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心理職、援助職の人向け。またはセルフケアをするうえで重要なポイント。整理する力について語ります

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00:00 今日のテーマ
03:40 事実をベースに整理する
06:00 ロジカルに整理する
08:07 「暗黙知」を補って整理する
10:07 医学的に整理する

今日の動画は「不安を感じている人、それをどうしたら良いかわからない人、セルフケアに取り組んで行きたい人」に向けた動画です。セルフケアで一番大事なポイントは「整理する力」です。今回は整理する方法を医者目線で解説してみようと思います。
患者さんだけでなく、心理士さんやソーシャルワーカーの方にも有効だと思いますのでぜひご覧ください。

僕自身、子どもの時から今に至るまで混乱したすい性格でした。情報に惑わされやすく、ちょっとした情報で不安になったり混乱したりすることがあります。どうしたら混乱を脱することができるのかと考え、知識や思想・倫理・哲学・治療法を学べばこの混乱から抜け出せると思っていたのですが、精神科医を10年以上やってわかったことは、それは知識を学ぶとか思想を身につけるということではないということです。

生き方を決めてくれるような強烈なアイデンティティがあれば混乱や不安から逃れられるのではないかとも思いました。自衛隊(自衛隊にいました)や医師も強烈なアイデンティティで、自衛隊であれば国を守るという使命を与えられてそれを自分の人生の使命とすり替える事もできるし、医師であれば患者さんのために生きることを使命だとしてそれで自分の人生そのものをすり替えることもできるわけです。

でも、それでは心の不安は取れません。会社での出世が自分のアイデンティティになる、お金持ちになるのが自分のアイデンティティになるなど、外枠を手にいれること不安から逃れられることはまずありません。

不安がなくなるというのは何かというと、一つは整理する力です。整理して自分で考えていく力です。今回は精神科医は患者さんの話を聞きながらどうやって整理しているかを解説してみようと思います。

事実をベースに整理する

1つは事実をベースに整理するということです。

・不安で話が大きくなる
患者さんの話は不安やうつで修飾されて大きくなっていることが多く、事実をベースに整理してあげる必要があります。
会社でミスをして全員から嫌われていると思ってしまうと、不安に飲み込まれているために全員ではないかもしれないということまで目が届きません。そこで具体的に誰ですかと聞いていくと、だいたいそう思っている人は1割くらいだということがわかります。

・焦りで判断を急ぐ
今だったらコロナで緊急事態宣言、GoTo、ワクチンなど焦りますが、事実を数字ベースで見ながら判断することが大事です。

・「決めつけ」が増える
不安やうつになると「決めつけ」が増えます。自分はダメな人間だから何をしてもダメなんだと言ったり、あの人は悪い人だからすごく意地悪をしてくるなどと言いますが、そんなことはないのです。自分は確かにダメかもしれないけれど、それほど決定的なダメな人間ではないし、悪い人もいるけれど100%悪い人たちでもありません。本当に悪かったら会社にずっといられません。

ロジカルに整理する

・診断や治療方針にもつながる
本当にそうなんだろうか?とロジカルに整理し直してあげます。今の状況はこうだからこのように判断し、このような行動を取ったというようなことです。

うつで仕事はきちっとできていないかもしれないけれど、なんとか仕事は回っているのであればすぐに休職しなくてもとりあえずはやれるなとか、有休が残っているのであれば今は病休を使う必要はないといった話もできます。

・価値観、知識の差があっても、同じところに到達する
会社のことに関して患者さんと僕では知識の差はありますが、ロジカルに整理すると、価値観や知識の差があっても同じところに到達することができます。まずは薬を使って治療しましょう、薬は使わずに休みましょうなど、患者さんに医学知識があろうがなかろうが同じところに到達します。

「暗黙知」を補って整理する

セルフケアだと難しいこともありますが、「暗黙知」を補って整理することも大事です。患者さんが思っている常識は意外と非常識ということがあります。こちらは常識だからわざわざ言わなくても良いかなと思っても、色々聞いてみると歪みがあることもあります。

例えば、患者さんに虐待があると「家族とはこうだ」に歪みがあることがありますし、会社組織も変わっているところはあります。
また、上司や夫婦関係などのロールモデルが不在のこともあります。そうすると僕らが思っている常識が通じないこともあるのでその辺を補ってあげる必要があります。

医学的に整理する

最後に医学的に整理するということが大事です。
基本的には医学知識を使わなくても、事実をベースにロジカルに考え常識を補うことでだいたい良いのですが、最後に医学的な知識で味付けをするような感じです。

診断は薬は最後ですし、薬はあくまで補助剤です。患者さんは「不安なので抗不安薬を出してください」「気持ちが落ち込んでいるので抗うつ薬ください」など論理の飛躍が起こります。元気がないから元気が出る薬をくださいと言われても、そういうものはないわけです。元気がないならば、元気がない原因を事実をベースにロジカルに整理して暗黙知を補い、診断や説明をします。そうしなければ、ハンマーを持ったらすべて釘に見えるということが起こります。

最初から医学的な病名をつけるために話を聞いていると、なんだかその疾患に見えてきます。
うつ病なのか適応障害なのかどっちなのだろうと思いながら話を聞くとわけがわからなくなりますが、今の時点で一番大事なのはどうやったら休めるかであって、最後に診断をつけます。
発達障害だからといって最初から発達障害の薬を使うのではなく、この人に合理的な配慮の余地はないのだろうか、こうしたらミスが減るのではないかということを考えて最後にオプションとして薬の使用を考えるということが大事です。

略語やカタカナをどんどん使って説明していうと、医学に支配された話を聞いているような感じであまり良くないと思います。あくまで日常生活の中に精神医学はあるので特別な世界ではありません。

もう少し雑談をするのではれば、やはり最初の2つの力なのですよね。あとは経験があれば暗黙知の力もつきます。事実とロジックがきちんと話の中に含まれているドクターは優秀なのだなとわかります。僕は感情的になりやすかったり不安に飲み込まれやすかったりするので、今回の話をしながら自分を戒めています。

セルフケアをするときにも、事実に基づいて考え、そのデータや情報をロジカルに組みなおして行き、極端になっていないか常識に照らし合わせ、次の行動を考えるということが大事です。

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2021.1.13

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