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精神医学の歴史。中長期的な視点を手に入れるために、必要な知識

02:03 歴史の流れ
04:34 物について
08:06 精神医学
16:31 今後の世の中

今日は「精神医学の歴史」をざっくりお話ししようと思います。

患者さんと話をしているときに、患者さんはどんな世代なのか、どのような人生を送ってきたのか、患者さんの親御さんはどんな世代だったのかをよく想像します。

どんな時代だったかというのは、僕が生きていない時代でもあるのであまりわからないことが結構あります。
その都度患者さんに聞いたりもするのですが、自分なりに歴史を学ばないと思いつつ後手後手になってしまっていました。

人間の心を理解するために社会学的な知識は重要なので、歴史を押さえておくことは重要です。
今回、頭の整理も兼ねてまとめましたので、その資料を皆さんと共有することで何か皆さんにも発見があるのではないかと思います。

ホワイトボードの文字色はこのように分けています。

黒:その年にあった大きな出来事、世相を表す言葉
青:物の変化、生活の中にどのような物が増えたのか
赤:精神医学の歴史的に大事なこと
緑:強調、自分なりに大事だと思ったこと

大まかな流れ

1914年に「第一次世界大戦」が始まりました。
第一次世界大戦後、アメリカは戦争のおかげで非常に儲かります。
1920年代はアメリカの繁栄がありました。

1929年にアメリカの市場から「世界恐慌」が起こり、そこから世界的な不景気になりブロック経済になっていきます。
ブロック経済の時に、日本は物がないのでついに戦争を始めてしまいます。
1941年に「太平洋戦争」が始まり、アメリカと戦って負けます。
1945年に「ポツダム宣言」が発されます。

1947~1949年に生まれたのが団塊世代です。団塊世代の人たちが2025年くらいに後期高齢者に入ってきます。そのため医療費がかなり上がると言われています。(2025年問題)

1950年代は「復興期」と呼ばれる時期です。
1960年代は「高度経済成長期」になります。
1970年代にアメリカ化・マクドナルドがやって来たりして、アメリカのように日本も豊かになります。

1980年代には「バブル経済」と言ってJapan as Number Oneの時代が来ます。
1990年代に膨らんだ経済が崩壊し、「バブル崩壊」となります。失われた10年と言われます。
2000年くらいに「派遣法」が広がり、皆さんが困ります。
2010年くらいに「アベノミクス」があり株価だけは上がります。
そして2020年代になります。

以上がざっくりとした流れです。

団塊世代の人たちがアメリカ化して、豊かな時に子供たちを産んだということです。この時生まれた人たちは団塊Jr.と呼ばれています。今の40代後半の人たちです。

物について

1950年代の復興期には「白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫」が三種の神器と呼ばれました。
これらが少しずつ庶民も手に入るようになります。

1960年代には、新三種の神器と呼ばれる「カラーテレビ、クーラー、カー(3C/ColorTV,Cooler,Car)」が浸透します。

1980年代には「ファミコン」が登場します(1983)。インターネットの初期のものが出きたのもこの時期です。
この辺でパソコンのことを覚えた人は、後のITバブルで富を得ます。
1995年にはwindows95が出ます。

1990年くらいになると僕も物心がついてきていたので「すごく世の中って暗いな」と感じていました。景気もどんどん悪くなる一方でした。
阪神淡路大震災、松本サリン事件、神戸連続児童殺傷事件などもありました。

2000年代にパソコンやインターネットがどの家庭にも普及し始めました。
window95くらいから家にパソコンがある人もいましたが、広がったのはこれくらいかなと思います。

2010年くらいにはスマホを持つようになり、その結果SNSが爆発的に広がりました。

僕自身、2000年の頃は学生で、2010年頃には医者になっていました。
医者になった当初は、病院も紙カルテでした。
回診用のメモも紙からスマホになり世の中変わったなと思いました。

2020年代を代表する技術は「5G」になるのではないかと思います。
在宅勤務の広がりもあります。
YouTubeでいろいろな情報を知ることができるようになったことも大きいと思います

それから個人的な趣味の話になりますが、次はどうなるかと言うと、
・データxAIの加速
・VR/AR
・ロボット技術
・タンパク質⇄mRNA(新薬が出る)
あくまで僕の未来予測です。

このように、今までどんなことが起きたのか、これからどんなことが起きるのかを考えながら診療しています。

精神医学

精神医学的には何が起きたかという話です。

クレペリンが「統合失調症」と「気分障害」を分けたのは1900年頃のことです。
それまでは診断体系は結構ぐちゃぐちゃでした。
国によってバラバラだったのを、ドイツのクレペリンが教科書としてまとめ上げ、今の診断体系を作ったと言われています。

日本はその時どのようなことをしていたかと言うと、1900年に「精神病者監護法」という法律ができ、私宅監置をしていました。

統合失調症の患者さんは、入院するところがなく家でみていました。薬ができるのは1952年なので、当時は薬もありませんでした。そのため、幻覚妄想に支配された場合はただ縛っておくしかなかったのです。

それを家でやらせていたので、本当にかわいそうな状況でした。家族が患者さんを縛っていたのですが、身内のことを縛るというのは本当に心を痛めることだったと思います。

1919年に「精神病院法」ができ少しずつ病院ができるのですが、まだ各都道府県にはありませんでした。

1920年くらいに「作業療法」という今で言うデイケアが治療法としてわかってきました。

1936年には「ロボトミー」という手術が始まりました。脳の半分を切除し暴れないようにするものというものです。「電気ショック(電気けいれん療法)」も発見されます。

それまではどのような治療していたかと言うと、ロボトミーや電気ショックは一般的ではなく(ロボトミーは画期的だいうことでノーベル賞も取りました)、隔離、拘束、カウンセリングでした。
フロイトは1939年に亡くなりますが、精神分析という形でカウンセリングによる治療を発展させました。

1952年に「クロルプロマジン」という薬ができます。

戦争や世界恐慌の時代は、皆お金もないし食べ物すらない時代だったので、精神病の患者さんは餓死することが多かったと言われています。

1950年に「精神衛生法」ができ、ようやく各都道府県に精神科の病院ができるようになります。

1964年には「ライシャワー事件」が起きます。
病院は各都道府県にできましたが、まだ十分ではなかったのです。統合失調症の幻覚妄想状態にあった患者さんが、アメリカの外交官を刺してしまうという事件が起きました。これをライシャワー事件と言います。
外交上の問題にもなり、新聞でも精神科の患者さんへの偏見が広まるような報道をされてしまいました。

この頃、私立病院が一気に増え、2.4万床から15万床に増えました。
僕が以前働いていた病院も私立病院だったのですが、この時期にできた病院でした。

1950年代を境に「精神病理学」から「精神薬理学」、つまり薬がメインとなる治療に移っていきます。

1970年頃には「認知行動療法」が少しずつ普及していきます。精神分析から認知行動療法に変わってきた感じです。

1980年には「DSM-III」ができました。クレペリンがまとめたものをより現代的にしたものです。
この辺りから、境界性人格障害という診断やPTSDなどの診断名が増え、整理されていきます。

1984年には「宇都宮病院事件」が起こります。
看護師が患者さんを殴るという事件がありました。
この事件から1987年には「精神保健法」ができ、任意入院や医療保護入院のルールが厳密化されるようになりました。

1993年に「障害者基本法」ができ、精神障害者も知的障害や身体障害者の仲間に入ります。

1995年に「精神保健福祉法」ができ、ようやく障害者手帳が制度化されました。

1990年代には認知行動療法の第三世代という形で、「弁証法的行動療法」や「マインドフルネス」ができます。
認知行動療法は第二世代で、第一世代は1950年くらいの行動療法です。
今で言う認知行動療法は第二世代にあたります。

1990年代ごろに「デイケア」がもっとできるようになりました。
東京だと榎本クリニックさんが有名です。都内にいくつかありデイケアも充実しています。1992年に開設されました。

1999年に「SSRI」が発売になります。
ここでうつ病の啓蒙活動が行われ、うつ病患者が広まります。
1999年にはうつ病と診断された人は44万人でしたが、5年後には92万人になります。

2002年には「過労死」が問題となり、国際語になります。

2005年に「発達障害者支援法」ができます。
発達障害者の就労支援はこの後にできます。2005年にLITALICOさん、2009年にKaienさんが設立されました。

2000年代には駅前クリニックが増えます。
2008年に「ゆうメンタルクリニック」ができ、10年で相当増えました。

当院の開業は2018年で、YouTubeを始めたのは2019年12月です。

今後の世の中 

今後の世の中はどうなっていくかと言うと、精神医学的な問題としては、これまでを見るとわかるように10年ごとにすごく良くなっています。
ただ、パワーアップはしていますが、まだまだ十分ではありません。

新しいテーマとしてはこのようなことがあると思います。

・高齢化(長期入院、介護)
たくさん病院を作った時期に入院した患者さんがなかなか退院できず、長期入院者の高齢化の問題があります。
発達障害の高齢者の介護、独居者の介護などもこれからの問題でありテーマになっています。
訪問診療でどこまでやれるのかということです。

・多様化、細分化
統合失調症自体が薬の影響なのか軽症化しています。
その一方でいろいろな疾患がわかってきています。
精神科の疾患が多様化しており、治療法に関しても細分化されています。

今までは薬のパターンもなく福祉サービスもあまりありませんでしたが、今は増えていますので、それをどうやって個人個人に合わせていくのか、地域差をどうやって埋めていくのかといった課題があると思います。

カウンセリングのやり方にしても、精神分析しかなかったのが認知行動療法も加わり、そこから疾患ごとの認知行動療法プログラムも出てきています。
このように細分化しています。
治療者としては混乱することはありませんが、患者さんはすごく混乱することかと思うので、そこのギャップをどう埋めるかもテーマなのではないかと思います。

1900年から2020年、この120年の間に戦争があり、不景気がありました。今も不景気とはいえ物も増えネットも広がり、色々な情報にアクセスしやすくなっています。
治療についてもカウンセリングの種類、薬の種類、福祉の法律のバリエーションも増えています。
120年を通して見ると、悪い方には向かっていないなという気はします。
あとは高齢化の問題をどうするのかが今の問題かと思います。

今回は、精神科の歴史をざっくり説明してみました。


2021.11.13

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