今日は「自分を情けないと思っている人(子供)の原因と対処法」についてお話しします。
自分のことを情けないと思い自信を失って、ひきこもったり家の中であばれて暴力を振るってしまう子供はたくさんいます。大人になってからのひきこもりも多いです。
どうしたら良いのだろうと僕も日々悩むのですが、なかなか治療は難しいです。そんなに簡単ではありません。時間もかかります。
治療は、基本的には「自己理解」「他者理解」「社会理解」をしていくことで、ふっと次のステージに移るというものなのですが、自己理解のために今回は「自分を情けないと思っている人」というテーマで撮ろうと思います。
これは本人もそうですが、困っているお子さんを持つ親御さんにも見てもらえたらと思います。
コンテンツ
「情けない」とは?
まずこのテーマで動画を撮ろうと思った時に、「情けない」と思っているというのはどういうことなのか、改めて自分に問い直しました。
ただこれを定義するのは難しいなと思いました。
「情けないと思っています」といろいろな患者さんが言う時に、いろいろな断片はあるのですが、それを1つにまとめて「こういう人が情けないと思っています」と示すのは難しいのです。
逆に、「情けないと思っていない人」はどのような人かと考え直すと、僕がパッと思いついたのは「ちびまる子ちゃん」です。まるちゃんは、情けないとはあまり思っていません。
お母さんから「私は情けない」と言われたりするのですが、本人は思っていません。
反省したりはしますがそんな風に思っていないと思いますし、お母さんも別に思っていません。
臨床をしていて「情けない」と言う人の表情はホワイトボードの通りです。
まるちゃんに比べたらよほどピリッとした顔をして勉強も熱心にやっているのですが、自分のことを「情けない」「だらしがない」と思っています。
家族も「困った」と思っていますが、まるちゃんのお母さんはそんなに困っていません。
超自我に屈服している
情けないと思うのはどのようなメカニズムかと言うと、僕は精神分析が好きなので分析のタームを使いますが、「超自我」に屈服している状況と言ったりします。
超自我とは自分の心の中にあるプログラムの1つで、「こうあらねばならない」と自分に訴えかけてくる第二の自分のようなものです。
こうしなければいけない、こういうのが常識なのだ、こういう風にならなければいけないという親の教え、社会の常識、ルール、自分で作ったハードルだったりします。
これによって、自分が潰れてしまっています。
自分は本来こうあるべきなのに、それができないから情けない奴だ、というロジックです
母親の「こうあらねばならない」は、母親の不安感を肌から吸収して自分に取り込んで、心の中にいる母親から「お前はだめなんだ」と言われているように感じます。
心の中にいる父親から「男はこれくらい強くあるべきだ」「これくらい勉強ができなければいけない」「出世しなければいけない」と、実際には言われていないのに言われているように感じて屈服してしまう。
このような状況が「自分は情けない」と思っている状況かと思います。
一回情けないと思うと、超自我はますます強化されてしまいます。
親はそんなことを言っていないのに、軽く言った言葉が1が100に聞こえてきて「やっぱりダメなんだ」とどんどん悪循環になってしまいます。
超自我としての機能が強い親、常識や道徳心を押し付けてくる、それを大事にするような親の場合、屈服させられてしまうことが結構あると思います。
親が学校の先生や医師の場合は要注意だなと思います。
だいたい患者さんがこのような話をした時に、「すごくしっかりしているな」と第一印象で思っても、話を聞いていると「いや、自分はダメな奴なんです」などやけに責めている時は、親族がエリートだったりすることが多いです。
ひきこもり、怒り・暴力
結局自信を失ってしまって、ひきこもりのような感じになったり、場合によっては家庭内暴力が出たりします。
家族に向かうこともあれば、その暴力が他人、部下などに向かうこともあります。
上からグッと押さえつけられた結果、むにゅっと分裂して横からはみ出ます。
はみ出て「退行」してしまうこともあれば、変な趣味に走ってしまう人もいます。
退行というのは「赤ちゃん返り」です。
精神年齢が実年齢よりも幼くなってしまいます。大人のような行動を取らないことを退行と言います。
退行するのですが、では童心に帰って遊ぶかと言うと遊びません。
遊びがないから成長ができません。
遊ぶことは大事です。
せっかく休むのだから、ゆっくり遊ぶと良いのです。でも遊びません。
私は休んでいるのだから勉強をしなくては、ちゃんとやらなきゃと言って、自分の心を自由に遊ばせるということをしないなと思います。
治療とは何か:創造的遊び
治療とは何かというと、1つは「創造的な遊び」です。
くだらなくて良いのです。
子供がやっている「ままごと」は創造的な遊びです。
子供がままごとをせずに漢字ドリルの勉強をしていたら、将来うつになってしまいます。
疲れているし、弱っているのだから、創造的な遊びをすれば良いのです。
創造的ではない遊びもあります。
ただ黙々とゲームをする、お酒だけ飲むというのは不毛です。
そうではなく、ゲームをするにしてもコミュニケーションを取りながらゲームをする、自分なりにルールを決めてやるなど、積極的に働きかけるような形にします。
どうせゲームをやるならゲーム実況をするなど何でも良いのです。
自分の中で創造的なことをする。
お金や出世にかかわることではなく、楽しいと思えること、無から有を生み出すような遊びをします。
治療とは何か:感謝
屈服しているので、気軽に「ありがとう」など感謝の言葉が言いにくいです。
「本当に自分は情けないです、いつもありがとうございます」という感じではなく、「いつもありがとね」という軽い感じのことです。
そのような余裕が出てきたり、よかったな、ありがたいな、と思えるようになると良くなってきます。
治療とは何か:友達
友達は重要です。
親と自分を比較すると、どうしても劣っているように見えてしまいます。
親は自分より年齢が上ですし、経験もしてきています。
追い抜いているところもあるかもしれませんが、そのようなところは目が曇ってしまったりします。
ですが、同世代の友達を見て経験や生き方のバリエーションを増やしていくことが重要で、仲良くなくても同世代のことをよく知っていると、「こうあらなければいけない」というのが弱まるかと思います。
・「普通」とは?
よく親御さんは「普通で良いんです」と言いますが、「今の普通の子はこんなもんですよ」と言うと、「いやいや、それはちゃんとやらないと」「うちの家系の普通は東大なんです」と言ったりします。
東大に行く人は滅多にいないのですから、それを普通にしたらハードルが高過ぎて困ってしまうよと、なぜそれがわからないのかと思ったりしますが、それを指摘しても不思議そうな顔をしたりします。
普通というのがわかっていなかったりします。
普通で良いならこの子達と同じで良いですよねと言うと、「いやいや、そんなことは」と言ったりします。
親の頭の柔らかさも治療には大事ですので、よく理解してもらえたらと思います。
親御さんとしては、1が100になってしまう、それを意識するようにします。
100倍になるのだから、言いたくても言わない、言いたくても抑える。
そして、創造的な遊びができるような環境を作ってあげることが重要です。
緩い表情ができるようになってくると良いと思います。
今日は、自分を情けないと思っている子供、怒りや暴力のある子供について解説しました。
前向きになる考え方
2021.12.14