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愛着(アタッチメント)についてふんわり解説します

00:51 アタッチメント
03:28 どのようなモデルか
05:44 アタッチメントに歪みがある場合
07:33 トラウマ的な要素がある場合
08:23 あなただけではない…?

今日は「アタッチメント(愛着)」について全体像をふわりと解説します。

アタッチメント

アタッチメントとは「ある特定の対象と形成される愛情のきずな」と定義されます。精神科医のボウルヴィが提唱しました。

ある特定の対象というのは基本的には「母親」です。
すべての人間は母親から産まれてきますので、その母親との愛情のきずながきちんとできているかいないかということです。
産まれてすぐ乳母に育てられた、産まれた直後に母親が亡くなって父親は叔母に育てられたといったこともありますが、基本的には母親と考えてください。

そこが障害されていると「反応性アタッチメント障害」と言ったりします。
これは児童疾患の病名としてあるのですが、基本的には虐待児の傷害であることが多いです。
虐待の結果、愛情のきずなを形成できないということです。

ただ、虐待というのは紐解いてみると自閉の問題が隠れていることが多いことも知られています。
親は普通よりも厳しい教育をしていたかもしれないけれど、そうじゃなく本人の自閉性から虐待と感じることもあります。
互いに発達の問題がある場合もあります。

そもそも「特定の対象と形成されない」というのが自閉の構成要素でもあります。母親との間に適切な愛情関係を結べないというのが自閉性の特徴なので、虐待と自閉の相関関係は往々にしてあります。
虐待が発達障害を生むとも言えるし、発達のある人が虐待をしているということもあると思います。ネグレクトの問題などは有名な例ですね。

また、虐待されて育った人が自分の子供に虐待をするということもあります。
この辺りは複雑に絡み合っている領域です。

どのようなモデルか

アタッチメントの歪みがあるからそれがトラウマとして記憶され、そのトラウマがあるから愛情のきずながうまく結べません。
そこでしくじってしまっているので「大人は怖い」「お母さん怖い」「優しいものは怖い」「自分にとって安全なのは毛布だけ」などとなってしまいます。

それが原因で大人になってからも対人関係をうまく作れない、例えば「この人もいじめるのではないか」と思ってしまうこともあります。
最初でつまづいてしまって、後から改善していけないパターンです。

ただ実際は、虐待しているろくでもない親だから子供もろくでもないかというとそんなことはなく、学校の友達や支援者、先生など、いろいろなタイミングで回復することはあります。
母親は良くなくても父親がよかった、あるいはその逆ということもあります。

また、表面上生活はうまくいっているけれど本人の心は嫌な感じかもしれないですし、一見うまくいっているように見えて実はパワハラばかりする人だったということもあります。言えばきりがありません。

人類全体を見れば、貧困の問題も少しずつ減っているのでこのような問題も少しずつ減っているはずですが、日本社会にもまだ多く残っています。

アタッチメントに歪みがある場合

アタッチメントに問題があるとこのようなことがあります:

・自己認識がうまくできない
自分というものがどういうものなのか、今ひとつ捉えきれないことが続きます。

・自己コントロール、感情、衝動性
感情の起伏が激しくコントロールできない、衝動性を抑えられない、ギャンブルをしてしまう、お酒に逃げてしまうといったことがあります。

・共感力、対象理解
共感や対象理解が苦手だったりします。

これらは発達障害の特徴のような気もします。
たしかに、虐待された人は発達障害的な特徴をもったりします。
が、質的にちょっと違います。

不安や恐怖感から対象から距離を取っているのと、発達障害の人の能力欠如からくる距離の取り方は質的に違います。
本人にはわからなくても周りから見ればわ、なんとなくわかったりします。

でもその臨床感覚を研究に活かして論文にしようとしても難しく、またその臨床感覚を患者さんに伝えることも難しいです。本人が信じたいものもありますし、そもそもこちらが思っていることをすべて相手が理解することが正しい治療とも思いません。

トラウマ

トラウマ的な要素がある場合:

・外界の恐怖
外界は怖いもの、生きているのは良いことではないと思っていますし、思い込んでいます。

・サバイバル的日常
日常はサバイバルで食うか食われるかです。

・離人感、解離
気が弱いと離人感や解離が起きたりします。「複雑性PTSD」といわれたりしますが、これはまだ病名としてはまだ一般化されていません。

このように、内側も外側も混乱があるというのがアタッチメントの問題で起きることです。

あなただけではない…?

アタッチメントの患者さんは「そういう思いをしてきたのはあなただけじゃないよ」と散々言われてきています。それですごく苦しんでいます。

確かに生まれ持った回復する力、レジリエンスに差はあります。
例えば貧民街で育っても成り上がるラッパーやボクサーもいますが、彼らは元々の地力が違います。
周りの人は優しかったから、うまくいったケースもあるでしょう。
ですから人それぞれです。

ダメージだけに注目するのではなく、環境や本人の資質などいろいろなものをトータルで考えなければいけません。責めても仕方がないのですしお尻を叩いてもいけないので、共感していくことが大事です。

トラウマに対してどれくらい相手と接近するかというのは治療者の価値観やセンスにもよります。どんどん巻き込まれて伴走する治療を是とするパターンもあれば、距離を取りつつ「世の中はこうだよね」という治療パターンもあります。どれが良いかは難しいです。患者さんの出方にもよります。

虐待に関しては児童相談所も絡んだりしますが、法的な不備やマンパワーの問題などいろいろあります。本当に十分なものが提供されていないことも多いのですが、どこまで行けば十分かというのもありますので難しい分野です。

今回はアタッチメントについて全体像をざっくり語ってみました。


2021.5.22

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