患者さんに「薬を飲んだら性格が変わりますか?」とよく聞かれます。ご安心ください、良くも悪くも変わりません。
性格が変わるドラッグがあるかというと、アルコール依存、大麻依存、覚せい剤依存になると無気力や抑うつになり人格の変化を起こします。ですが、精神科の薬にそのような危険なものはありません。
「薬を飲んでから元気がなくなった友達がいたんです」と言う人もいますが、これは病気が治る過程のこともあります。
うつ病、躁うつ病、統合失調症などの場合、調子が悪い時は焦って妙にそわそわしていることがあるのですが、良くなってくるとボーッとしているというか、穏やかに過ごされたりします。それが元気がなくなったり調子が悪そうに見えたりもするのですが、これは病気が治る過程です。これもしばらくしたら戻ります。
ADHDの人からは、「アイデア、創造性がなくなると聞いたのですが本当ですか?」とも聞かれます。これはそういう人も確かにいます。
思考が整理されてくるので、あり得ないところとあり得ないところがくっつくようなこと(苺大福のように)が減ってアイデアが出にくくなるということです。ただ、薬をやめたらすぐに戻ったりもしますし、アイデアが出なかったのは最初だけだったという人もいます。思いつきや衝動性が落ち着くので、アイデアがなくなるという言い方をすることもあります。主治医とよく相談して薬の調整をしてください。
「昔はもっと笑っていたのにと親に言われる」という人もいます。それは大人になったということです。5年前、10年前はもっと笑っていたと言いますが、それだけの時間がたてばいろいろな経験を経てイノセンスが失われる、素直に笑えなくなることもあると思います。
昔のように単純に笑ったり怒ったりできなくなった分、滋味溢れるというかそういう要素になります。経験をして、治療をしていく中でいろいろなことを考えるようになったということです。
ただ、今度は問題解決ばかりに思考が行ってしまって人生を楽しめなくなることもあります。精神科にずっと通っているとつい問題探し、間違い探しをしてしまうこともありますが、そこは悩みながらも人生を楽しむということが大事です。