今日は、草薙龍瞬・著「反応しない練習」について解説してみようと思います。
この本は早稲田のブックオフで購入したのですが、かなり見かけるのでだいぶ売れているということですね。まずタイトルが良くて、タイトルだけで心鷲掴みです。そうか、無駄な反応が僕らは多いのか、反応しなければ良いのかと気づかされます。
僕自身、精神医学や心理学だけでなく哲学や倫理学も好きなのでその辺りも少しずつお話できたらと思っています。精神科の臨床医は学問や思想、今売れている本を臨床の現場でどう応用しているのか、臨床のプロとしての目線から皆さんが知っている本を読み解いてみると、きっと何か発見があるのではないかと思います。
コンテンツ
反応しない練習の著者
こちらの本は2015年発刊ですので、著者の草薙龍瞬氏が45、6の時に書かれたものです。
著者は中学を中退して家出をし、大検を取ってから東大法学部に受かったそうです。インド、ミャンマー、タイをなどを経て僧侶になったということです。お寺を持たずに、執筆、講演、カウンセリングなどで生計を立てていらっしゃるようです。モットーは「宗教ではなく、幸福への方法としての仏教を」とされています。
ブッタ
その前に、ブッタがどんな人物なのか意外と知らないと思いますので少し説明をします。
ブッタは実在の人物で、紀元前463年から383年まで生きました。小さな国の王子として生まれます。この時代は国同士のいざこざがかなりあったようですので、王子といっても意気揚々というよりは、中小企業の社長の息子のような感じだったと思われます。決して貧しくはないけれど、気苦労が多い両親を皆がら育ったのではと思います。でも周りは自分より下なわけですから、孤独だったのではないでしょうか。16歳で結婚し、29歳で出家します。6年修行して独立し、35歳で仏教を開きます。80歳で亡くなります。
この時代はバラモン教がインドで流布していました。バラモン教はカースト制、神秘主義、礼拝を重視したといったことが特徴です。ブッタは出家した時にバラモン教や他の小さな宗教などいろいろ入り修行をしたようです。修行では断食や苦行を行うのですが、これはマゾヒスティックな快感に浸っているだけであまり意味がないのではと思うようになります。それで、バラモン教を否定して、現実主義で合理的に行こうということを訴えていきます。これがブッタの面白さです。
文化が成熟してくるとカースト制のような身分もできてきますし、社会秩序を保つために役に立つのか立たないのかよくわからない教え(飲み会とか)やルールが増えてくるのですが、ブッタはそんなものはいらないと言います。その辺りのロックな感じは我々の心を打ちます。無駄に守られているところもあるけれど、無駄から出ていかないと自分の心が自由にならないということがジレンマで、それを紀元前からやっていたわけです。日本人の心、価値観にはこれがすごく残っていて、ブッタの持つ諸行無常というのが日本人の美徳、美意識にかなり深く刻まれています。
本の要約
草薙さんは「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み、苦しみを抜けることができます」と言っています。
それは2つの段階に分けることができます。
1.心の反応を見ること
臨床的に言うと患者さんの状態をみて診断していくということです。
生い立ち、今の精神状態、身体症状などをみた上で合理的に考えていきます。そして診断の上で、診断にとらわれすぎず、その人にとってベストなやり方、エスケープの方法を伝えていきます。うつだったら休職を進めたり、パワハラがひどい場合は担当部署に相談をすることを勧めるなど、当たり前のことといえば当たり前のことをします。ただこれがなかなか難しく、合理的に考えた方が良いよとロジカルに伝えても伝わらないものなので、共感をしたり、診察の回数を重ねてから伝えたりなど患者さんによって変えていきます。
続きは後半の動画で。
https://wasedamental.com/youtubemovie/3015/