今日は「ひとりでいるのが楽。変ですか?」という質問にお答えします。
コロナで在宅勤務が増えて飲み会などの付き合いが減って楽になった、夏休みになっても実家から帰って来いと言われなくなって楽になった、と言う患者さんがたくさんいます。
「一人の時間が増えて本当に楽です」と言う方がすごく多いです。
ですが一方で、本当にこれで良いのだろうか?と不安に思っている患者さんもたくさんいます。
それについて僕なりの考えを精神科医目線でお答えします。
結論としては、「良かったです。余力ができたら、人間関係に目を向けよう」です。
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損な役回りをすることが多かった
おそらく、患者さんたちはこれまで対人関係で損な役回りをし続けていたのだと思います。
人間関係というのは難しく、政治的なやりとりもあれば、空気を読むなどありますし、利害関係があれば奪い合いにもなります。兄弟だっておもちゃを奪い合います。利害関係が絡めばそうなるものです。
人間関係は常に駆け引きの連続です。
「一勝、一敗、一引き分け」など万年最下位でなければ「一勝、二敗、三引き分け」くらいでもやっていけますが、ほとんど負けていると嫌になるものです。
診断としては、もともと対人不安が強い人でそこに過敏になってしまう人は(社交)不安障害になりますし、発達障害(ASD/ADHD)の人は会話のリズム感が違いますから、うまく空気が読めなかったり立居振る舞いがわからず混乱してしまい、損な役割をしてしまうこともあります。
そのように人とうまくやれない結果、アルコールやギャンブルなどに依存してしまう人もいます。
境界性人格障害、回避性人格障害などそもそも人とうまくやれない人もいます。
そのような人たちでは「今回のコロナで一人でいるのが楽です」と言う人が増えたと思います。
損しない関係づくりを
患者さんは、「悩んでばかりで、いっそのこと人間関係なんていらない。インターネットも発達しているのだから、先生からも人間関係はいらないと言ってほしい」と思っているようです。
ただ、これも何とも言えません。
結局僕の答えとしては、
・孤独でOKという人はいる
孤独が好きという人はいます。ASDの一部の人など自閉的な人、パーソナリティ症A群のシゾイドと呼ばれるような人たちは、人間関係を求めません。統合失調症の人にもそのような人はいて、「半年に1回くらいデイケアに通えば良いか」と言ったりしますし、外来でも会話をせずパッと終われば良いかという感じです。
・しかし全員ではない。「寂しい」と言う人は多い
確かに、上記のような人たちは外来で少し喋れば十分ですが、あくまでこれは一部の人です。
今は人間関係が減ってラッキーだと思って楽しいかもしれませんが、3ヶ月、半年と時間が経てば寂しいという人が多いです。不安障害、発達障害などの人たちも外来で「寂しい」と漏らすことは多いです。
・損をしない関係づくりを…
ですから、余力があれば人間関係に目を向けて、損をしない関係づくりをするのが建設的かなと思います。
今までは損な役回りをしたけれど、これからはできるだけ損をしない人と付き合う。
リア充、プア充
逆に人間関係で得をしている人は「リア充」や「プア充」と呼ばれたりします。
「リア充」は、個人の能力も高くて人間関係も充実している人、能力磨きをして友達にも色々振る舞い、人間関係を強固にした方が楽しいというような人です。
「プア充(マイルドヤンキー)」は、お金も自分で稼ぐ力もあまりないけれど、人間関係は充実している、高級なものを求めず友達とシェアリングするような人たちです。
彼らの仲間になれとは言いませんが、患者さんは彼らから搾取されてきた人たちでもあるので、ある程度立居振る舞いは強気でいることや、断る勇気を持つことは少しずつ身につける必要があります。そうでないと、また人間関係に巻き込まれてしまいます。
世の中がどう変わるかわかりませんが、人間関係はつきまとうものです。
ですから、人間関係をゼロにすることを目指すよりは、余力ができたら少しずつ身につけていく方が建設的かと思います。
彼らの生き方が必ずしも良いとは僕も思いませんし、僕も一人が好きだから開業しているというのもあります。個人でいることの豊かさ、楽しさもよくわかりますが、余力ができたら振る舞い方に気を払った方が後々のトラブルを防げるのではないかと思います。
ということで、「人間関係はいらないと言ってほしい」という気持ちを肯定できるものではありませんが、参考にしていただければと思います。
前向きになる考え方
2021.8.10