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「親ガチャ」? 家族病理について

02:38 自己理解に役立つ
04:59 どこまで聞く?
05:49 転移・投影

今日は「親ガチャ? 家族病理について」というテーマでお話しします。

「親ガチャ問題」は先日動画に撮りました。コメントもたくさんいただいて、皆さんいろいろな感想を持ったり考えたりされたようです。

親ガチャがあるというのは精神科医にとっては当たり前の話で、それを僕ら精神科医は「家族病理」という形で理解しています。

患者さんの家族背景を知ることで、その人がどのような人格になったのか、人格形成に家族がどのような影響を与えたのかを理解し、それをどのように治療的に活かしているか。それらを今回、お話ししたいと思います。

結論としては、「完璧な家族、育て方はない」ということです。
どんな人にも家族に対する不満、育て方に対する不満は大なり小なりあります。

精神疾患や性格の問題は、家族や育て方だけで説明はできません。
昔は100%それで説明できるのではないかと考えられていた時期もありました。精神疾患の発症要因として家族の影響は大きいので、このような家族ならばこういう病気になるのではないか、と考えられていた時代もありましたが、現在ではそのように考えません。

ただ、人格形成に大きく作用していることは事実なので、家族病理ということも十分検討しています。

自己理解に役立つ

例として、両親と子供1人、母親から暴力を受けていた患者さんを挙げます。
(□が男性、○が女性、◎が本人です)

母親から暴力を受けて育った娘はどうなるかというと、すごくマゾヒスティックな感じになり暴力を振るう男性に近づくこともあれば、逆に自分自身が暴力的になり、母親にされたことを自分の子供にしてしまうこともあります。

この2つは奇妙に混ざり合っていて、どちらかだけという事はなくどちらもあります。
もちろん、このどちらでもないパターンもあります。

難しいのですが、やはり治療上は「お母さんからこのような影響を受けたから、今こうなっているんだね」という結びつけと解釈はすごく役立ちます。

「このような母親だからこのような子供になる」という科学的な予測、再現性の見立てにはあまり関与しないかもしれませんが、患者さん自身が、自分はどういう人間なのか、どういうことが起きたのか、どうして自分はこうなのかということを理解しようとしたときに、このような家族病理から理解するというのはとても重要です。

腑に落ちて治療が進むことはよくあります。

どこまで聞く?

・家族構成
・年齢、仕事
・兄弟の有無、仕事、学歴
・親の学歴

初診の段階で聞けたら聞きますし、初診で時間が足りなかった場合は再診の時に少しずつ聞いていきます。
患者さんは、細かく聞かないでほしいと言ったりしますが、それを話すことによって治療が進む場合もあります。相手の表情や時間を見ながら聞いて、情報を補足しています。

転移・投影

家族理解において重要な概念をお話しします。それは「転移」と「投影」です。

僕はよく転移や投影という言葉を他の動画でもしゃべっているので、なんとなく皆さん言葉のニュアンスを理解されていると思います。

・転移(人物)
転移とは「人物を転移させる」ということです。

例えば、母親が教育熱心な人だった場合その時の記憶が残っています。すると、会社の上司に対して「教育的な人、指導的な人、少し言葉がキツめな人」を求めに行ったり、逆に避けてしまうことがあります。

このような場合、「気づいていないかもしれないけれど、上司に対して母親像を転移させているのでは?」と言ったりします。

求めに行くことを「反復強迫」と言います。

逆に主治医側が、自分の弱さや人物的なものを患者さんに重ねてしまい、患者さんの治療をしているつもりなのに、自分が過去に受けた嫌な思いを患者さんに転移させていることもあります。これを「逆転移」と言います。

上司から嫌な思いを受けていたときに年上の患者さんが来た場合、その人に対してついつい冷たい態度を取ってしまうといったことはわかりやすい逆転移です。

・投影(内なる感情)
投影とは「内なる感情」です。

自分が怒ってる時→「相手も怒っているのではないか」
自分が悲しい時→「相手も悲しいと思っているのではないか」「相手は笑って馬鹿にしてるのではないか」
自分に自信がない時→「相手は馬鹿にしているのではないか」
このように思うことを「投影」と言います。

自分の嫌な思いや暴力的なものを相手に投影し、相手がさも暴力の化身のように感じることを「投影同一視」と言います。より病的なもの。

境界性人格障害の人で、自分が一番自分のことを嫌っていて馬鹿にしてるのに、目の前にいる主治医こそ私のことを理解しないし馬鹿にしているのだと思う。そしてそれが診察室を出た時にも残っていて怒りを感じる、というのは投影同一視になります。

患者さんはいろいろ話しますが、診察室という空間では真実を話すとは限りません。
真実は加工されていると考えます。

ですから親のことを酷く言っても、投影されて加工された親の像を語っていたりします。
上司のことを話していても、投影してかつ転移もされている、と判断しながら聞いたりしています。
100%患者さんの言うことが正しいとは思っていないのです。

ただ、このように言うと主治医側に都合の良い解釈になったりするのでややこしいです。
「客観的な事実はなく、患者さんがそう言っているだけだ」と言うと、患者さんの真摯な訴えを無視していることにもなります。
投影や転移の解釈は、絶妙なバランスの中で行われるのです。

ですから、投影・転移を理解するために家族の話をきちんと聞いておくと、自分の都合の良い解釈ではなく「こういうことだったからなのかな」と正確にわかるのではないかと思います。

家族病理はすべての人にありますし、患者さんであればその病理が深いということがあります。普通の健康的な人とは病理の深さが違いますし、「わかるわかる」という単純なものでもありません。

主治医側には理解できないというのは、コメントにもありましたが、そうと言えばそうだと思う。
ただ、僕にも想像力はありますので、想像力の範囲で相手のことを理解してどう治療に活かすのか、ということを僕ら精神科医は日々考えていると思います。


2021.10.1

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