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スマホで「うつ」になりますか?

01:20 睡眠不足とうつ
01:56 なぜ時間泥棒になるか?
03:30 情報のジャンクフード
04:38 SNS
07:05 どうやってハマらせるのか
09:42 スマートフォン
11:21 治療の役に立つ動画

今日は「スマホで『うつ』になりますか」というテーマでお話しします。

よく「スマートフォンを使っているとうつになってしまう」「ブルーライトは良くない」などと聞かれます。

僕がどのように答えているかと言うと、例えば、スマートフォンは「時間泥棒」だと答えています。
スマートフォンは楽しいので、時間泥棒になり睡眠不足になります。だからうつになるよと簡単に説明しています。
(時間がない→睡眠不足→休まらない
 時間がない→問題の先送り→問題が山積み→落ち込む など)

それが答えと言えば答えですが、もう少し深掘りします。
なぜスマートフォンは時間泥棒になるのか、時間泥棒になってなぜ鬱っぽくなっていくのか、精神疾患の治療を阻害するのか、睡眠不足になるのかということをお話ししようと思います。

■睡眠不足とうつ

睡眠不足はそもそも脳の回復のために良くありません。

寝ないと脳みそは休まりませんし、頭もまとまりません。頭がまとまらないから気分も落ち込んでしまいます。
よく寝ることは重要です。7~8時間は寝るようにします。
昼寝を15分くらい取ることも大事です。

■なぜ時間泥棒になるか?

スマートフォンは我慢できないシステムを絶えず研究しています。
僕もYouTubeのデータ解析をしながら思いますが、YouTubeもTikTokもついつい見てしまうテクニックを作り手によく教えてくれます。

欲望を刺激するシステムをすごく研究しているのです。
いわゆるジャンクフードのようなものです。

世の中で一番「おいしい」を刺激するのはラーメンやハンバーガーです。
ジャンクフードというのは世の中で一番おいしいんです。油と塩分と糖質とうま味調味料。これを限界まで高めているので「ウマイ」のです。抗えません。

しょっぱくするのですが、ただしょっぱくすると食べにくいのでうまみ調味料や甘みを足します。そうすると塩味が薄れるのでよりしょっぱくできます。するとうまみ調味料や甘みをもっと足すことができます。この限界ギリギリまで行くので、しょっぱウマ、などと言います。
ラーメンはめちゃくちゃおいしいのですが、ジャンクフードですし欲望の刺激です。

■情報のジャンクフード

それと同じで、スマートフォン上にある情報は情報のジャンクフードです。
今人気のあるSNSやゲームは、まさにこのような研究をしてうまく反映させています。

「俺は我慢できるよ」という人もいるでしょうし、「怖いな」という人もいると思います。

これは臨床をしていて思うのですが、苦手な人ほどハマります。
その分野について苦手意識のない人はハマりません。

お金持ちはギャンブルにそれほどハマりませんし、モテない人の方が出会い系アプリにハマってしまうことがあります。

■SNS

・LINE…友達
LINEは友達にいつでも会えるという欲望を満たしてくれます。いつでも友達と連絡が取れるし、無料で電話もできます。
寂しさを解決してくれる装置ですが、一方で友達から連絡が来ないと寂しい、うまくメッセージを返せなくて困る、といった問題を引き起こし時間を取られてしまいます。

・Twitter…短文
Twitterは短文で自分の気持ちを表現できます。ですから、言葉を使うのが苦手な人にとって相当な麻薬です。「いいね」をもらうこともできます。
文章が苦手な人ほどハマると言うと語弊があるかもしれませんが、そのようなことはあると思います。
Twitterは誹謗中傷も多く、うつの原因にもなります。

・Instagram…容姿、モテ
Instagramは写真ですので、容姿やモテに関係します。
自分のファッションや容姿を見せることで承認欲求を満たします。同時にファッションの研究もでき、   ます。
逆にそのようなことにコンプレックスや苦手意識があると、整形依存や摂食障害などの問題を引き起こすこともあります。

・Facebook…成功、モテ

・tiktok…容姿、お金
短い時間で情報を伝え刺激できる欲望ということで、モテ、お金、成功、容姿といったことに優れた人がもてはやされます。

・YouTube…陰謀論
YouTubeに陰謀論ははまります。不安をあおったり、悪口やゴシップなど。

そのほかに、ゲームでコミュニケーションを取る、楽しみを与えて脳内麻薬を出させるといったこともあります。

■どうやってハマらせるのか

・集中力を奪う
集中力があると我慢できてしまうので、それを奪う必要があります。
ADHDの治療でも集中力をアップさせるための薬(コンサータ、ストラテラなど)を使います。それと同じように、集中力があれば我慢をすることができます。
ですから集中力を奪うようなシステムを考えます。

・考える力を奪う
考えたら馬鹿らしいものです。SNSに時間を使うよりも、仕事、勉強や体を休めることに時間を使ったほうが良いのですが、それを考えさせないようなシステムをつくります。そのほうが長くやらせることができます。

・欲望を刺激する
SNSやYouTubeもそうですが、どうやって長く使ってもらうのか、何が一番面白いのかというのを研究しています。いうならば、「欲望のジャンクフード」です。

ジャンクフードな情報とは、まずは「お金」です。お金持ちになる方法、お金が儲かる方法、お金がなくならない方法など。
他に「成功」もあります。どうすれば成功するかなど。

お金はどんなものにも変貌します。
これは、自分のやりたいことや自分の夢のための決断を先送りしているということです。

本当は「自分の人生でこういうことをしたい」と思うのだけれど、そこまで考えるのはかなり手間だったりするので、その前段階のお金を刺激してあげるというものです。

お金の他に、成功、容姿(綺麗になる話)、モテる方法、グルメ(フードポルノ)、不安をあおるニュース、悪口、ゴシップ、ペット、いい人動画などがあります。

「いい人動画」というのは募金をするような動画です。これも結構ジャンクです。
募金をしたり、人助けをしたりしている動画を見ていると、自分もそのようなことをした気持ちになり幸せな気持ちになります。ですから、このような動画も伸びます。

これらは欲望を刺激していて、こういった動画を見ているとなんとなく自分の時間が過ぎていき、自分の人生を送れなくなってしまいます。
ですから欲望を刺激するものには気をつけた方が良いのです。

■スマートフォン

僕はスマートフォンがあることでどのようなことが臨床の中で起きているのか、ということをよく考えますが、ベタに今回述べたような問題があるなと思います。

YouTubeをやることで治療の妨げになりませんか、僕への陽性転移はどうですかと言われますが、その水準の話をする前に、スマートフォンがどのような問題を起こしているのかということをディスカッションする必要があります。

ジャンクなものの影響力が大きすぎます。陽性転移は漬物ぐらいです
たくあんの話をしている横にハンバーガーがあるというか、たくあんがいるのかいらないのか、梅干しの味はしょっぱいのかどうなのかという話をしていても仕方がないような気がします。

どのような動画を撮るべきか、どのようなものが本当に治療に役立つのか。
スマートフォンは本当に治療の役に立たないのか、スマホをなくしたら良いのかというと、そういう訳ではありません。

スマートフォンは素晴らしい機械なので、うまい方向に利用しなければいけません。
ジャンクフードに負けずにきちんとしなければいけません。

■治療の役に立つ動画

その動画は欲望を刺激しているだけなのか、治療の役に立っているのかを考え続けることが大事です。

治療の役に立つ動画とは何なのかというと、「巨人の肩に乗れる動画」だと思います。

精神科の患者さんの悩みというのは、患者さんは違っても、臨床の中で何度も経験しています。
ですから、新しい患者さんが来ても過去の患者さんの経験がとても役に立ちます。

そして、それは僕の臨床経験だけでなく、先輩たちの臨床経験も踏まえて「巨人の肩」に乗っているので、どうすれば良いのかが分かるのです。

ですから「役に立つ動画とは何か」と言った時に、患者さんが巨人の肩に乗れるようなものを作る必要があると思います。

「こういう悩みにはこのような解決アプローチをとることがあります」など、もちろん無数にあるのですが、それらをピックアップしていって、これからどのようなことで悩みやすいのか、どのようなことでつまずきやすいのかといったことを予め説明することで、治療という困難な山道も登りやすくなるのではと思います。

今日は、「スマホで『うつ』になりますか」というテーマでお話をしました。
スマホに時間を奪われないように気をつけてください。


2021.9.28

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