※※※特定の薬を推奨するものではなく、症状に合わせて、最適な薬は異なります。主治医とよくご相談ください※※※
今回は「抗うつ薬」の全体像を見渡して見ます。患者さんだけでなく、福祉関係の方にも見ていただきたいと思います。
抗うつ薬は大きく6つに分かれます。
コンテンツ
SSRI 選択的セロトニン再取り込み阻害薬
SSRIは抗うつ薬の基本です。
脳内のセロトニンは使われた後に回収されるのですが、その回収をストップさせることでセロトニン量を増やします。セロトニンが増えることによって脳の組織変化が起こり、うつが良くなるという仕組みです。また、セロトニンには不安を抑える要素があるのでセロトニンが増えた段階で効果が出る人も時々いますが、基本的には増えたことで脳が変わっていくというのが作用機序です。セロトニンの増えはじめは気持ち悪いという人が多いです。
・パロキセチン:強力だが急にやめると離脱症状が起こりやすい
・セルトラリン:副作用は少ないが、少しずつ増やさなければならない
・フルボキサミン:強迫性障害にも使える
・エスシタロプラム:1錠から使えるが、逆に言うと1錠から副作用が出ることも
SNRI セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
基本+痛みの抑制
セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。つまり、セロトニンとノルアドレナリンの量が増えます。ノルアドレナリンが増えると意欲が出てきたりして飲み始めから調子が良くなる人もいます。ですが、あくまでも量が増えたことで脳の組織変化が起きてうつが良くなるというものです。痛みを抑制するのもSNRIの特徴です。整形外科の先生もSNRIを出したりします。
・デュロキセチン:痛みに効果がある
・ミルナシプラン:痛みに効果がある
・ベンラファキシン:比較的新しい薬。少量だとSSRIのような効果があるといわれる
NaSSA ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
α2受容体をブロックすることでセロトニンとノルアドレナリンの放出を増やし、それによって脳の組織変化が起こりうつがよくなるというものです。眠気が強く出るという特徴があります。
・ミルタザピン:強力だが眠気が強い
S-RIM セロトニン再取り込み阻害作用ならびにセロトニン受容体調節作用
SSRIの要素に加えて、HT1A(セロトニン1A)を刺激します。HT1Aを刺激するとドパミンの放出量が増え、それによって抗うつ効果が出ます。イメージとしてはSSRI+エビリファイ少量といった具合です。
・ボルチオキセチン
TCA 三環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬は古い薬です。SNRIの作用に加え、ドパミン再取り込みを阻害する働きがあります。強力ですが副作用も強いです。痛み止めて使う医師もいます。
・クロミプラミン
・アミトリプチン
四環系抗うつ薬
三環系よりマイルドですが、やはり副作用が出ます。ひどい不眠の人に出すこともあります。
・ミアンセリン:眠気が出る
その他
SARI(セロトニン遮断再取り込み阻害薬)
5-HT2A
・トラゾドン:眠気が出る(ひどい不眠の人に出すこともあります)
実際、どれが効くのか?
これはエビデンスがあります。一番強力なのはNaSSAで、次がSNRI、その次がSSRIです。副作用が出る順番も同じです(三環系は無視していますが)。ですので、初めは副作用の少ないSSRIからというのが基本です。