今日は精神科の治療がどのように進むかを図にしてみました。4パターン書いていますが、これは僕の思いつきでざっと書いているものです。科学的根拠や精神科の常識ではなく、あくまで個人的な僕のイメージです。
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すごろくタイプ
すごろくタイプはとにかく時間が経過すれば良くなる治療です。難易性疾患のうつ病、躁うつ病、統合失調症や子供の治療は結構このパターンになります。とにかく、生き延びさえすれば絶対に良くなる、毎回しのぎ切れば良くなるというパターンです。
うつ病の場合は、悪くなって急性期があり、回復期、再発予防維持期という経過を辿り、どこかで事故さえなければ絶対に良くなることがわかっているので、ゴールが見えているという感じがします。
子供の場合は1年目でぐちゃぐちゃっとあり、ゾーンが過ぎれば2年目のゾーン、それが過ぎれば3年目のゾーンに入るという感じで、とにかく1年生き延びれば次のステージに行けるというのがパターンです。1年目の発達課題をクリアしなくても、次に行けばなんとなくやっていけるというパターンも多いです。
うつ病だとフェーズ、子供の場合はゾーンというイメージです。
ギャップ分析
時間が経てば何でも良くなるわけではなく、こちらから介入していかないといけないパターンも結構多いです。その時にギャップ分析を使います。これは認知行動療法(CBT)的な考え方なのかなと僕は思います。今の自分と理想の自分を出して、時間をかけて治療プロセスを経ることによってゴールを目指すというパターンです。
今の自分と本来あるべき自分との間にある問題を洗い出し、一気に問題を解決できないので中間目標を立てたりして1個1個やっていきます。パニック障害や脅迫性障害の治療(暴露療法)にも似ています。電車に乗れない→駅に近く→各駅停車に乗る→急行に乗る→満員電車に乗る→新幹線に乗るといったステップを踏んでいくものです。
これの問題は、ゴールが明らかだったり治療目標を限定してしまっていて、他のものを取りこぼす可能性があるということです。
地獄めぐり
僕は「地獄めぐり」と呼んでいるのですが、親子問題を語ったと思ったら平凡恐怖(自分の能力の少なさ)の話、躁的防衛(本当は自分はすごいんだ、対人トラブル)、そして恋人や性欲の話に移り、そしてまた親子問題に…とグルグル回って行くのも一つの治療かなと思います。
トラウマや神経症、人格障害の人だといろいろなことを語りながらだんだん大きな円を描いて行くようにします。遠くに行けば行くほど同じテーマパークの中でもいろいろな世界が見えてきます。親子問題テーマパークでもどんどん遠くに行けるようになるので見える世界が変わって行くという感じです。
ただ、治療者も患者さんも本当に進んでいるのかわからないことがあります。広がっているのか同じ場所を回っているのかわからなくなることがあるので、昔のカルテを見ながら「こういうところが良くなったね」ときちんとフィードバックしないといけません。
地獄めぐりパターンは僕は好きですね。
ゆがみの矯正
地獄めぐりパターンは好きですが、「こんなことまでやっていられない」という面もあります。では実際の臨床はどうなのかと言うと、一番オーソドックスな臨床は「ゆがみ矯正パターン」です。
人間の心はイラストのようにいびつな形をしているのですが、成功するための輪は小さい輪で、自分のいびつさではくぐれないと思ってしまいます。本当は、日常的に幸せに生きるならばそんなに小さく削り抜かなくても良いのです。トライアンドエラーで日常にぶつかっていては当たったところを削ることを繰り返せば、日常を満足に送れるようになります。
日常をくぐると、「成功するためにはこういう形」というものはあるのですが、そうでなくてもいろいろな形があることを知ります。精神科がやることは、成功するために石を磨き切るということではなく、日常を動けるようになるために歪みをちょっと削ってあげるということです。
「すごろくタイプ」と「ゆがみの矯正」がオーソドックスなパターンで、ちょっとしっかりやろうよということになると「ギャップ分析」的な要素も取り入れます。もうちょっとのんびりやりたいなとなったら「地獄めぐり」も入れたりします。
これが僕の頭の中にある治療の進み方のイメージです。
精神医学, 精神科臨床を哲学してみた, 雑談
2021.1.11