今日は「統合失調症の症状」について解説しようと思います。
統合失調症では、病気が悪化して幻覚妄想が出て、後半に入ると陽性症状といって幻覚妄想よりもうつっぽさ、元気のなさが目立ちます。その時期を経て安定期に入りますが、それ以前から症状があると言われています。そこから解説しようと思います。
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病前性格
統合失調症の人には「病前性格」があると言います。
内向的、非同調性(周囲と馴染むのが苦手)、自己表出の乏しさ(自分から言葉を発することが苦手)などで、このような人たちが統合失調症になりやすいと言われていました。今もそのように考えられているといえば考えられているのですが、この辺りはややこしいのであまり最近は言わない感じはします。
また、人口の1%程度が統合失調症を発症すると言われています。遺伝はなくはないですがすごく弱いです。人口の1%ですから100人に1人の割合です。防衛医大の寮の中でも統合失調症っぽくなった人はいました。
前駆期
発症する前から症状があるような感じはあります。これをトレマといいます。
気分:抑うつ、不安、不快
認知:思考力、集中力低下、奇妙な考え、奇妙なことを話す
知覚:離人感(自分が世界に属していないような感じ)
行動:引きこもり、脅迫的行動
この段階で統合失調症の前駆期ととらえて非定型の抗精神病薬を使った方が、発症を防ぎやすいし発症したとしても症状が重くならないという論文や研究データはたくさんあります。ただ、統合失調症は病気としては重い病気で、寛解とは言わず一生つきあっていく部分があります。ですので前駆期の段階で統合失調症と診断して良いのかという問題はあります。
となると医師は何をするかというと、「うつ」に注目をして非定型のMARTA、クエチアピン、エヴィリファイ等を使って、うつ症状に効かせつつ、統合失調症の幻覚妄想に対して牽制をしていくという治療をするかなと思います。極めて臨床的な判断ですが。あいまいな状況の中での最善策を考えます。
急性期
それが過ぎると急性期になります。急性期には幻覚妄想が起きます。
◆陽性症状
・妄想気分
周囲の世界がなんとなく変わった、不気味、何か起きるような感じがする。事件が起きるのでは、天災が起こるのではないか、世界の終末がくるのではないかといったものです。
・妄想着想
妄想気分が発展すると、妄想着想になります。
「犬が吠えている→6回吠えた→6は悪魔の数字だこれはやばい」といったことを言ったりします。
・妄想知覚
妄想着想のあとに妄想知覚が出ます。
「私は神に選ばれた、それがわかった」「私は殺されることがわかった」といったことを言います。
・被害妄想
注察妄想:誰かに監視されている
追跡妄想:誰かが追いかけてきている気がする、ストーカー被害にあっている気がする、あの人のつぶやきは自分のことだという気がする
被毒妄想:食事に毒が入っているから食べられない
・誇大妄想
「自分は天皇の血筋だ」「自分がこれを開発した。それを盗まれた」「◯◯と私は付き合っている」などと言います。
・幻覚
幻聴:自閉症が聞く幻聴は違う。特徴ははっきりとした他人の声。すごく低い男の人の声が多い。
幻視はあまりありません。
・自我障害
させられ体験:自分が誰かの命令で動かされている
◆陰性症状
薬で陽性症状が落ち着いてくると、今度は陰性症状が主体になったりします。
・感情の平板化
・意欲の低下
・談話の貧困化
ぼーっとする、ぶすっとした感じになります。砂漠の中を歩いているかのような、何もない話になります。
また、陽性症状と陰性症状は混ざりながら進んでいきます。ホワイトボードの図はあくまでイメージ図です。
悪くなると緊張病に発展する可能性があります。緊張病ではドパミンが過剰に出て、汗をかく、体温が上がる、体が固まるなどの自律神経症状が出てきます。緊張病症状まで進むと、抗精神病薬を入れるとそれが悪化する可能性もあるので電気けいれん療法をしたりします。体も固まっているので血栓ができやすくなったりもします。
統合失調症は精神科の中ではメジャーな病気ですが、メジャーだから治療が簡単ということではなく難しい病気です。診断に関しても悪化してからだとわかりやすいのですが、前駆期で捉えようとすると難しいですし、その時点で統合失調症だと決め打ちしてしまうとその後違った時に信頼関係が崩れることもありますので難しいです。
治療が進んでいっても急性期の時の記憶はあまりなかったりします。それが患者さんの心の平和にもなりますし、たとえ家族が強制的に入院させたとしても患者さんは意外と覚えていないことも多いです。症状が酷い時は閉鎖病棟に入って「出してくれ」と訴えても出してもらえなかったりします。そういう時は家族は心が痛むのですが、意外と大丈夫というのがあります。そうでないパターンもありますが。
統合失調症
2021.3.25