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過去(記憶)を上書きする方法

01:18 記憶は変わる
02:16 脳科学的に考える
03:42 現象学的に考える
05:00 臨床

今日は「記憶(過去)の上書き」について解説します。

嫌な記憶は、皆さんあると思います。
虐待、トラウマ、人から裏切られた、お金をだまし取られたなど、嫌な記憶があるせいでうつっぽくなっている、ネガティブにしか考えられなくなっている、自己肯定感が下がっているといったことがあります。

嫌な記憶というのは確かに残りやすいですし、なかなか変えにくいものです。
ただ、記憶というのはそもそも変わっていくものですし、改ざんされるものです。

記憶を変えることによってポジティブな考え方ができるようになったり、自己肯定感を高めたりすることができます。精神科の治療にも役立つテクニックです。

記憶は変わる

悪い記憶があるために、ネガティブな感情が出やすかったり、合理的な判断がしにくい(認知の歪み)ということがあります。ですから、記憶の印象を変えていくことは重要だと思います。

多くの人は記憶は変えられないと思っていますが、そもそも記憶は変わります。

僕はしょっちゅう忘れるので、過去に自分が何を考えていたか覚えていません。みんなよく覚えているなと思います。
ADHD的な人には記憶が変わるのは当たり前のことですが、定型の人には意外な事実のようです。

脳科学的に考える

脳科学の世界では、「記憶は思い出すたびにつくられる」と考えられています。

海馬の中にある種の情報は残っていますが、1個の神経細胞に情報が残っているのではなく、「材料」が残っています。それをかき集めてくっつけたものが僕らの意識に上ってきます。

これは料理のレシピに似ています。
脳の中には「こういうレシピで作ろう」というものと「材料」がある。

カレーに例えると、肉、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもがあり、レシピもなんとなくわかっています。
思い出そうとすると材料を引っ張ってきて自分で調理し、「はい、これがあなたの記憶」「過去の思い出」と出てきます。

それはその都度「作り直している」のです。
カレーも毎回作るたびに少しずつ味が違うように、基本的には記憶というものも変わります。

現象学的に考える

現象学的に考えても違うということがわかると思います。
新しい意味が加わると、全く違う印象になるのです。

映画で言うと、1作目がすごく良くても、2作目、3作目が駄作だとシリーズ全体が駄作に見えてしまいます。
大好きだったアイドルも、年をとってから不祥事を起こすと、過去の記憶まで悪いものになってしまう。
このように、新しい意味が加わると違った印象を持ちます。

「終わりよければ全て良し」とも言います。
負け続けていても最後に勝てば良い記憶になりますし、逆にずっと勝ち続けていても、最後に負けてしまうと印象が悪くなったりします。
基本的には新しい意味が加わると、全く違う印象になるというのは人間の持っている性質です。

このようなことからわかるように、基本的には記憶というものは変わっていきます。
過去の出来事は変わっていくのです。

臨床

では、僕らは臨床の中でどうするかと言うと、
・新しい意味が加わるように認知を変えていく
・ポジティブな意味をつけていく
・一緒に考えていく
といったことをします。

何度も思い出すことによって、意外と悪いことがそぎ落とされて、意味のある情報だけが残ることがあります。認知の歪みがなおってくるのです。

そうすると必然的に、臨床では同じ話が何度も語られることになります。
「何回目の挑戦なのか?」と言うほど何度も同じ話をします。

最初のうちは患者さんは、
「カウンセリングを10回やったら良くなるのでしょうか?」
「いつまで通うのですか?」
とすごく心配されるし、考えます。

いつまでこんなことで悩んでいるのだろう、いつになったら通院をやめられるのだろう、と考えるのです。

最初の頃は特にそうです。2回くらい通うと、「益田先生、これ私何回来なきゃいけないんですかね?」とよく言われますが、なかなか答えるのは難しいです。

人によってはすぐ新しい意味を加えることができて、パッと次に行ける人もいれば、同じ話を何度もぐるぐる話す人もいます。

ただ、これはダイエットと同じで、急に痩せても良くありません。
1年や2年をかけて痩せていく方が良いのです。
ですから、すぐにパッと良くなるというよりは、1年、2年かけてゆっくり変わっていく、何度も語り直されることが重要だと思います。

1年、2年というスパンが、通院頻度は人によるが、焦らずやっていくことが重要だと思います。

とにかく、過去の記憶や嫌な思い出は変えることができます。
今回はそれだけでも覚えておいてもらえたらと思います。


2021.11.4

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