今日は「夫が発達障害かも!?」というテーマでお話しします。
旦那さんがASD(アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症)の場合、その奥さんが、コミュニケーションの難しさや日常のトラブルからうつっぽくなってしまうことを「カサンドラ症候群」と呼びます。
今回は、このカサンドラ症候群についてお話しします。
コンテンツ
夫の発達障害
1.夫が発達障害
旦那さんの発達障害に気づいたときに、旦那さんが治療に協力してくれるのかどうかでかなり違います。
旦那さん自身の治療が進むことで、カサンドラの問題が解決することもあります。
2.子が発達障害
お子さんが発達障害だとわかり、それで悩んでいると実は旦那さんも発達障害の傾向があるとわかるパターンもあります。
子供に問題があり子育てに苦労しているときに、いつまでも旦那さんが無関心だったりします。
それで奥さんがだんだんうつっぽくなってしまい、「私が頑張らなくては」とカサンドラになってしまうことが結構あります。
「男の人だから育児に興味を持たないよ」「家事や育児をしないのは普通でしょ」という昭和的なアドバイスをされて、「よそもそうなのかな、私だけじゃないのかな」と思ったりもするのですが、そんなことはなく、普通は子供に関心はあります。
僕も子供がいるからわかりますが、最初は確かに父親になっていません。女の人のようにお腹が大きくなるわけでもないので、父親の自覚はなかなか持ちにくいのですが持つようになります。
ですが、ASD傾向のある人はなかなかそこの切り替えが上手くいかず、仕事に熱中していて家のことは全然関心がないことがあります。
それですごく傷つき、うつっぽくなりカサンドラになってしまうことがあるのです。
3.夫の虐待→暴力の連鎖
よくある話としては、旦那さんが虐待されていたということもあります。
嫁・義父問題や嫁・義母問題など義理の両親とうまくやれないなというときに、田舎の人だからということではなく、発達障害的なものがあるのではないかとわかってくると、実は夫もそうだったのではないか、夫はそのような親から虐待的なものを受けていたのではないか、ということがわかってくることがあります。
発達障害の人の虐待の問題は、全員ではありませんがあります。
そのような旦那さんが、子供が産まれると同じように暴力をしてしまう。イライラすると子供を怒鳴ったり殴ったり、暴力の連鎖が起こることもあります。
家族図
詳細はホワイトボードをご覧ください。
赤い丸は発達障害(ASD/ADHD)です。グレーゾーンも含めると結構います。
遺伝的な要素もあり親子は似てくるので、実は奥さん本人も父親がASDで父親に似た人を好きになってしまったということも結構あるかと思います。
治療
カサンドラ症候群の治療はどうするかと言うと、きちんと病名をつける、ということです。
・気づき→孤独への共感→自他理解
「あなたはこういうことで苦しんでいますよね」という気づきを与えてあげます。
病名がつくまでは孤独だったりするので、共感をして孤独を解消していきます。
そして、どのようなことが起きているのか、自分は今どのような状態なのか、どうしてうつっぽくなっているのか。
また、相手はどのようなことを考えているのか、発達障害はどのようなものなのか。ただの意地悪な人だから無関心なのではなく、愛情がないから無関心なのでもなく、そのような特性からきているのだと理解します。
そうするとだんだん距離の取り方や付き合い方がわかってきて、しなやかに考えていくことができるようになり、しなやかさを取り戻します。
これが一般的なカサンドラ症候群の治療の流れです。
ただ、言うのは簡単ですが行うのは難しいです。
共感や疾病理解でうつは良くなるのかというと、そんなに簡単な話ではありません。
もちろん、病名がついて旦那さんのことがわかり、治療がポンと終わってしまうパターンもあります。
5回や10回の診察でうまくいくパターンも6割くらいだと思います。ですが4割以上はすぐには良くなりません。
良くならない?
良くならないのはなぜかということを、いつもの生物心理社会モデルでお話しします。
・生物…自分自身も発達障害?不安?
奥さん自身の体質として何らかの問題があるパターンもあります。
隠れ発達障害が自分にもあった、不安を感じやすい体質だった。不安を感じやすいから、ある意味不安を感じにくい旦那さんに惹かれてしまった。発達障害で似たもの同士だから旦那さんを好きになってしまったということがあります。
自分にも境界性パーソナリティ障害などボーダー気質があるから旦那さんを好きになった、ということもあります。
精神科に行くほどではないけれど問題があることもあるのです。
・心理…虐待、トラウマ?共依存
自分自身に虐待やトラウマの問題があり、そのため共依存になりやすい、過度に相手に共感しすぎてしまうということもあります。
・社会…貧困、自立困難、社会サービスなし、田舎、両親 etc.
貧困の問題があって離婚ができない、自立困難な問題がある、田舎で社会サービスがないから難しい、子供を抱えて夫の経済援助なしに生活できない、実家には戻れない、田舎の目があるからそういうことはできないなどといったこともあり、良くならないということもあります。
いわゆる普通のカサンドラではなく、これにつきまとう複合的な問題が出てくることが多く、自分の問題でないと言えどもなかなか良くなりにくいと思います。
ではどうしたら良いかというと、治療はかなり難しいです。
自助団体を利用する、各種福祉サービスを利用するなどありますが、やはり個別なのです。どうすれば良いのか、個別の解を見つけていきます。
その人その人にあったものを想像しながらやっていく必要がありますので、なかなか難しい領域だと思います。
他の人の応用が利きにくいので、どうしたら良いかというのは難しいのです。
案外スッといくパターンもあるけれど、行かないパターンはこじれて長引いてしまうことがあります。
今日はカサンドラ症候群について解説しました。
発達障害
2021.11.26