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神経発達症(発達障害)グレーの生きづらさ

00:00 OP
00:39 グレーゾーンとは
04:51 福祉の狭間
07:52 自己肯定感が下がる

本日は「神経発達症(発達障害)グレーの苦しみ」というテーマでお話しします。

「神経発達症」というのは、「発達障害」のことです。
今も発達障害と言いますが、今後は神経発達症という新しい名称に切り替わっていくので併記しているという感じです。

発達障害とは診断できないがその手前にいるよ、という人たちもいるわけです。
そういう人たちは「グレーゾーン」と言ったりします。

グレーゾーンとは

精神医学の診断は、性格が極端、能力が極端な人の上位1~2%くらいを障害としましょう、みたいな考え方、基本概念があるわけです。

例えば、きれい好きな人がいて、でもきれい好きな人は全部潔癖症や強迫性障害と診断するわけじゃないんです。
その中でも、何度も手洗いして生きづらい人、そして生活に支障がある人、だいたいこれは人口の中で1~2%であることが多いので、こういう人たちを障害と呼ぶ。

人格障害もそうなんですよね。
情動が安定しない人、対人関係が不安定な人もたくさんいるんですが、その中でも特にひどい人たち1~2%くらいを人格障害や境界性パーソナリティ障害と呼ぼうよ、みたいなことです。

発達障害もそういう感じで、正確に測定できるわけじゃないですが、だいたいここら辺の人は上位1~2%くらいだよね、だからここら辺は障害だよねという何となくの臨床感覚というのがあって、そういうのが診断されていく。

逆にそこに至らない人たちはグレーゾーンと言って、じゃあ診断されるんですか、とモヤモヤとした状態を味わうことになります。
障害じゃないけれど薬は出そうか、みたいな言い方を医師はしがちですが、それはここら辺のことということになります。

ちなみにもうちょっとイメージしやすいものとして知的障害があります。
精神発達遅滞と言うんですが、正確には。

IQ70以下を障害としましょう、ということになっているので、だいたい2~3%くらいですね。
そもそもそうなるように設計しているので、テストを。
でも70以上あるけれど、その手前にいる人で息苦しい人をだいたい85として、13~14%となっているという感じです。
キリがいいからそうしているだけで、人間が勝手に作った指標なのでアレですけど。

正規分布と言うのですが、点数の人数比がだいたいIQ70くらいで2%になるようにテストを設計しているんです。
採点方法をそういう風にしているんですよ。
85以下を13~14%になるようにテスト側が操作しているんです。

ここら辺の人たちは生きづらいよ、と。
障害と言われるし、その手前の人たちも生きづらいよね、というのは最近言われている概念ですね。
境界知能と言われています。

知的障害でいうところの境界知能に該当するのが、発達障害グレーゾーンと言われるものです。

グレーゾーンの人たちというのはギリギリ社会生活は送れるんですよ。
ギリギリ仕事はもらえるけれど、転職を繰り返してしまう。
ギリギリ仕事はできるんだけど、出世はできない、だから生活苦があるとか、周りから怒られてばかりになってしまうということが多かったりします。

障害というのは働けないということと同義なので、働けなくはないんだけど、めちゃくちゃキツいみたいなことなんですよ。
コミュニケーションのこだわりがあったり、不注意やミスがあったり、片付けられない、そういう色々な現実的な問題があって。
そして無理解なんですよ。無理解で生活苦があったりする。

周りからは頑張れと言われたりするんだけど、うつっぽいのに何でそんなこと言われるんだ、というか、うつ状態の人が頑張れと言われるから、ますます落ち込んで傷つくみたいなことがあったりします。

福祉の狭間

結局、福祉の狭間なんです。
障害に満たないから障害年金が下りないとかあります。
診断書を書いても、この人は働けてるよね、月20万とか給料があるよね、だから下りませんでした、みたいなケースがあったりするんだよね。
じゃあどうしたら良いのか、貯金がなくなったらもう生活保護しかないんですか、受けられるサービスは生活保護しかないんですか、となっていったりします。

福祉は、手帳と自立支援はほとんど一緒ですけど、手帳、自立支援と障害年金くらいなんですよ。
年金が取れなかったとすると経済的な援助というと手帳なんですけど、手帳は本当にちょっとしかないので、これでもう働けない、貯金もないとなったら生活保護になってしまう。

でも生活保護になってしまうと、今度はちょっと働くよりも生活保護をもらっていた方が生活できるわけですよね。
というか、ちょっと働いただけでは生活できないんですよ。
だから結局、生活保護から抜け出せない人たちというのもこのグレーゾーンには多かったりします。

そうすると、生活保護をもらうと、今度はグレーゾーンから障害ということに診断名が格上げになって、じゃあさっきまでは何だったんだ、みたいなことになるんです。

でも、これも社会の変化に対応できていなかったりします。
家族構造が変化していった、昔はフルでは働けないけどちょっと働ける人、生活保護をもらわずに家族の援助でやれていた人というのは一定数いたんだけど、一緒に暮らすとかあったんだけど、家族構造の変化でそういう人が減ってきているというのもあるし。

あと中間層の没落ですよね。
働けない人を養うだけの余力が家族の中で持てなくなっている。
昔というか、僕も生きてなかったですけど、例えば夏目漱石は大家族を養ってお手伝いさんも雇い、そして門下生というか、お弟子さんも雇い、お弟子さんを食わせることもできたわけです、東京でね。

でも今そんな作家さんいますかということです。
夏目漱石以外にも色々な作家さんはそれができたけれど、現代じゃそんなことできないわけですよね。
それだけ厳しくなってきているというのはありますよね。

もちろんお金持ちの人だったらできるかもしれないけど、できない家族が増えてきているという感じです。
結果的に生活保護に頼らざるを得ないみたいな感じ。
でも生活保護になると、次は抜け出せなくなっているという悪循環もあったりします。

自己肯定感が下がる

働けないというのは苦しいんですよね。
自己肯定感が下がっていってしまうので。
働かない人の価値をやはりきちんと伝えていかなければいけない。

人間の価値ということを僕らは知っているし、それを伝えていかなければいけないんだけれど、やはり働かないといけないんだという能力主義というか、現代社会の常識に抗える強さというのは、やはり病気の人とかグレーゾーンの人は持っていないですよ。
だからすごく苦しい思いをしているというのがあるなと思いますね。

あとは、今はやはりモノが余っていsるんですよ。
モノが余っているし、無理に働いてもらうよりは、会社も収入少なくてもいいよ、AIやロボットの方がマシだからそっちを使ってモノを作ります、教育までして、無理にそこまでして働いてもらわなくてもいいです、無理にそこまでして利益を出さなくてもいいです、みたいな形に変わってきている。

放っておいたらAIやロボットが進化していくから、人を雇ったらなかなか辞めさせにくいわけですから、数年待てばAI進化するかもしれないので数年待ちますみたいな。
その人を教育して一人前に働けるようになるよりも先にロボットの方が進化しちゃうかもしれないから待ちます、みたいな企業判断もあったりします。
そうすると、ますます人が働ける場所が少なくなって、自己肯定感が下がるんじゃないかなと思います。

人口の数%の人が苦しんでいるわけですね、こういうメンタルの病気って。
多くの人は気づかないんです。
3%が4%になっても、消費税が上がっても気づきにくいように、多くの人はよくわからないんですよね。

だけど生活が苦しい人たちにはすごく大きな変化だし、あと中にいる人たち、3%だと思っていたところが4%になるということは33%増えることですから、臨床現場では大きな変化なんだけど、世間には声が届かないということはあったりするなと思いますね。

今回は神経発達症グレーの苦しみというテーマで、僕ら精神科医とか臨床家が思っていることを語ってみました。


2023.10.5

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