今日は「漢方」についてサラッと話してみます。
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漢方を処方するとき
精神科でも漢方は使います。
患者さんに「ネットで見たのですが」などと言われて処方することも多いですが、もちろん診察して処方することもあります。処方の際はツムラの製品パンフレットを見ながら処方しています。内科などで他の漢方を出されていないかも患者さんに確認しています。
はじめての漢方を使う際、パンフレットの何を見ているのかというと、漢方の効き方をチェックしているのではなく「生薬」を確認しています。
漢方は効くか効かないかということをここではあまり議論しない方が良いと思いますし、エビデンスという意味では立証しにくかったりします。
とはいえ有名な漢方の中にはエビデンスがあるものもあります。
漢方とは何かというと、「生薬」という薬草を組み合わせたものです。
その薬草の中でも副作用が出やすいものや、量が多いと問題があるものがあります。それをいつも確認しています。
その上で、他の精神科の薬との組み合わせはどうかをチェックしています。
生薬
生薬の中では「甘草(カンゾウ)」と「麻黄(マオウ)」が副作用が出やすいものとして有名です。元気が出るといわれています。
・甘草
甘草の副作用は「間質性肺炎」や「偽アルドステロン症(低カリウム血症)」が有名です。
低カリウム血症になると、むくみやそれによる心不全が起こることがあります。
・麻黄
麻黄はエフェドリンのことです。交感神経系を刺激するので、汗が出過ぎたり動悸の原因になったりします。
また漢方によっては下剤的な要素もあるので、妊娠している方は流れてしまう可能性もあります。ですのでその辺りもチェックします。
代表的な漢方3つ
■抑肝散(よくかんさん)
抑肝散は精神科でよく出される漢方です。
イライラを抑えるので、攻撃的な認知症の方やイライラの強い子供によく出します。普通の薬が出しにくい人に抑肝散をよく出します。
甘草 1.5g
ソウジュツ 4
ブクリョウ 4
チョウトウコウ 3
トウキ 3
サイコ 2
■加味逍遙散
加味逍遙散は女性のイライラによく出されます。
甘草 1.5g
生姜 1
ソウジュツ 3
ブクリョウ 3
トウキ 3
サイコ 3
シャクヤク 3
その他
抑肝散の構成によく似ています。
■葛根湯
葛根湯は風邪の時に飲まれます。
甘草 4
麻黄 3
桂皮(シナモン)2
生姜 2
シャクヤク 2
葛根湯は体が温まって元気が出そうです。
今の人は「エナジードリンク」というとモンスターやレッドブルのイメージかもしれませんが、昔はユンケルが有名でした。ユンケルは漢方の成分をジュースにしたという感じです。
ちょっと調子が悪いときに、市販の葛根湯をエナジードリンク代わりに飲む医師は結構います。
漢方の出し方
漢方の出し方は現代薬とはやり方が違います。
症状(証):
体力の多い少ない、水が溜まっているかどうか、熱感など
↓
生薬の組み合わせ:
昔の先生は自分で生薬を組み合わせたそうです。
↓
代表的なパターン:
組み合わせの代表的なパターンが「漢方」になります。
抑肝散をベースに女性らしさを足したら加味逍遙散になるなど、代表的な組み合わせを少しいじっているという感じです。
現代医療と違う発想の実学なので、僕は生薬だけに注目しています。
今回は漢方の生薬や代表的なものについて解説しました。
薬について
2021.5.23