今日はユーモアについて語ってみようかなと思います。恥ずかしいのですが…。
診察の中で思わず笑ってしまうような掛け合いがあると、治療がうまくいっているなと思います。
精神科医は、ユーモアを「成熟した防衛機制(ストレス反応)」と捉えています。
人生から嫌なことがなくなることはなく、ユーモアでストレスを逃すことがあります。それは成熟した反応だと精神科的には考えます。
その逆は、「解離(ヒステリー反応)」や「投影同一視(自分が相手を怒っているのに、相手が自分を怒っていると言う)」などの原始的な防衛機制になります。
笑い飛ばすのは大事な能力です。
臨床的に注目しているポイントは、
・メタ視点があるか
・多義性が理解できるか
・比喩は使いこなせるか
・皮肉は理解できるか(隠れて攻撃する)
・演技力はあるか
・リズム感はあるか
・掛け合いができるか
・間の取り方
などです。こういったことを見ながらユーモアセンスなども見たりします。診察でそんなところを見ているの?と気にされるかもしれませんが、笑わせてくれとは思っていませんので安心してください。
「笑い」というと多くの人は苦手意識があったり、自分は下手なのではないかと思ったり、また笑いを取りに行く人は寒かったりするので構えてしまいます。怖いのですが、うまく話せると弱者の武器になりますし、制限への反抗にもなります。どうしようもないことは世の中にいっぱいあるので、ユーモアでそれを表現する、愚痴ることができると良いなと思います。
治療が終わる頃や良くなってくる頃は、患者さんのユーモアが見られることがあります。うつ、アルコール依存、ギャンブル依存などいろいろな病気の人がいてその緊張感を切り抜けた後に出てくるユーモアには、良くなってきたんだなと思いつつ一緒に笑ってしまいます。僕も患者さんも笑いを取りに行っているわけではないのですが、どこかでユーモアが起きる時があります。そういうのも大事だなと思います。