今日は大人になるに連れて「親」がどのように見えるのかを解説します。
僕らは「存在」に近い胎児から子ども、大人になり、老人になって亡くなります。
細胞の状態から、親の庇護下である種の幻想に包まれながらいろいろと社会のことを学んでいくのですが、子どもの時は親は絶対であるし、世界そのもので、包まれています。どの子どもも、虐待の経験がある子どもでさえ親からおっぱいをもらいながら包まれていたのです。基本的にはこのような経験をしています。
そこから大人になってふと気づきます。「あれ、親ってこんなに小さかったっけ?」「親と違うな」など絶対的な存在から一人の人間、弱い人間として認識できるようになります。ここがパラダイムシフトと似ています。
こういった経験をした人も多いでしょうし、その経験がうまくいかなくて病気になってしまう、悩んでしまう人もいます。基本的には親に包まれた幻想体験からその幻想を壊していくことを経験していきますし、幻想が崩れれば崩れるほど大人に近づいていきます。
コンテンツ
見える世界がどう変わるのか?
・自立は皆体験するのか?
精神の病を体験しない人がいるように、自立を体験しない人もいます。
・自立後の世界は共通する?
「大人になったら皆同じように思う」というのも違います。良くなっていった患者さんはみんな違う答えを導きます。ここが面白いところです。一方で病んでいる時、悲しんでいる時は皆同じことを言います。不幸の形はバリエーションが少ないのですが、幸福の形はバリエーションが多いのです。
よく患者さんは「他の人はこう思えるのになぜ自分はそう思えないのか」と悩むのですが、それは当然で、患者さんは患者さんの自分だけの世界を築き上げていかないといけないということがあると思います。
すべての人が親子問題で悩むわけでもありません。大なり小なり悩むかもしれないけれど、大きいものと小さいものは全然違うので共通の体験にはなりません。自立後の世界が共通するかというとそれも異なります。
パラダイムシフトとは?
パラダイムとは科学理論で、パラダイムシフトというのは天動説から地動説に移るような変化です。それが人間の脳にも起きています。思春期で人間の脳は急激に大きくなり、扱える行動も情報量も変わってきます。どんどん情報が入ってきてメタ認知もできるようになってきます。性的な衝動性も上がります。その衝動性にすごく混乱します。
この混乱は精神科の患者さんと普通の人のそれとはまた違います。みんな経験する、みんな混乱すると言いますが違うのです。親子のあり方も違うし変化球の変化球みたいなところがあります。このようなことを患者さんに直接言うと傷つくので言わないのですが、ここまで動画を見てくれているので言います。
だからすごく混乱するし、苦しいし、医師のようなプロがサポートする必要があります。
親をどう理解するのか?
・一人の人間(他者)としての評価ができますか?
治療というのは、そのような視点を持てますかということです。親は特別な存在で、それは子どもの頃にそう思い込んでいた名残でもあるし、実際に自分のことをこれほど心配してくれるのも親しかいません。一方で特別ではない、ただの一人の人間として評価できるようにならないといけません。そこが親子問題を語るときに重要です。
たった一人、たった二人の親だから自分のことを他の人より理解してほしい、評価してほしいと思うのですがそことは別です。そう口では言ってもなかなか思えないし、そう思おうとするほど抑圧が起きて反発で苦しくなるなど色々あります。
学生のうちは同年代との関わりが中心ですが、社会に出るといろいろな世代の人と関わるようになりますので親に対する評価もしやすくなっていくのかなと思います。
・体験の言語化
体験を言語化していくことでメタ認知を鍛えたり、言語能力を鍛えていくことで少しずつ人間を理解していくことが重要かと思います。そのような積み重ねによって脳の混乱が落ち着いていきます。
今回の話の根拠は僕の臨床的な体験、理解からです。哲学はロジックの積み重ねですがそれとも違いますし、実験結果からわかったものでもありません。そもそも再現性が低い世界の話をしようとしています。統計でもデータでもない、自分の心や相手の心を見つめながら体験的に学んだことを動画にしています。
今まで当たり前だと思っていたことが砕かれる気づきがどのように起こるのか。親子問題の時は特に、臨床において外傷的でも侵襲的でもなく、優しさを持って理解が進むかが大事であり、問われていると思います。普通の臨床よりも砕かれるものが大きかったりするので慎重になります。
親子問題
2021.2.11