今日は「脳とカウンセリング」というテーマでお話しします。
脳の話第2弾です。
脳については説明も理解もとても難しいです…。
前編はこちら
https://wasedamental.com/youtubemovie/4812/
コンテンツ
心とは
心とは「脳が映し出した現象」です。
(脳とは神経細胞の集まりといった話は前半でしました)
人間が何かを見た時、知覚された情報は脳内の別々の場所で処理されます。
色、形、意味、雰囲気などはそれぞれ脳の違う場所で処理されます。つまり、目から入ってきた情報は別々の場所で処理され、もう一度統合されます。
ですから、実際に見たものと脳の中で再現されるものは別だったりします。
加工
これを昔の精神医学の言葉で「加工」と言います。
人間は見たものをそのまま理解するのではなく、無意識によって加工されたものを理解すると言いました。
現代医学では加工や無意識とは言わずに、感情、記憶、学習、知的処理能力によって元々のものとは違う形で理解される、と言われます。
例えば、落ち込んでいる人には、二人の人がニコニコしているのに、怒っているように感じられたりします。こちらの気分によって、見え方が変わる例です。
また、その文化を理解していない場合も加工されてしまいます。漫画で同じ日本人を描いても、海外の人が描いたものと日本人が描いたものでは違います。こちらの知識によって、見え方が変わる例です。
知的処理能力(ワーキングメモリ)によっても、一瞬で覚えられることの量は変わってきます。
言葉は通じない
自分が理解したものを言葉で相手に伝えたとき、相手は言葉通りに受け取れませんし、脳内で同じようには再生されなかったりします。
結局、言葉は通じません。当たり前と言えば当たり前ですが。
ですから、患者さんの頭の中にある情報が100%の形で主治医に伝わることは決してありません。
言葉を受け取っても、受け取った側でも加工されてしまいます。
カウンセリングとは何なのか
同じものを見ているけれど患者さんと治療者で違った受け取り方をします。
例えば、「短い黒い尻尾の猫」を見たとして、患者さんは「怒った猫で、長い尻尾だった」と理解し、主治医は「耳のない猫で、短い黒い尻尾だった」と理解しているかもしれません。
ですが、そのまま会話のやり取りを続けていくと、理解したものがだんだん修正されていきます。
「自分にはこう見えているけれど、相手にはこう見えているんだ。ということは…」というように、より真実に近い猫を理解できるようになります。
不安、事件、トラウマというのも同じで、自分で喋ってみて相手に「こうなんじゃない?」と受け取られ、また「こうかな?」とやり取りしているうちにに正しい姿が見えてきます。
正しい姿が見えてくれば、基本的には人間は問題を扱うことができますので、「こういう風に考えれば良いのだな」とか「こんなに怯える必要はないんだな」ということが理解できます。
だいたい世の中の出来事はそんなに怯えることはありません。
本当に悲惨なことがあったとしても、それは自分の努力では及ばないことだと諦められるようになります。
まとめ
脳内では「現実のあるがままとは別のことが起こる」ということを知ってもらえればと思います。
人間の心は脳が映し出す幻想で、その幻想は必ずしも現実を捉えることはありません。
相手にそれを伝えようとしても、決してイメージは伝えられないし、相手の中でも再加工されます。
ただ、会話を繰り返していけば、より真実に近づけます。
また説明し直しようと思います。
【参考】
前野隆司 著「脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説 (筑摩書房 2010)
ストール「精神薬理学エセンシャルズ 第4版」
脳と心
2021.7.28