくのかということを考えておく。
そして方針を立てておくことが重要だと思います。

厄介な人が来たな、でも冷たくしたら怒って問題を起こすかとか、自分を傷つけてしまうんじゃないかと思うかもしれないですよね。実際、あると思いますね。
躁状態の人に対してひどく言って大げんかして、躁の時は良いんだけども躁が落ち着いてきてうつになった時に、自分はひどいことをしてしまったんだ、私は最低な人間だと思って、うつのときに自分を傷つけちゃうとかね。

妄想状態の人に対して、電話をガチャっと切られた、やっぱり監視されているという俺の考えは正しかったんだ。正しいから俺の話を聞かないんだ。
今から俺を殺しに来るかもしれない、と妄想を発展させちゃうこともあるわけですよ。
それで自分を傷つけちゃうとか、やられる前にやりに行かなきゃと思うかもしれない。

強迫性障害で、確認することで何とか不安を抑えていたのが、確認できなくなった途端、やっぱり不安と混乱で頭を支配されて、自分を傷つけちゃうこともあるかもしれないんですよね。

だから言わないというのもやっぱり良くないと僕は思うので、電話に出てる瞬間とか電話の時の勢いとか攻撃性だけがその人のすべての姿ではなくて、電話を切った後の本人というのはそんなに攻撃的でなかったり、びくびくしていたり、傷ついていたり、疲労感で疲弊して涙を流しているかもしれないので、そういうことも踏まえて伝える。

だけど、こちら側が全部はできないので、限界設定もありますから。
限界設定をきちっと設けてやれる範囲で、そういう人にケアをしていくことが重要じゃないかなと思います。

もし企業の方でどうしたらいいのかお困りのときには、僕も対応していますので、toiawase@wasedamental.comにメールしてもらえれば、僕も自分のできる範囲ですけどご相談に乗れるかなと思います。

大きい会社では産業医の先生がいると思うので、産業医に先生とこういう話を一回してマニュアルとか倫理委員会を作っていくのがいいんじゃないかなと思いますね。あと研修とかもね。

今回はクレーマー対策、クレーマーの人を解説しました。


2023.6.24

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