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心理療法の選択、実際の臨床は?

03:34 認知行動療法
05:36 対人関係療法
06:48 精神力動療法
09:26 折衷的に
14:12 そもそも心理療法が適切か?

今日は「心理療法の選択」というテーマでお話しします。

よく患者さんから「なかなか良くならないので、カウンセリングを受けた方が良いのでしょうか」「カウンセリングの中でも、認知行動療法を受けに行った方が良いのでしょうか」といった質問を受けます。
ご家族からも「普通のカウンセリングではなく、○○療法が良いのですか?」などと聞かれます。

ですので、今回は心理療法とはどのようなものかというお話をしようと思います。

治療者は折衷的

臨床や現実的な精神療法と、教科書で語られていることにはかなり乖離があります。
もちろん偉い先生たちは特定の療法の専門だったりしますし、偉い先生たちも本を書くときには、自分の臨床というよりは特定の療法について説明されることが多いです。
ですが、多くの治療者は折衷的な治療を選択せざるを得ないことが多いです。

それは、患者さんによって適切な治療法が変わるためです。
この人は認知行動療法っぽいという人もいれば、マインドフルネスだな、動機付け面接の方が良い、精神力動療法が良いなどあります。

1つの理論に統一されていないということは、それなりの理由があるのです。その人その人に合った治療法があります。
治療者は折衷的ではありますが、状況やその時の心理状況に合わせて治療法を変えていたりします。

とはいえ、お客さんを呼ぶ時には「私はこういうことをやっています」と言うわけです。

あとは、治療者自身が「自分は認知行動療法をやっている」と思いながらも、意外と話を聞いてみると精神分析っぽいなということもあります。
逆に、分析をやっていると言いながらも認知行動療法っぽい人もいます。

僕らはいろいろなものを読んで、いろいろなものの影響を受けたりしているので、「自分は◯◯療法」と思いながらも、他の治療法のエッセンスが知らず知らずのうちに入ってきていることはよくあります。

論文を書く時にはもっと厳密にやりますが、普通の治療はそのようにはいかないのでエッセンスがいろいろ混ざっているという感じです。

とは言いつつも、流派によってやり方は違うので、概略を話してみようと思います。

認知行動療法

今の基本は認知行動療法です。
認知行動療法とは何かというと、「自己観察スキルを身につける」ことが中心なのかなと思います。

きちんと教育をして、簡単な心理学の総論を学びます。
うつ病とはどういうことかという教育をして、認知の歪みをなおすスキル、対人関係のスキルを教えたり、ストレス管理、アサーションなどを全15回の中で身につけるというのが認知行動療法です。

マインドフルネス(第3世代)

「マインドフルネス」は認知行動療法の進化版です。
自己観察スキルを突き詰めていくと、禅の思想に近づいていきます。

禅の思想のエッセンスを入れて、呼吸法、瞑想などのリラクゼーション法を行う、認知行動療法を発展させたものになります。

呼吸を重視し、禅的思想が入ってくると「マインドフルネス」になります。

弁証法的行動療法

似たようなもので、より理屈っぽくなったものが「弁証法的行動療法」です。

自分の感情と向き合うトレーニングを、認知行動療法的な文脈に合わせてやっていきます。

対人関係療法

認知行動療法と双璧をなすというか、対人関係を中心に扱ったものが「対人関係療法」です。

認知行動療法は自分の中の認知の歪み対して自己観察スキルを高めていくプログラムですが、対人関係療法は今起きている対人関係の問題、対人の中の役割などに焦点を当てて治療していきます。
死(悲哀、別れ)などにも焦点を当てます。

こちらは全10回くらいで行います。

コーチング

他によくあるのはコーチングです。

心理療法とは違いますが、「このようにすると良い」「こういうプレゼンをした方が良い」など、よりビジネスっぽくなってくるとコーチングと呼ばれるものになっていくかと思います。
正解があるような世界観です。

精神力動療法

もともと認知行動療法の前段階には「精神分析」というものがありました。
その精神分析の派生系、現代版が「精神分析的心理療法」「精神力動療法」と呼ばれるものです。

これは子供のころの話などから自分を理解したり、欲求、転移といった精神分析的なタームを理解することで自己理解を深めていくものです。
精神分析的な言葉によって哲学などさまざまなことに影響を与えた一大思想なので、これはこれで学ぶべき価値があるかと思います。

ただこれは難しすぎますし、患者さんが限られてきます。

子供のころの話などまどろっこしいことをしないで、直線的に今困っていることに焦点を当ててほしいとなると認知行動療法になってきます。

認知行動療法の系統は、問題の焦点化をしっかりしています。
今何に困っているのか、今困っている問題から解決していこうというものです。

そういった「困っていること」よりも、もう少し遠回りでも良いから人間というものを理解していこうよとなると「精神力動療法」になります。

支持的精神療法、動機づけ面接

より焦点化しない方法としては、「支持的精神療法」「動機づけ面接」となります。
オープンクエスチョンにしてその人の考えに付き合いながら、その人の話の流れに合わせながら治療者がうまくサポートするのが動機づけ面接になります。
こちらについては僕はあまりよく知りません。
医学部教育では動機づけ面接はあまり扱わず、認知行動療法や精神力動療法になります。

僕は精神力動療法が好きなのですが、認知行動療法がメインになってこの空気をすごく吸っているので、患者さんと喋っていると、知らないうちに自分は認知行動療法っぽいなとなってきているように思います。

折衷的に

いろいろな治療法があるのですが、僕もそうですが折衷的にやっています。

もちろんカウンセリングではなく普通の診療が多いのですが、診療の中で患者さんが持ち込んできたものを分析的に解釈することもあれば、認知行動療法や対人関係療法の文脈で言い換えてあげたり伝えたりしています。

僕がやっているYouTubeは精神力動療法っぽいけれど、意外と認知行動療法・対人関係療法っぽいなと思います。仏教も好きで禅の思想も好きですし、弁証法的行動療法っぽくもあるかなと思います。

いい加減なので、ちゃんと認知行動療法について説明しているYouTubeチャンネルがありますから、探してみていただければと思います。

焦点化の有無

いろいろな治療法があるのですが、その場その場に合わせて治療者は変えていくことが多いかと思います。

今その人の問題を焦点化した方が良いのか、それともこちらが焦点化せずに、患者さんの赴くままに自由に話してもらった方が良いのかというのは場合によります。

治療が停滞していれば焦点化していった方が良いですし、治療が停滞せず、患者さん自らどんどん発見があり治療が進んでいる場合は焦点化しない方が良いです。
問題はどれだ、話す内容はこれだ、と特定しない方が良いので、支持的であったり動機づけ面接のやり方に切り替えた方が良いでしょうし、柔軟に切り替えていきます。

もちろんADHDの傾向がありどんどん話が飛んでしまう場合や、トラウマが酷くてワーッとなってしまうのであれば、その人が喋っていても、主体的に好きなことを喋っているようでも、治療としては良い方向に向かっていないので、一回引き戻して認知行動療法のストーリーに落とし込むこともあるかと思います。

「ストーリー」「価値観」

その人のストーリーや価値観をどのように表現していくのか、どのようにアプローチしていくのかも治療法の選択の中にあるかと思います。

精神力動療法は精神分析的な価値観、文脈の中にあるので、19世紀や20世紀の雰囲気があります。
ユダヤ教の空気感、雰囲気もあります。

マインドフルネスや弁証法的行動療法は禅の思想の逆輸入のような形なので、精神力動療法もそうですが、心理療法をしながら人間の成長を求めます。

成長することが治療とも言えるのですが、そんなこと言われたくないようなというところもあるので、この辺りは難しいなと思います。

成熟とは何かというストーリーや価値観をどこまで治療者側が強いるのか、という選択にもなるかと思います。

コーチングまでいくとあまりにも決めつけすぎているような感じがします。
支持的精神療法ですとあやふやになってきて、どこに行けば良いかわからなくなります。「あなたは今のままで良い」と言われても、今のままで良くないからそもそも困っているという話になります。
この辺りはその場その場で合わせていくかなと思います。

常識をどこまで疑うのか、どこまで従うのかというバランスもあります。

スキル、教育をどこまで重視する?

スキルや教育をどこまで重視するかということもあります。
今困っていることを「自分から発見していくこと」が大事なのか。

彼らが自分で発見できるように、安全な場所を作るのが心理療法の役割なのだという考えもあれば、発達障害の場合もそうですが、「普通はこうやるんだよ」「こう考えると生きやすいんだよ」ということを、言語化が苦手な人に対してこちらから言語化してそれをまずインプットすることが重要ということもあるので、そちらに切り替えるパターンもあります。

自由だったら良いというわけでもありません。
患者さんが求めているのは自由さではなく、早く今の苦しみから逃れたいということだったりもするので、そこはうまくやっていくことが重要です。

そもそも心理療法が適切か?

そもそも心理療法が適切かということは、常に考え続けなければいけないと思います。

薬物治療で良くなるパターンもあれば、カウンセリングではなく就労支援などで働くスキルを身につけるとか、デイケアや作業療法をしながら人の温かみを知るとか、アートセラピーや音楽療法、畑を一緒に耕すなどしながら、人間の優しさを肌から吸収していく、体感的に理解していくという治療もあります。

なにも全部を言語的なやりとりで完結させる必要もありませんので、そういったことも選ぶ必要もあるかと思います。

結局、カウンセリングの適応というのはどこまで行っても「病状が軽い人」になってきます。
重い人になってくるとカウンセリングではない治療を選択した方が良いことも多いです。

軽い人になってくると今度はそもそも、僕のYouTubeを見てくれている人もそうですが、動画を見てコメント欄を読んで、それだけで良くなっていく人もたくさんいると思います。

実際に精神科にかかっている人だけが見ているとは思わないので、そのような人たちはカウンセリングを受けたいなと思いつつも、今の僕の話を聞くだけで良くなっていく人もいるのかなと思います。
カウンセリングのエッセンスは必要だけれどカウンセリングは必要ない人ということになってきて、なんだかなと思います。

YouTubeでは足りない人たちは今度はカウンセリングの適応ではなく、もう少しデイケアなどが必要になってくるので、カウンセリングの適応が啓蒙活動によりどんどん上から押し下げられ、デイケアや作業療法、就労支援など下からの圧もあり、意外と狭くなっていることがあるかと思います。

下側が伸びているのはなぜかというと、発達障害の問題が大きくなっていたり、トラウマの問題が大きくなってきたりして、社会適応のハードルが上がってしまっているためです。

多くの治療者は折衷的であって、いろいろなことを考えながらやっています。
病気が良くなってきたら、「あの時はどういう判断でそのような治療をしたのですか?」と治療者に聞いてみると、最後は種明かしのようにいろいろ教えてくれると思います。(教えてくれない人もいると思いますが)

今回は心理療法の選択について解説しました。


2021.12.5

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