今日は「精神科外来で疲れるポイント4つ」を語ってみようと思います。今年は精神医学のサイエンスだけでなく、精神科医のスキル、アートの部分も語っていきたいと思っています。この動画を見ると外来の受診をするのが面白くなると思います。
コンテンツ
疲れるポイント① タイムマネージメント
・スタッフの残業
これはなかなか難しく、診療時間内に終わらずズレてしまうことがあります。スタッフの残業ができるだけ出ないようにしないといけないのでとても気を使います。チームである受付の人たちも疲れてしまいます。
・アクシデントに備える
時間がカツカツになるのも良くありません。重症の方が来たり、入院になることもあるためです。押していても時間の余裕を持つことが大事です。混んでいるけれど、診療中の会話をできるだけ延ばしてあげたいので、その日に誰が来るかを把握しておき頭の中でスケジュールを組んでおきます。
・診察中にヤマ・満足感をつくる
診察時間の中で、短くても山場を作る、満足感を与える、宿題を出すなど、患者さんにとって治療が進んでいるという感覚をきちんと提供できていることが大事です。会話が始まってから引っかかりを探し、そこからグッと上がって終わるということを考えながらやっています。
疲れるポイント② 耳と肩
・集中して話を聞く
集中して聞くので意外と肩が凝ります。患者さんによっては声が小さい上にマスクもしているので本当に疲れます。うつや不安があると声は小さくなるものなので仕方ないことですが。
・共感、判断、カルテ
共感しつつ、一方では判断もしなければならず、また同時にカルテも書かなければなりません。結構マルチタスクです。常にマルチタスクで頭を使っていると疲れます。
疲れるポイント③ 共感
・のみこまれる
・抱える
皆さんたぶんこれで疲れると思っていると思います。
話はすぐに「あなたこうですよね」と返してしまうと抱えられた感じがしないので、グッと聞いて、飲み込んで、返す、という間が結構疲れます。間は緊張感でもあります。こちらが返すときにふっと緩和が起きるということが大事です。
イメージとしては、顔に出るかどうかは別として心臓コンピューターがピーピー動いているような感じです。
疲れるポイント④ 限界を伝える
一番疲れるのはここかもしれません。
・改めて、限界を伝える
患者さんは知っているところに改めて限界を伝えなければいけません。改めて「仕方ないよ」と言わなければならないことは苦しいです。
患者さんは治療すれば良くなっていくのではないか、現実が変わるのではないかと思うのですが、変わるところもあれば変わらない現実もあるのでそれを伝えるのは難しいことです。雑に扱えば患者さんの孤独感が強まってしまいます。怒りに変わってしまうこともあります。伝えたことで病状が悪化することも考えられます。かといって伝えないことには治療も進みませんし、耳障りの良いことばかりを言っても仕方ありません。
そもそも病気や障害は不幸であり孤独なものです。それはお釈迦様が言っていることと一緒で、それを改めて僕も言わなければならないのです。言うときに結構ドキドキして相手の感情を見ながら言うものですが、そこは心理士やカウンセラーさんとは違うところだと思います。
1から4のどれも大事だし、それが精神科外来の面白味です。これらを駆使しながら1日をつつがなく終えると、立派じゃないかもしれないけれど精神科医らしい1日を過ごせたなと思います。