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規則を重視しすぎて、うつ(病)がよくならない人

00:59 確認すべきこと
05:33 ルール重視をしすぎる人
06:28 ルール重視の考えができる過程
07:40 どうやってルール重視の考え方を治していくのか
09:56 脳の特性ということも
11:03 まとめ

今日は「うつがよくならない人の特徴(ルール重視)」を紹介します。

うつがよくならない人の特徴は色々ありますが、その中の1つに「ルールを重視しすぎる人」というものがあります。

今回はルールを重視しすぎることが原因で、なかなか不安や落ち込みを解消できない人のパターンを紹介します。

確認すべきこと

うつが良くならないのは特性の問題だと言う前に、確認しなければならないことがあります。

1.診断
診断が合っているかどうかをもう一度見直す必要があります。
うつ病なのか躁うつ病なのかで薬が違いますし、発達障害がベースにあるので不適応を繰り返しているのではといった可能性も考えられます。

2.1/3は薬が効かない
次に大事なのは、そもそもうつ病の1/3くらいの人は薬が効かないということです。

1/3の人は時間の経過で良くなる人、1/3の人は薬がよく効く人、最後の1/3はなかなか薬が効かない人です。薬が効かないので治療に難渋すパターンももちろんあります。

3.そもそも時間がかかる
そもそもうつ病は治療に時間がかかる病気です。
インターネットを見ていると3ヶ月や半年で治る人も見受けられますし、もちろん軽い人でそのような人もいますが、そうではないパターンもあります。1年、2年、それ以上掛かる人もいますので、そこまで考慮されているのかも重要です。

4.薬の変更
・抗うつ薬
診断がうつ病で合っている場合、薬を十分量試されているのかを考える必要があります。
抗うつ薬にはSSRI、SNRI、NaSSA、SRIMなどいろいろありますし、メタ解析で効果や副作用のランキングも出ていますが、その人に合わせた薬を使っていきます。

基本的には保険容量のMAXに近いところをきちんと試して(4週間、8週間など)、効かなかった場合は次の薬を使ってみるなど、何回か試してみることが重要なポイントです。

・増強療法
増強療法をやっているかどうかも重要なポイントです。
抗うつ薬にプラスして抗精神病薬を入れることでアレンジを効かせることができます。そのようなオプションを使っているかどうかも大事です。

・ECT(電気けいれん療法)
・TMS(磁気刺激治療)
ECTやTMSを考慮しているかも重要です。特にECT(電気けいれん療法)は難治性のうつに効果があります。
ただこの辺りは中等症から重症の人でないと使うべきではないので、その見極めやタイミングが大事です。

薬物治療は必須なのですが、抗うつ薬を少量且つ多剤で使っている、抗うつ薬は吐き気があるからとベンゾ系だけで押し切ってしまう、といったことは良くない治療かと思います。

これらを考慮した上で、「本人のルール重視の特徴のせいで、うつが良くなりにくい人」の話をしようと思います。前置きが長かったですね。

ルール重視をしすぎる人

ルール重視をしすぎる人はなかなか生きていくのが大変だと思います。
臨床で良くあるのは、仕事の残業をめちゃくちゃしてしまうケースです。

ルール通りやろうと思うと、仕事とはなかなか終わるものではありません。真面目できっちりやるので、上司やいろいろな人からどんどん仕事を任されてしまいます。他の同僚からは「真面目で面倒くさい」「要領が悪い」などとバカにされたりしてしまいます。

本人は「ちゃんとルール通りやっているのに何なんだ」「何で他の人たちはやってくれないんだ」と怒ったり、混乱したり、困惑したりしています。

ルール重視の考えができる過程

話を聞いてみるとこのようなパターンがあります。(ここから先は僕のフィクションです)

二人兄弟で公務員の両親がいて、両親は真面目で時代遅れな感じで融通が利きません。厳しく育てられます。
弟はやんちゃで、親からは「お姉ちゃんからもちゃんとするように言いなさい」などと言われます。弟は割と要領よくやるのですが、お姉ちゃんは損な役回りをすることが多いです。

このような環境で育ってきているので、「ルールを守らなければいけない」という思いに囚われており、同じようなことを社会でもやってしまいます。

そうすると、家の中では両親がある程度手加減してくれるのですが、会社だと手加減してくれないのですごい量の仕事や残業を押し付けられたりしてしまいます。

このようなケースは臨床でよくあります。

どうやってルール重視の考え方を治していくのか

特徴を指摘するとともに、1つ1つ人や出来事を理解していきながら、「しなやかな思考(色々な角度から物事を考えられる)」を獲得する必要があります。

ただし、「しなやかな思考になりましょう」→「わかりました、では明日から」とはいきません。

「親ってこんな人だったな」
「お父さんは真面目過ぎたな」
「厳し過ぎたけど、あんなの小学生の娘に言うことじゃないよ」
「でもあの時のお父さんは30代前半だから、まあそういうことも言うかな」
「第一子だしな」
といったことを思ったり、
「会社であんなことがあったけれど、あの人なりにあんな苦労をしていたのかな」
など、色々なことを理解しながら、診察室の中でさまざまな角度で物事を検証したりすることで、色々な角度から物事を見られるようになります。

そのように、色々な角度から見られるようになると、
「ルールは刻々と変わっていくから、重視しすぎたらいけないな」
「世の中には色々な道があって、みんなそれぞれ色々な考えで必死に道を探しているんだ」
というように考えられるようになります。

ルールを破っているからあの人はダメ、ルールを軽視しているからあの人は要領が良いではなく、みんなそれぞれそれなりに必死にやっている、ということがわかります。

自分についても、「ルールを重視しすぎてしまって世の中の動きを見ながら動くのは苦手だけれど、まずまずの道を選びながら生きていくのが大事なんだな」ということにたどり着きます。

これが治療の流れです。

脳の特性ということも

注意すべき点としては、親子関係から理解していくことも1つですが、そうではなくその人の生物学的な脳の特性として強迫的な要素があるかどうかということです。硬くなるのが生物的な特性だったりすることもあります。

自分でも変だなと思いつつ、それに固執してしまうこともありますし、自閉スペクトラム症などの発達障害の問題もあります。その場合はいろいろな角度から物事を考えるのがそもそも苦手なので、なかなか会話の中だけでは深まっていきづらいです。もしかしたら自分が変わるよりも周りが変わるなど、合理的な配慮が重要なこともあります。

まとめ

うつが良くならない人の中に、ルールを重視しすぎてしまう人は一定数います。
そのために「ルールを守っているから自分は正しいんだ」という思いに囚われてしまいます。
ですが、ルールを守ることだけが正しいわけではありません。

道路の法定速度が40kmだとしても、周囲の車が50kmならばそちらに合わせないとスムーズにいかないこともあります。
規則だけではなく周囲に合わせる、周囲に合わせながら時流を読むことが重要な観点かと思います。


2021.7.17

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