今日は「診療とカウンセリングの違い」を解説してみようと思います。薬を出すか出さないか、診断をするかしないかの違いでしょ?と思われるかもしれませんが、診療の基本とカウンセリングの基本は結構違います。その中間にあるのが認知行動療法(CBT)です。認知行動療法の方がエビデンスが出やすい理由も解説します。
コンテンツ
診療
・語り
診療では何が行われているかというと、まず患者さんの「語り」があります。身体症状も含めての語りです。
・問題の抽出(診断)
語りの中から問題点の抽出をします。抽出方法は精神医学プラスαの知識、自分の人生経験や臨床経験およびロジカルなものを使って診断します。
・治療プランの作成
そして、治療プランを作成します。治療とは薬物療法や精神療法だったり、社会資源の活用だったりします。精神療法だったらどのような声掛けをしたら良いかを考えますし、社会資源だったら休息や傷病手当・自立支援・手帳を取るといったことをしていきます。
・行動
いろいろなアプローチを使って治療プランを立てたら行動をしてもらいます。
以上が診療の流れです。
認知行動療法
・「語り」のアジェンダ
語りの中から「アジェンダ」といってキーとなる出来事やテーマを選びます。そこから認知の歪みを抽出します。
・認知の歪み
認知の歪みを抽出する方法として、自動思考やスキーマ、これまでの経験やロジカルなものを使います。
・バランス思考、スキル
このような思考、スキルを身につけた方が良いという話をします。
・ホームワーク
このような思考、スキルを身につけるためにこのようなホームワークを行ってください、となります。
僕がよく問題を焦点化させると言うのは「認知の歪み」の話です。
また、治療者の世界観で物事を方向づける要素があり、そこは精神医学の世界と似ています。
カウンセリング
カウンセリングは少し違います。
カウンセリングは患者さんが語ったものを解釈したり肯定したりしますが、「こうした方が良い」とか「こういう行動をしましょう」ということは言わないのです。カウンセリングの世界では、基本的にはそれは自分で考えるものです。
「語り」の中から無意識や考え方の癖などを見つけたり、「こういう考え方をしているんだね」と受容したり肯定したりします。ベースにある世界観や心の質は皆違うし、納得の仕方も違います。診療の場合、悪い言い方をすれば精神医学の世界観の押しつけになるのですが、カウンセリングでは、断言せずに中立的な立場を取ることで、患者さんの自由な考えを促す、邪魔しないというのが基本です。
カウンセリングは主体が患者さん(クライアント)側にあるので治療は難しく、人を選びます。
「こうしたらいいんじゃない?」「こういう風に考えたらいいんじゃない?」とカウンセラーが協力的な態度を取ってくると、カウンセリングというよりは福祉的、デイケアや作業療法のようになり、カウンセリング的なところを逃してしまいます。
短期的に良くしようと思ったら認知行動療法が良いのですが、もっと長期的に見て、自分で考えて動く、そういうことを見守るのはカウンセリングでやったりします。
カウンセリングも流派によって違いはありますし、診療・CBT・カウンセリングそれぞれをまたがって考えることもあります。でも一番最初のスタートは上記のような違いがあります。
僕は格闘技が好きなので格闘技に例えると、総合格闘家も今は寝技が得意な人も打撃ができないと駄目ですし、打撃が得意な人も寝技ができないと総合格闘家としてやっていけません。それと同じで総合的な能力が問われているのです。この辺りは意外と言語化されていないかなと思いましたので動画にしてみました。
カウンセリング
2021.3.11