本日は「孤独がつらい、嫌なことばかりを考える」ということをテーマに、解決策を一緒に考えていけたらなと思います。
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孤独は苦しい
孤独というのは原則苦しいです。
一人でいて誰もいない。
不在に耐えるというのは結構苦しいんですよね。それはなぜかというと、人間というのはもともと群れの動物なんですよ。もともとというか、今もそうですね。
群れを作って生きるので、一人でいると危険だと思うようになっているんですよね。
その証拠に赤ん坊や子供は一人でいると泣き出してしまうし、僕らも異国の地や慣れない場所で一人でいるとちょっと心細くなったり、不安になりますよね。
本質的に人間というのは孤独はきついし、誰もいない状況は耐えがたいんですよね。
もちろん、発達障害自閉スペクトラム症の人とか、シゾイドパーソナリティと呼ばれる統合失調症のようなパーソナリティーの人、シゾイドと呼ばれる人格障害の人とか、対人関係でトラウマがあったりとか、不安が強い人は一人の方が楽だったりします。
それは脳の特性上そうだったりするし、一人でいるよりも他人といる時の方が苦しいので、相対的に一人でいる方が楽というパターンもあったりするんですけども、基本的には一人でいることは苦しいということです。
苦しい時、不安な時は不安なことを考えがちです。
そういう感情の時には嫌なことばっかり考えがちです。
嫌なことをぐるぐる考えちゃうということはよくあるんじゃないかなと思います。
ずーっとぐるぐる考えて寝れなくなっちゃう人もいると思いますね。
寝るためにわざとYouTubeをつけっぱなしにしてラジオを聴いたりすることで、何も考えないようにして寝る人も結構いたりしますね。
速い思考・遅い思考
どうやって解決していくのかということです。
「そもそも、ずーっと考えちゃうんです」と患者さんはよく言うんですけども、それは考えてるんじゃなくて悩んでるんじゃないの?という言い方をしますね。
本当のことを言うと「考えている」のと「悩んでいる」ということは違うんですよ。
「イシューから始めよ」という本を書いた安宅さんも違うと言ったりしているんですけども、じゃあその違いはどう違うのかを端的に説明するのはなかなか難しくて僕も臨床上結構苦慮してたんですね。
どういう風に伝えたらいいんだろうとよくわからなかったんだけれども、最近ダニエル・カーネマンという社会心理学者で経済行動学でノーベル賞を取った人のアイデアを取り入れた方が説明しやすいんじゃないかということに最近気がついて、ちょっとこの話をしたいなと思います。
つまり悩んでいることと考えていることは、ダニエル・カーネマンの「速い思考・遅い思考」「システム1、システム2」というアイデアを使うと結構説明しやすいんですよ。
速い思考とは何かと言うと、脳の扁桃体発信の脳活動なんですね。速い思考というのは。
扁桃体というのは何かというと脳の真ん中から辺にある、感情を司る部分で不安とか恐怖とかをメインに扱うところなんです。
そこから発せられる脳の活動は速い思考と呼ばれることが多いんじゃないかとダニエルカーネマンは推測していて、これは感情的に考えたり、直感的に考えたりする時の脳の使い方なんですよね。
パッと動けるんですよ。これは危険だとパッと思ってパッと動けたり、これは自分にはいらないとパッ逃げたりできるんですね。
この時の思考回路は速い思考と言ったりして、論理的に考えたりするよりも直感で考える時の方が早く決断できるということです。
いわゆる直感的に考える時ですよね。
速い思考は感情に支配されている時の考え方なので、過度に期待したりとか、過度に被害的に捉えたりして歪みやすいんですよね。正確に物事を捉え難かったりするし、バイアスに支配されやすいんですよね。
あの人イケメンだから信じようとか、あの子可愛いから信じようとか、あの人は学歴が高そうだから信じようみたいな形になって、十分に話を聞かなかったりする。
これは速い思考と呼ばれるものです。
逆に理性的に考える時は「遅い思考」と言って区別しようと。
これは何かというと主に前頭葉を使う考え方です。つまり、理性的に考える時です。
直感的に考えるのではなく、数学の問題を解く時に使うような頭の使い方です。
論文を書いたり、論文を読んだりする時の頭の使い方に似ています。
論理展開を意識する時も遅い思考と呼ばれるものです。
これは事実を集めたり、検証したり、批判的に考えたりする時の思考回路で、まどろっこしくて時間がかかる。決断するにも時間がかかる。
合理的なんだけども、時間がかかるという思考方法です。
だから、この2つを区別しようということですね。
悩んでいる時とかぐるぐる考えている時は、主に速い思考のことを考えていて、だから同じところに戻っちゃうんですよね。論が積み上がってかない。
逆に論理的に考えてる時は論が積み上がっていくんですよね。なので同じところを考えることは基本的にはないですね。同じようなことを考えることはありますよ、もちろんね。
同じようなことを考えることはあるんだけども、それはアウフヘーベンされたものというか、同じところにあるんだけども、一歩先に進んで俯瞰的に捉えられていることが多かったりします。
だから、嫌なことばかり考えている時は速い思考に支配されているので、遅い思考に切り替えましょうよというのが答えというかアドバイスになります。
マインドフルネス
実際、わかったようなわからないような感じですよね。自分が今どっちを使っているのかわかりにくいと思います。
数学が得意だったり論文を書いたりとか、ロジックを使うことを訓練を受けた人は割とわかるんじゃないかなと思うんですよね。
そういう訓練を受けた人は割と区別つきやすいんだけども、そういう訓練をしたことがない人とか、教育環境になかった人はやはりわかりにくいんじゃないかなと思います。
じゃあどうやってやるのがいいのかと言うと、論文を書いたりするのも一つかもしれないけれども、お勧めは「マインドフルネス」がいいんじゃないかなと僕は思います。
マインドフルネスとは何かと言うと、いわゆる瞑想ですね。座禅を組んだりすることです。
呼吸に集中して、自分の呼吸に意識を向けることもあれば、ぼんやりと自分の中で生まれてくる感情、生まれては消え、生まれては消えというこの感情をただ眺める瞑想もあったりします。
僕は呼吸に集中する瞑想もいいなとは思うんですけれども、注意シフトトレーニングの一環として。
速い思考が浮かび上がっているのをただ眺めていく。ただ、眺めるというのも有効じゃないかなと思いますね。
ぼーっと座禅を組みながら、自分の中に出てくる感情とか、思いがぱっと浮かび上がって消えていくのをただただ眺めるトレーニングも重要だと思います。
そういうことをしていると、自分の中にある速い思考とそれを眺めている遅い思考が区別できるようになると思います。これも良いトレーニングなんじゃないかなと思いますね。
一人の時間
一人というのは本当に役に立たないものなのかと言うと、一人の時間というのがやはり大事なんですよね。
一人でちょっと辛いかもしれないけれど、一人で物思いにふける時間というのは大事で、この物思いにふけっている時に頭の中が整理されたり、知識が整理されたりするんですよ。
一人の時間でスマホをいじったり、忙しく頭を動かすのではなくて、ただただぼーっとして浮かんでくる感情をただ眺める時間もとても重要だったりします。
そういう時間を「デフォルトモードネットワーク」と言います。
ただ頭が自動で動いているのをデフォルトモードネットワークが活性化していると言うんですけども、こういう時に頭が整理されたりするので、無意識が頭の中にある部屋を掃除してくれるようなイメージなんですけれども、こういう時間も大事です。
こういう時間に成長していくんですよ、人って。
人格が成熟したりしていくんですね。なのでこの時間が大事です。
逆に何かずっと騒がしくしてるとなかなか成長しにくいです。
これは精神分析のクラインという人が「抑うつポジション」「妄想分裂ポジション」という言葉を使って説明したりしたこともあります。
人間は妄想分裂ポジションと抑うつポジションの2つを行き来しているよとクラインは言ったんです。
一人の時に物思いにふけっている時、その時は抑うつ的かもしれないけども成長している。
妄想分裂ポジションの時には楽しいんですよね。楽しかったり発散しているんですね。解放している。自分から何かを発信したり出してるような状態です。
この時はやはり深まっていかないんですよね。
解消はしていくんだけれども、溜め込んだものを発散はできてるんだけども、成長はなかったりします。
このイメージって結構重要だなと僕は思っています。
患者さんは抑うつポジションの状態を少しでも減らして、妄想分裂ポジションに行きたいという思いが強いんですよね。楽になりたい、ストレスを解消する方法教えてくださいと言うんだけども、そうじゃなくてストレスを消化していく。
ストレス解消ではなくて、ストレスを消化していく。
こういう時間もとても重要だなと思います。
これもイメージとして持っててもらえたらなと思います。
益田裕介はいつマインドフルネスを身につけたかというとですね。結局、暇な時間が多かったんだよね。
スマホも持てないし、ぼーっとしなきゃいけない時間、何もない時間が自衛隊時代は多かったんですね。
山の中もそうだし。
そういう時間って結構多かったですね。
電車の中で一人でずっといるとか、何もないなとか思いながら外を眺めている時間というのは結構ありました。
なんだかんだ言って昭和の人間なんで。
そういう時にいろいろなことを考えたり、今考えたらくだらないなと思うことも何か考えてたなと思います。
今も歩いて通勤しているんですけど、こういうこと考えたりしてますね。
浮かんでは消え、浮かんでは消えみたいなことが起きています。
孤独の解消
もうちょっとだけ言うと最後にですね。どうやって孤独を解消していくのかというと、マインドフルネスによってというのもあるんですけども、いろいろなことを経た結果、色んなものが言語化されていくんですね。
悩み事が言語化されたりとか色々していくと、不在に耐えやすくなります。
まあ仕方ないと思いやすくなる。
理性でわかるんですよね、今の不在の状況が安全な場所であることがわかるようになってくるし、受け入れられるようになるので、そういう状況を目指しましょうよということです。
赤ん坊はお母さんが目の前にいないことが苦しくて仕方がないけれども、でもだんだん成長するにつれて、お母さんは今買い物に行ってるだけとか、お母さんは今目の前にはいないけど、どこかにいるということがわかる。
大人になっていけば、今は確かにはお金はないかもしれないけれども、将来は稼げるようになる。
今は病気で苦しいけれども、病気が治ったらこの苦しい状況は良くなるということがわかってきますので、こういう風になっていくのを目指しましょうということだったりします。
だから決して病気がなくなる、物理的に解決していくことだけではないんですよね。
人間の不安が解決していくこととか、精神科が目指すものというのは、物理的な解決ではなくて、内的な充実というものを目指すことがありますね。
そういうのも大事だからというのもあるし、解決できないからそこで満足しろって言ってるんだろうと言われたらそうかもしれないけれども、でも現実的にはそういうことを目指すことも多いという感じです。
今回は、孤独が辛い、嫌なことばかり考えること、というテーマでお話ししました。
前向きになる考え方
2023.6.27