本日は「個性なのかは障害なのか、環境の問題なのかやっぱり障害の問題なのか」というテーマで、発達障害に関係するあれこれを雑談的に喋ってみたいと思います。
「これって私の病気なんでしょうか、それとも環境の問題なんでしょうか?」「自分は病気なんでしょうか、病気じゃないんでしょうか?」とかよく聞かれるんですね。
でもまあ、初心者に向けてはこれは病気じゃないよと言ったり、病気ですよと言ったりしますけど、もうちょっと深く考えてみるとよくわからんのですよ。
できるできない
ある種の能力がありますよね。人々には能力があってできることできないことがあります。
すごく能力が高い人もいれば、能力が低い人もいるし、ある分野については能力が高いけど、ある分野の能力は低い人もいる。
能力というのは、知識、経験、身につけてきたスキル、つまり小脳で蓄えられる記憶、あとは体質、元々持っている遺伝的な要素で決まったりします。
発達障害の場合は、ADHDの不注意や衝動性、集中力を保てないという体質に対しては、薬物治療によってある程度改善することはできます。
だけど、知識や経験を身につけていくとか、スキルを身につけてもらうというのは、根気よく言語的な介入だったり、作業療法だったり、就労支援とか福祉の介入で少しずつ向上していく必要があるんですよね。
もちろん時間がかかりますよ。
薬ができることは一部だということです。
can notであることを、周りの人とか本人もwill notに考えがちなんですよね。
なぜそれができないのかということなんですけど、もっと頑張ればできる、やる気がないからだとか、やってないだけだと思っているんですけれども、今あなたが抱えている、今直面している問題は、僕らと言うか科学者目線というか医者目線から言うと、やる気がないからではなくてほとんどcan notだからだと思います。
だから現状をきちんと能力の問題だとして受け入れる必要があるんですけども、なかなかそうは思えない。環境が変わればできるから、do notじゃないか、will notじゃないか。能力の問題ではないとか、ちょっと勉強したらできるんじゃないか、ちょっとトレーニングを積めばできるんじゃないかと思いがちですが、実はそうでなくてcan notの問題だったりすることが多いですね。
どこからが障害なのか
どういう環境だったら適応できて、どこから障害なのかということを考えます。
例えばほとんど全ての環境でうまくいかないのであれば障害、病気だということは誰の目にも明らかだと思います。
家でも職場でも単純作業でもうまくいかないのなら。
だけど例えば正社員だったらできないけれども、派遣だったらできるとかアルバイトだったらできるとか、週5じゃなければできる、週2だったらできるならそれは病気なのか、障害なのかというとようわからんのですよ、結局。
難しいんですよね、そういうことって。
週2だけだったら働けるけれど、週5だと働けないということは病気なんですか、それは環境の問題か障害なんですかとか言われたときに、僕らはよくわからないです。
それは定義の問題になってくるので、究極的にいったらよくわからない。
勝手に医者や人間、社会が決めているものだから、科学者である医者から見てみると、そんなのよくわからんという感じです。
あとよく思うのは、例えばアルバイトだからできないというパターンもあるんですよね。
正社員だったらできる。派遣業だから厳しくて、普通に正社員として働くならむしろできることもあったりするんですね。
単純な話じゃなくて、賃金が高い仕事は高度だからできなくて、賃金が安ければ単純作業になるからできるかというと、そういう話でもない。
逆に賃金が安い環境の方が複雑だったり、マルチタスクだったり、人間関係が悪かったり、複雑なことを求められたりして、賃金が高い方がホワイトなことはありますよね。
しかも問題も簡単だったり、仕事してもしなくてもわからなかったりする、バレないということありますよね。
職場で働くよりも家で家事をやる方が大変だったりするわけです。
子育て育児をする主婦業をするのは大変だから、アルバイトに行きますという人もいたりするんですよね。
だからそんなに単純な話じゃなくて、この一定ラインより下だから病気だとか、単純に比較できるものでもないです。
でも社会福祉とかを考えていく上では年収は一つのポイントになるので、年収が高ければ障害認定されにくい、年金をもらいにくい、逆に年収が低ければ、しっかり働いていても、やれることがあっても障害者認定されやすいとかいうのは、どうしてもそういうのは起きますね。
制度的な問題として起きてしまうことかなと思います。
この人は発達障害なんだけど、例えば、芸術家みたいな人で遅刻ばっかりしているけれど1億円稼ぐ。
この人は障害じゃないのか、個性なのか、薬は必要ないのかという時に、やっぱり必要だったりするわけですよね。
アーティストでなかったら逆にとか、そういう話って結構ありますね。
これも格差や断絶だったりするなと思います。
でも、本当に僕らはきついところにいる患者さんたち、きつい職場で働いてる人たちの話をよく知っているからですけど、お金をもらえる職業の方がホワイトだったりすることはありますよね。
自分たちがホワイトな場所にいるにもかかわらず、その事実を知らないということはあります。
自分たちがすごく恵まれているのに気づいてないということも結構あったりしますし、恵まれた立場にいる親が、恵まれない子供世代に対して努力が足りないと怒ることも結構あったりして。
そりゃ怒るよね、子供たちは。
「お前ら世代がな」みたいな話があったりしますから。
あなたたちの世代のときはそれで済んだかもしれないけれども、自分たちはきついんだよとか、あなたたちの世代のときはこれくらい障害があっても正社員にできたけど、自分たちは違うんだよとか。
でも、その問題というのを恵まれた立場にいる人たちは理解しにくかったり、理解するモチベーションがなかったりすることはよくあったりします。
ということで、今回は個性なのか障害なのか、環境なのか障害なのかということをテーマに雑談してみました。
発達障害
2023.8.24