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千と千尋の神隠し、カオナシを解説 診断の候補は発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動性障害)もしくは境界性人格障害

03:33 境界性人格障害とは
05:51 発達障害とは
09:01 カオナシ
12:30 似ているところ
14:41 どうすれば良いのか

今日は「千と千尋の神隠しのカオナシ」についてお話しします。
この物語の中に出てくるカオナシを理解することで、発達障害や境界性人格障害の特徴や治療を知ることができる、というような話です。

宮崎駿監督は「カオナシなんて周りにいっぱいいますよ。誰かとくっつきたいけど自分がないのがカオナシです」と言っています。周りにいる人達を参考にしたということですが、なんとなくアニメやオタクと言われる人たちには発達障害グレーゾーンみたいな人は多いように思いますし、そのせいか、カオナシというキャラクターは発達障害の特徴が多く含まれています。また境界性人格障害みたいな人も多いですよね。それらの特徴も盛り込まれているかな、と。

凹凸ちゃんねる
http://hattatu-matome.ldblog.jp/archives/55722053.html

境界性人格障害とは?

境界性人格障害の特徴:
・数時間単位での気分変動
・不安定な対人イメージ
・自分や他者に対する破壊的な行動

すごく感情が振れやすい人です。ただし、双極性障害(躁うつ病)とは違います。

検査:
・WAIS(知能検査)
・ロールシャッハ(投影法)

治療:
・薬物治療
・カウンセリング

薬はあまり効かないのでカウンセリングが中心になります。

それから隠れた凹凸、つまり発達障害がないかのチェックが必要です。
境界性人格障害と誤診されてカウンセリングばかりやっていた結果、混乱して治りが遅くなるパターンもあります。実は発達障害なのではないかときちんと鑑別することが大事です。

発達障害

発達障害は主に「自閉スペクトラム症(ASD)」と「注意欠如多動症(ADHD)」に分けられます。

自閉スペクトラム症(ASD):
・コミュニケーション能力に障害がある
・集団に馴染む能力に問題がある
・他者を理解しにくい
・こだわり
・感覚過敏

感覚過敏にはリスペリドンやアリピプラゾールが効きますが、それ以外は薬では良くなりません。

注意欠如多動症(ADHD):
・不注意
・多動性
・衝動性

薬はメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンがあります。
ASDとADHDは別の病気と考えられていますが、両者を併せ持つこともありますし、2つに共通する特徴もあります。

共通する特徴:
・睡眠時間が不規則になりやすい
・数的感覚(計算が苦手)
・言語能力(言い間違い、敬語が苦手)
・不器用さ、運動が苦手
・処理速度が遅い

しかし、これらの特徴がすべて揃っている人は稀です。

また、もともとの障害に加えて二次障害というものもあります。

二次障害:
・うつ、パニック障害
・PTSD、トラウマ(虐待される、いじめられる)
・対人不安、強迫症
・依存症(アルコール、ギャンブル等)

カオナシ

画像は著作権フリーなのでじっくり見てください(笑)

ストーリーをざっくり紹介すると、主人公の千尋という女の子が神様の世界に迷い込み、そこで生活をしながら両親の呪いを解いて元の世界に戻るというお話しです。

物語の途中でこの「カオナシ」に出会います。

カオナシはボケーっとして全然喋りません。言葉が足りないところが発達障害の人っぽい特徴です。

ストーリーが進んでいくと、カオナシは自分を気にかけてくれた千尋と仲良くしたいと思い、助けてくれたりします。ですが、コミュニケーションは不得手で、どこか不気味です。

千尋は神様の世界の銭湯で働いているのですが、そこでカオナシはお金をばら撒いてご馳走を用意しろと暴れます。そうすると、皆「お金があるぞ!」と寄ってきてお祭り騒ぎになります。千尋には「お前のために来たんだよ、プレゼントをやるから仲良くしよう」と言ったりするのですが、うまくいきません。

カオナシは思い通りにいかないと暴れてしまうのです。すごく大人しい人なのかなと近づくと、刺激があるたびにワーッとなってしまう、境界性人格障害の人に似ています。
でも、刺激がない時はとても穏やかで、座って落ち着いていることもできます。

最終的には、おばあさんのところで千尋やカオナシも含め何人かで暮らします。

似ているところ

発達障害の人も境界性人格障害の人もカオナシも「周囲の人間の刺激によって混乱して暴れる」という点が似ています。

実際の臨床でも本当にこのカオナシと同じような場面に遭遇することが多いです。
親子の場合、親御さん自身も発達障害の傾向があることが多く、そうすると子供にもその頑固さを押しつけてしまい、子供は混乱して暴れるということがあります。
ですので、もっと本人のリズムでやったら良いのでは、本人の好きなようにやらせよう、とよく言われます。

実際、人混みを離れていくとカオナシのように落ち着きます。発達障害の人も境界性人格障害の人もそうです。刺激に混乱してしまうので、穏やかな場所にいることが大事です。

また、医者が変に近づきすぎたり良くしすぎたりしても患者さんは混乱してしまいます。
こちらが良かれと思ってやっても、それが返って毒になることもあります。特に境界性人格障害の人については「医者が育てる」というような言い方をされることもあります。

どうすれば良いのか

彼らが目指す治療の目標は「穏やかな場所を手に入れる」ということだったりします。
でも自分ではなかなか用意できないので、一緒に作ってあげることが大事です。作ってあげれば落ち着きます。

ではカオナシは成長したのですか、というと、成長したわけではありません。
結局、本人が落ち着く場所に来れたから問題を起こさなくなったというだけで、カオナシも落ち着く場所から離れてまた銭湯に行けばトラブルを起こすのではという気はします。

本人に合った環境を作ってあげるということが大事です。

以上、今回は千と千尋の神隠しの「カオナシ」をテーマにお話ししました。
この映画を見たことのある人はたくさんいると思いますので、わからなかったこと、感想などコメントください。


2021.6.14

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