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自分とは何か?

00:00 OP
00:25 自由意志はない?
02:45 精神科医の立場
07:32 違うもの

本日は「自分とは何か」というテーマで、医師の存在証明、医師のアイデンティティを説明することで、自分とは何かという問題を深掘ってみたいと思います。

自由意志はない?

僕らはあまり自由意志は信じないんですよ、精神科医というのは。
自由意志や、「我思うゆえに我あり」みたいな、魂というか自分が唯一無二だみたいなもの、そういうものはあまり信じないんです。
そういうものはあまりないと思っている。

人間というのは自由意志はなくて、どちらかというと不自由な存在で、遺伝子から来る脳の影響もあるし、自分のこれまでの記憶や生い立ち、知識、そのときの体調、社会的な立場、こういうものの掛け合わせによって、行動に移してしまうんじゃないかと考えています。

デカルトの時代とは違って、無意識というものが見つかったり、構造と呼ばれるもの、社会からの抑圧とか社会の影響で人間が合理的に判断を取れない、判断をすることが極めて困難なことも、現代になってわかることが増えましたよね。
だから自由意志というよりは、こういうものの掛け合わせなんだろうな、運とか不運とかあるんだろうなと考えているわけです。

逆にこういう風に要素分解できるからこそ、この人に今どんな治療が必要なのか、この人の世界観を変えてあげるのに、認知の歪みを変えてあげるのに、どういうところにアプローチしていけばいいのか、というのが精神科医はわかるということになります。

この「立場」という話なんですが、ここが発達障害の人にはわかりにくいですね。あと子供にもわかりにくいと思います。
立場によって意見を変える、立場によってやるべきことを変える、ということをしたことがない人たちなので、そういう人たちにとってはちょっとわかりにくかったりするかなという気もします。

「立場」というのは結構ややこしいんです。
精神科医のことはやはり皆さんよくわからないと思うんですね、そういう人は身近にいないので。
精神科医の立場というのはどういう立場なのか、どういう風に行動すべきなのか、言動はどうあるべきなのかということなんです。
それをちょっと話をしようと思います。

精神科医の立場

精神科医の立場で一番重視しなければいけないものは何かというと、科学者であるということです。
科学に基づいて判断する、常に科学的であろうとする、という科学者である立場というのが大事だと思います。それはフロイトのときから言っています。僕もそう思います。

ただ科学的にはそうだなとわかっても、最後のギリギリのところはどっちが良いかわからない問題もあるわけです。
ジレンマが起きるんです、臨床というのは常に。

例えば、この薬は8割効果があるが2割の確率で副作用が出る、こちらの薬は副作用は起きないかもしれないけど、効果は3割ぐらいしかないとか。

ベンゾ系の薬は楽になるかもしれないけれど依存性がある危険な薬でもありますよね。
かといって今すごくきつい状況なのに、ベンゾの助けを借りずに治療したら、もしかしたら自殺のリスクが上がるかもしれない。

あとは最初から副作用の強い抗うつ薬だけを飲んでしまうと、医療に対して不信感を持ってしまうかもしれないとかあるわけです。
即効性のある薬を使うことによって信頼感が生まれるかもしれない。

こういうときはどっちが正しいかわからないですよ。
どっちが倫理的に正しいかもよくわからない。
科学だけじゃ説明がつかないんですよ。
そういうときのために哲学や倫理学というものがあります。

臨床は絶えずジレンマがあり、絶えずどちらを選べばいいかわからないときがあるんです。
そういう時は主観で決めるのではなくて、ギリギリまで倫理的であらねばならないので、こういうことも必要です。

医師というのはやはり先生と呼ばれる職業なんですよね。
学校の先生達とも一緒で、聖職者のひとつなんです。
社会的にもそれが求められていると思います。
医療は仁術だと言いますが、僕もそう思います。

科学者であり哲学者、倫理学者ではあるんだけど、どこか優しい、弱者に対していたわるようなポジションじゃなければいけないなと思います。
弱者寄りであるということですね。
どちらかを取る時、ギリギリまで悩んだときに、どちらの立場を取るかといったら、弱い人の味方であるべきというのが医師の立場です。

あとは公務員なんですよ。
医師というのは保険診療でやってるので公務員なんです、あくまで。
だからお上の言うことに逆らえないし、お上の言う通りの治療をしなければいけないです。
ガイドライン通りやらなければいけないし、保険診療通りやらなければいけない。
専門家なので、多少の自由は認められているんだけれど、基本的には公務員的ですね。
こういう医療をやりたいと言ってもダメということは結構あるんです。

あとは僕は開業医なので、経営者でもあるんです。
色々なことをやらなければいけないので、その兼ね合いもありますから、やはり一人の患者さんを救おうとするがゆえに、その病院を潰してしまってもいけないので、そういう兼ね合いもあるのかなと思います。

あとはYouTubeをやっているので、インフルエンサーでもあります。
インフルエンサーとしての立場もあるし、かつ時事問題も扱っていますから、ジャーナリスト的な側面もあります。

ジャーナリストというと、自分から調べていくものがジャーナリストだと思っている人がいるのですが、そうじゃなくてジャーナリズム精神ということです。
批判的にニュースを読む、正しい情報を正しく、ある情報や出来事を専門家の見地から正しく伝えるということもジャーナリズムですから、そういうこともやっているということです。

あとはコミュニティの一員なんです。
そうは言っても、街のもの知りおじさんというか、そういう立場でもあるんです。
精神科医は治療をしていないじゃないか、話を聞いているだけじゃないか、何もやってないじゃないか、と言われるかもしれないし、だけど別にただただ付き合っていくだけという側面もあるんです。
慢性期の人とただただ月1回会って、薬出して、その時にちょっと雑談するという、まあそういうのはコミュニティの一員でもあるので、こういうのも含めて精神科医なのかなと思います。

その場その場で立場があるので、どこの立場の意見を強めるかというのは色々ありますが、基本的にはこういう感じです。

違うもの

違うものとしては何かというと、まず宗教家ではないです。
スピリチュアルなものを信じる、科学的に証明できないものを訴えていくということは原則ダメです。
しないです。

作家でもないんですよね。
主観的なことを言うのではなくて、ギリギリまで作家的に考えていくというよりは、自分の経験から考えていくというよりは、哲学や倫理的にロジック展開から何かの意見を導き出すということかなと思います。

あとエンタメでもないんです。
インフルエンサーではあるんだけど、エンタメ枠ではないということです。

ビジネスマンとか経済界の人たちともちょっと違うんですよ。
経営者なんだけど、ビジネスマンとは違うというのがあります。公務員でもあるからね。

もちろん政治家ともちょっと違うんですよね。
政治家は色々な要素があるんですが、あくまで仁術の立場なので、弱者の味方かなという感じもします。

あと看護師、精神保健福祉士、カウンセラーとも違うんですよ。
医師はやはり最終決定をする責任ある立場なので、何で精神科医は冷たいんだ、中立なんだ、寄り添ってくれないんだと言うかもしれないけど、寄り添っていくだけじゃないんですよ。

看護師さんとはちょっと違って、やはり父性的であること、最終決断を出さなければいけない、言わなければいけないことを言わなければいけないんですよね。
それは看護師さんやカウンセラーにはできないんです。
診断をつけるのは僕らしかできないですから。

だから最終的に、あなたは今きついからあなたは働きたいと思うかもしれないけれど、ここは休むべきだよ、やれないよ、治療の限界ですよね、ここから先は難しいよ、カウンセリングだけではよくならないよ、薬が必要だよ、限界があるんだよ、そういうのはやはり科学者的なポジションから医師として言わなければいけないし、それは患者さんにとっては聞きたくないこともありますよね。

あとこんなことやっちゃダメだよと言わなければいけない。医師はチーム医療のリーダーであるから、リーダーが最後に言わなければいけないこともあるので、ちょっと違うよということです。

まあ、だからお父さんっぽいんですよね。
お父さんと言うと感じが悪いかもしれないですけど、昔のお父さんというか、昔の家族構造における強い家父長制のことではないですけど、ある種の父性というか、そういう感じのポジションですね。

だからお父さんが苦手な人は医師も苦手だったりします。
かといって、お父さん抜きの社会はあり得ないというか、お父さん的なものとかリーダーがいない社会はありえない、存在し得ないので、リーダーであるということ、それ自体に拒絶反応を起こす患者さんもいるんですけど、それはトラウマの影響とかでね、だけど良いリーダーとして振る舞うことが求められるということです。

だから自分の主観というよりは、その立場で一番ふさわしいことをやるというのが仕事ですから、医師もあくまで仕事なので、自分とは何かということです。
自分とは何かと考えていくときに、難しいんですけど、やはり職業とか立場に基づいて最適解を導くということも一つなんです。

自分探しをしている時に仕事がなかったりすると、自分とは何かというのはやはり収まりが悪いですよね。
何者かとわからないので、まあそういう感じかなと思います。

今回は、自分とは何かということで、精神科医とはどういう存在かを密に語りました。


2023.10.18

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