今日は「社交不安障害」について解説します。
社交不安障害を一言で言うと「対人不安がMAX」の障害です。
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社交不安障害のメカニズム
社交不安障害のメカニズムは「脳の特性」と「学習機会の損失」で説明されます。
・脳の特性
社交不安障害になる人の脳の特性は、「人への不安がもともと強い」ことです。
例えば、子供の場合はワーっと泣いてしまう、癇癪を起こしてしまうことがありますが、その傾向が重い人(子ども)、それが大人になっても続く人です。
「人」はいろいろな情報を持っています。
怒っているのか、怒っていないのか、誰が好きなのか、誰が嫌いなのか、、、
人と対峙し、表情や動作などから読み取ろうとするのですが、情報が多く、人によっては脳がパニックを起こしてしまいます。
それで、「もう嫌だ!怖い!」となってしまうのです。
・学習機会の損失
「嫌だ!」となってしまうので、人との交流をどんどん避けるようになります。
避ければ避けるほど苦手になっていくので、結果的に人との触れ合いがさらに苦手になってしまいます。
対面不安が強い脳の特性と、学習機会の損失の結果、社交不安障害になってしまうと考えられています。
鑑別
自閉スペクトラム症や統合失調症の鑑別が大事です。
「人が怖い、人が嫌だ」というのをよく聞いてみると、社交不安ではなくて自閉スペクトラムの問題ということがあります。つまり、相手の心を理解しにくいという発達特性の問題で不安が生じていたのです。その場合、社交不安障害ではなく、発達障害による対人不安だと診断されます。
また、統合失調症だと「怖い」というのが幻覚妄想のためだったりします。
そのようなことをしっかり鑑別することが大事です。
薬物治療
不安になりやすいという特性があるので、抗うつ薬で体質改善の治療を行います。
不安でワーッとなったときは、対処療法として抗不安薬を飲むと落ち着きます。
ただ、社交不安障害は生きてきた歴史の中で苦手になってきているので、治療に時間がかかることが多いです。抗不安薬は長期間の処方によって、依存になりやすいので注意が必要です。
自己、他者、社会の理解が不十分
学習機会が失われたことの何が問題かというと、「自己、他者、社会の理解が不十分」ということです。
知識はただ机に向かって勉強していてもあまり身に付かず、人との会話、ふれあい、交流の中で身につくことが多いです。大人しくて丁寧できちんとやっているからちゃんとしている人かなと思うのですが、交流が少ないがゆえに実は未熟だということが結構あります。
年不相応な未熟さとしてよくあるのは、「恥」「不安」「恐怖」がすごく原始的な水準で理解されているということです。
人間はもともとサルから進化して人間らしくなったわけですが、サルの時は、怒った、お腹がすいた、など感情的な情報のやり取りしかしませんでした。
それが原始人になってくると、迷信的思考の水準になってきます。感情に思路が混ざり、好き・嫌い、敵・仲間といった思考ができるようになりました。
現代人になってくると、分別的思考と言って、「確かにそうかもしれないけれど、こうとも言えるよね」など「あれはあれ、これはこれ」と分けて考えることができるようになります。
対人不安を原始的な水準で理解し、分別的に考えられていないことがよくあります。
このような考え方を理性的にはできるけれど、経験不足のため肚の底に落ちていないということが見られます。
怖い、という感情的水準に支配され、ますます社会に出られなくなり、調子が悪いと引きこもりになってしまうパターンもあります。
治療
治療は段階に分けて行います。
STEP1:通院
まずは定期的に通院できることを目指しましょう。
STEP2:訪問看護
精神科の看護師さんを受け入れられるようになりましょう。
STEP3:デイケア
最初は週1回でも月2回でも良いので、デイケアに通えるようになりましょう。
STEP4:就労移行
仕事の訓練をしましょう。
STEP5:仕事(学校)+カウンセリング
仕事や学校に行けるようになったら、カウンセリングも行いましょう。
このように段階を分けながら人との交流を増やしていきます。
脳の特性を自分の理性で抑えていくという治療が大事です。
今回は社交不安障害のメカニズムと治療の解説をしました
【参考】
http://jpsad.jp/files/JSARD_manual_ad.pdf?1623032425
★noteでも書いています「社交不安障害」
https://note.com/wasedamental/n/n068046ca42df
不安障害
2021.6.11