今日は「治らないのに、通う意味はある?」をテーマにお話しします。
もちろん通う意味はあります。
ですが、その意味が変わっていきます。
精神科の問題に限らず、世の中の問題は2つに分けられます。
1.すぐに解決できる問題(診断→マネジメント)
2.抱え続ける問題(成長を待つ、補助エンジン)
すぐに解決できる問題から、抱え続ける問題に変わっていくのです。
今回はこちらについてお話しします。
コンテンツ
すぐに解決できる問題
すぐに解決できる問題は、早い段階の話です。
診察で言えば4回~10回目くらいです。
この段階では、診断をして「こうしたらいいですよ」というマネジメントをしたり、薬を出したりします。
こういったことは、比較的すぐに解決できる問題です。やるべきことがはっきりしています。
ですが、後半になるにつれて「抱える問題」に変わってきます。
自分の弱さ、発達障害的な脳の特性の問題、障害を抱え続けなければならない問題、薬を飲み続けなければいけないことへの葛藤、それによる妊娠・結婚への不安などいろいろあります。
僕らは、抱え続ける問題のときには「成長を待つ」とか、「補助エンジン」として一緒に問題を考えて解決するための脳のエンジン機能といった形でかかわります。
僕の中の大体の雰囲気ではこのようになります。
~04回:見立て、アセスメント(あなたはこういう人ですよ)
~10回:ひとまずの解決?(ある程度の解決が見える)
~50回:付き合い続ける
51回~:何を発見する?
最初のうちはすぐに解決できる問題を話していきますが、だんだんと「人生って何なのかな」というような抱える問題になっていきます。
これは精神科の外来ですることなのかと思われるかもしれませんが、そういうものです。結局そうなるのです。
回を重ねるごとに「抱える問題」を扱うことが増えます。
抱える問題
・誰にとって役立つ助言か
抱える問題になったときに、主治医側の満足感になっていないか、ということがあります。
カウンセリングの中でも診療の中でも、患者さんはすぐに解決できる問題をもっとマネジメントしてほしいときに、僕らは「これが心だよね」「人生ってそういうものだよね」「不安を感じることってあるよね」「不安を感じる時ってついついそうなっちゃうよね」と共感だけしていてもうまくいかないことがあります。
「その問題は『抱える問題』で、あなたは『抱えることや、曖昧なものを受け入れること』が苦手なのかも。あなたは『白黒思考型』ですよね」
などと抱えるときには言ったりしますが、その話題だけをしていても、本当にその助言が患者さんの役に立っているのか、そのような空間を味わいたいのか、そうではなくてマネジメントを一緒にして欲しいのか、一緒に考えて欲しいのか、ということも出てくるかと思います。
いつまでも通って良い
治らないのに通う意味があるのか、そのような話をして良いのかということですが、抱え続ける問題を扱うことは治療者は理解していますので、あまり恥ずかしがらず通ってもらえればと思います。
月1回でも2回でも、いつまでも通っても良いのです。2ヶ月に1回や半年に1回でも構いません。
薬のことではなく遊びに来て、何か自分の悩みや人生の話、脳の特性の話をしてもらっても良いと思います。
摂食障害の過食嘔吐が終わったからもう通うのはやめましょうね、という話でもありません。
アルコール依存症でも、断酒が続いているから通院をやめましょうということでもありません。
時々来てもらっても全然問題ありません。
今回は、「治らないのに(治った後でも)通う意味はある?」というテーマでお話ししました。
前向きになる考え方
2021.9.24