今日は「感情と自分を切り離す技術」をテーマにお話ししようと思います。よくやっている話なのですが、また改めてお話ししようと思います。
コンテンツ
脳は様々な信号(命令)が飛びかう。「感情」は強い信号
そもそも脳はさまざまな信号が飛びかう場所です。脳は1つの臓器だと思うとイメージしにくいのですが、複数の臓器が寄り集まったものと考えると理解しやすいです。インターネットの世界のようなネットワークにも似ていますし、会社のように色々な部署があり情報が飛びかっているのにも似ています。
最終決定を誰がするかというと、自分のようでありながら自分でない、意志の力では命令をコントロールできないのです。なので皆悩みます。その中でも「感情」は強い信号です。感情が訴えることは命令系統としては強いです。
・生死に関わる本能的なものが強い
・欲望(好き・嫌い、好かれたい、嫌われたくない)は次に強い
・合理的な判断は弱い(貯金、勉強、仕事)
寝たい、食べたい、休みたいなど生死に関わることは強いのです。次は周りから好かれたい、尊敬されたい、嫌われたくない、あいつは嫌いだ、お金が欲しい、いい思いがしたい、贅沢がしたい、羨ましがられたい、といったことです。社会のためにこうしよう、将来に備えてこうしようといったことは弱いです。それは良くわかると思います。
抑えつけるのではなく、バラバラなものとして認識しよう
抑えつけるのではなく、バラバラなものとして認識することが大事です。お腹すいたなと思いながらも「今はこれをやろう」と別のことに集中するといったことが大事です。それに囚われないということです。
生死に関わることと欲望の信号の強さは皆同じかというとそうではなく、強弱の程度の差があります。欲望に弱い人、本能からくる感情が強すぎて自分の理性的な信号が弱い人はいます。依存症になりやすい人はそこからの衝動性、欲望の信号が普通の人より強いのです。だから負けてしまいます。皆が同じ我慢強さを持っているわけではありません。ただ、違ったとしても我慢するという点では同じなので、同じようなアプローチになってしまいます。
皆同じでないということは、この5年10年でわかってきたことです。例えば、発達障害ということがわかったから別のアプローチにしないと我慢がしにくいといったことがわかってきています。口で言うのではなく図に書く、感覚過敏があるから耳栓を使うなど最近になってわかってきたことです。
・摂食障害
感情を抑えつける代表例としては摂食障害です。食欲を抑えようという病気ですが、食欲をコントロールすることによって人から好かれたい、人にどう思われるのかをコントロールしようとするものです。食欲というより強い原始的な感情をコントロールすれば、人からの感情(欲望)もコントロールできるのではないかという病理メカニズムがあります。そうかもしれませんが、そのようなことは人間にはできません。
・食と睡眠
食事や睡眠というのは本屋でもよく見かけます。「最高の食事」「最高の睡眠」「これをやればガンにならない」など。食と睡眠を刺激するのは経済(お金儲け)としては大事です。なぜなら生死に関わるところに訴えるからです。そこに訴えることで欲望の問題を解決させようということです。秦の始皇帝も不老不死の食事を求めたりしていますね。
他の誰も知らなくてこれを食べれば良い、他の誰も知らなくてこういう枕を使えば完璧な睡眠がとれる、といったようなものはありません。
・マインドフルネス、コラム法、カウンセリング、座談会
バラバラなものとして認識する、つまり色々な感情が浮かんだり思いに囚われているけれど、それをバラバラなものとして理解した上で「今はこの中で大事なのはどれだ? これだな」と選ぶべきということです。
これはトレーニングなので、今だとマインドフルネスです。座禅をして自分の感情を見つめる、感情なのか思いなのか、欲望なのか目標なのか、そういったものを区別しようというものです。
認知行動療法のコラム法もあります。日記を書きながら自分の感情なのか考えなのか、欲望なのか目標なのか理念なのかを見極めようというものです。
カウンセリングは1対1で会話をすることで盲点、無意識に気づくことで、それが感情なのか思いなのか、欲望なのかを区別しようというものです。
座談会は人の振り見て我が振り直せではありませんが、知恵を出し合い、学びがあるものです。
益田はどうなのか?
自分がどのように出来上がってきたかを考えると、今の自分を作ってきたものはだいたい受験勉強、医学教育、スポーツ(レスリング、フルマラソン)、自衛隊での共同生活・訓練、人文系、精神医学、臨床、開業、YouTubeかと思います。
これらから何を学んできたかというと、雑念が多いとうまくいかないということです。
患者さんを診るときも「この患者さんを診ればいくら儲かる」「この患者さんを診ていたら後からGoogleのクチコミを1つけられる」「YouTubeでこれをやれば患者さんが増える」とか思いながらやっていたらうまくいきません。というか頭が回りません。お腹が空いていても眠くてもうまくいきませんから、ご飯も食べますしダイエットはしません。感情や欲望に囚われてしまったら、忙しすぎて業務をこなしていくことができないのです。集中した方が行動しやすいのは体で学んできました。
その結果、そういえば医学教育のなかで脳はこうだったなとか、人文系でも感情に囚われてはいけないと言っているし臨床でもそうだよな、と同じような場所に辿り着いたという感じです。
何をやったら良いですか、何を学べば良いですかと患者さんはよく言いますが、あまりそういうものはありません。一人一人にこれまで生きてきた背景があるわけで、それらを活かしながら今の問題に1つ1つ取り組んでいくことが重要だといつも思います。
カウンセリングや臨床をしていても、こちらから何か新しい考え方を伝えてもそんなものは治療につながりません。患者さんが今まで生きてきた体験、経験にもう一度光が当たるというか、書き直されるというか、ブラッシュアップされた時に気づくことなのかなという気はします。だから同じ話を何度もしても良いのです。何度もした方が良いです。「益田先生、飽きないかな」と言うかもしれませんが、どちらかというとそのほうが楽です(笑)、僕も楽だし患者さんも理解が深まるのでwin-winなのです。
気づかなければいけないことは、皆が言っているような当たり前の真実です。
前向きになる考え方
2021.5.3