がんと診断された後にうつになる人も多く、今日は見逃してはいけない初期症状、及び「がんと自殺」というテーマでお話しします。
意外と知られていないのですが、がんと診断された後でうつになってしまう人、うつになり自死に至ってしまうことがあります。
見落とされがちな問題ですが、今回の話を頭の隅に置いておいていただけると事故を防げるかもしれません。
知識として覚えておいてもらえたらと思います。
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がんと自殺
☆大きな問題の裏にあるメンタルの問題
がんと診断された直後はいろいろなことが起きます。周りの人も仕事のことや家庭のことなどいろいろなことを考えなければなりません。主治医の先生も「がんの治療をしなくては」という考えの方に行くので、メンタル面のことは忘れがちです。ですが重要なポイントです。
☆危機の時に初めてココロを考える
人は、困った時に初めて心の存在を考えます。僕や精神科の患者さんは普段から心のことを考えているかもしれませんが、多くの人は違います。自分に心というものがある、脳という臓器があることを考えている人はあまりいないと思います。
ですが、がんと診断された時に初めて自分の人生はどうなのだろう、こんなことをしていて良かったのだろうか、などと考えます。
突然のことなので、精神科に行くことに抵抗がある人も多いです。
うつに気づかず事故になってしまうこともあります。
☆多職種連携
症状があった時には、精神科、精神科ナース、精神保健福祉士につなぐなど連携をはかる必要があります。
重要なことは、普段と気持ちが違うな、心の感じが違うなと思ったら、がん治療の主治医でも良いのできちんと報告することです。そうすると主治医の方で連携するようにしてくれますし、病院内にそのような仕組みがない場合は精神科医を紹介するといったこともあります。
3つのフェーズ
もう少し細かく言うと3つのフェーズに分けられます。
①1ヶ月、6ヶ月
診断から最初の1ヶ月の間に事故が起きることが多いので、最初の1ヶ月は特に注意を払います。
そこから6ヶ月以内も自殺率が高いので①のフェーズは重要です。
②サバイバーシップ
治療がうまくいった場合、がんの治療を終えた後の人生を歩まなければいけません。
生き延びたけれども乳房を取ってしまった心の痛み、抗がん剤で髪の毛が抜けてしまったなど外見的な問題もあれば、治療によって体力が落ちて以前のように働けなくなった、キャリアアップの機会を逃してしまって自分が描いていた夢を叶えられなくなったといったこともテーマになります。
③進行、再発、終末
がんの治療が部分的にしかうまくいかなかった場合、進行・再発を繰り返し死に至るパターンもあります。その場合はそのような心の痛みをケアする治療が必要になってきます。
僕もかつては③の患者さんの治療をしていくことが結構ありました。治療者側が病まないように、うまく連携してやっていく必要があります。
家族でやろうとすると本当に大変なので、専門家を交えてきちんと治療をしていくことが大事です。
初期症状
このような症状が見られる場合は気をつける必要があります。
・視野が狭い
柔軟な発想ができなくなっていて、これしかないと思っている。
・「不安」の過大評価
もう治療はうまくいかない、貯金がこれしかないから最後まで治療ができないし家族に迷惑をかけてしまうなど、過度に不安を大きくしている。
・社会に対しネガティブ
このままでは日本は潰れる、会社は倒産するに決まっている、など社会に対してネガティブな発言が増え、攻撃的で苛立ちがある。
このような場合、家族や周りの方はうつの可能性を考えてあげた方が良いかと思います。
本人が自分の異変に気付くことも重要です。
上記のような知識があるだけでも全然違います。それだけで事故を防げることもありますので頭の隅に入れておいてください。
精神科を受診することは恥ずかしくありませんので、現在闘病中の方も恥ずかしがらずに主治医の先生に相談していただくのが良いかと思います。
うつ病
2021.8.6