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大人の愛着障害? 親から愛されなかったらどうなるのか? その特徴を解説

01:17 親子関係はその後の人生のベースになる
06:28 反応性愛着障害
08:15 脱抑制型

本日は「大人の愛着障害」をテーマにお話します。

「大人の愛着障害」という言い方はあまりしません。
どちらかというと、複雑性PTSD、不安障害、パーソナリティ障害という言い方をします。
大人に「愛着障害」という診断を付けることはなかなかありません。

子どもに付ける診断名なので、大人に付けるのは「どういうこと?」という感じがしますが、他のYouTubeやコメントを見ていると皆さんは愛着障害に興味があるように思えますし、コメントで大人の愛着障害はどういうものか、というリクエストがあったので、今回の話題に選びました。

どうして愛着障害が起きるのかというメカニズムと、愛着障害の特徴、大人になってからどういう人になっていくのかについてもお話しします。

親子関係はその後の人生のベースになる

愛着障害とはそもそもどういうメカニズムなのかということですが、「新雪の丘」というたとえが分かりやすいと思います。

人間は、皆さんがご存知の通り、不完全な状態で生まれてきます。
脳みそがまだ未熟な状態で生まれてきます。
他の動物と比べて人間は未熟な状態で生まれてくるのはご存知の通りです。
ちゃんと歩くこともできず、ご飯さえちゃんと食べられません。目も開かないのでおっぱいがどこにあるかさえもわかりません。
これが赤ん坊です。

人間の脳みそも同じで、全然整理できておらずわかっていません。
なんだかんだで25歳や30歳と言いますが、人間の脳ミソが出来上がるまで本当に時間がかかります。
脳みそは子どもの時でも思春期の終わりでもなく、25~30歳くらいまでは完成せず、情緒も安定していきません。
20歳くらいまでにはある程度完成しますが、なかなか落ち着かないということがあります。

人間の脳みそは生まれてからプログラムされていく、学習によって出来上がっていく、ということが共通見解として持てると思います。
記憶のメカニズム上、特に、一番最初に受けた刺激が残りやすいです。

まっさらな新雪の丘に最初のソリがおりると新雪に跡がつきます。
次のソリも大体同じようなルートを辿ります。
するとソリの跡がだんだんとしっかりしてきて、同じような記憶、同じような反応をするようになります。
これは「刷り込み」とも言ったりします。

例えば、最初に出会った男性、父親が怖い人だったら、小学校の先生も怖いオジサンに見え、そういう経験が積み重なっていると、大人になってからも大人の男性が苦手だな、上司って優しい人かどうかわからないな、警戒してしまうな、ということがあります。

子どもの時の人間関係は非常に重要で、特に親子関係はその後の人生のベースになります。
本人にとっての常識になります。

普通の人間関係ってどういうことなんだろう、母親がすごく怒りっぽい人だったら、大人は怒るものだから警戒しとかないといけない、と思ってしまいます。
逆にすごく甘やかしてくれる親だったら、言うことを聞いてくれない大人の人を見ると、何でこの人たちはやってくれないんだ、何でこの会社は自分をこんなに働かせるんだ、ブラックだ、と言ったりする訳です。

最初の人間関係がベースになりますし、それを修正するのは難しかったりします。
ただ普通は親子関係がベースでも、そこから学校での教師との人間関係など他の人間関係を経験することで、自分の親って変だったんだな、と修正されていきます。
特に子どものときはなかなか修正されなかったりしますし、虐待が酷いと、虐待の印象は強烈なので、固定化されてしまうことが結構あります。

僕自身もそうです。
新卒というか高校を出た後に入ったところが自衛隊(防衛医大)で、20代のときは自衛隊にいました。今は自分で精神科医をやり普通に開業医としてやっていますが、それでもまだまだ馴染めないというか、自衛隊時代の常識に囚われていると思います。
だいぶ修正はされていますし、今はYouTubeとかやっていますが、開業当初はSNSやインターネットは悪なんじゃないかと思っていました。
修正はされるけれどベースに残っているということはあります。

では子どもの時に親からの愛情を受けていない、虐待されたという場合、結果的にどういう人間になってしまうのか、どういう子どもになってしまうのかを説明します。

主に2つのタイプがあります。
反応性と脱抑制型と言われるものです。

反応性愛着障害

反応性の愛着障害の特徴は3つあります。

・助けを求めない
大人に助けを求めない、助けられても反応しない・喜ばない、ということがあります。

・対人交流や感情の表出が少ない
友だちと遊ぶことがあまり楽しくないです。

・喜びをあまり表現せず、つねにイライラしている
楽しい状況なのにイライラしています。

これらが反応性の愛着障害の特徴です。
自閉症とは違うということが診断基準に入っていますが、自閉スペクトラム症と似ているが少し違うのが、反応性の愛着障害です。

反応性の愛着障害を診断するというよりは、大人になった人を診たときは、不安障害なのかな、こういう人は楽しみが少なくて依存症になりやすいので依存症なのかな、うつ病なのかな、という形で診断することが多かったりしますが、その背景には親子問題があったということがよくあります。

子どもの時と違い、大人になると他の学習が入ってきてより複雑化しこじれたりしてくるので、愛着障害という診断よりもこういう別の診断になっています。

脱抑制型

これはADHDに似ています。
ADHDは注意欠如・多動症という発達障害の一種ですが、脱抑制型の診断基準にはADHDではないということがあります。

特徴はこちらです。

・見慣れない人や場所へのためらいが少ない
普通なら警戒心を持ったり緊張するのですが、そういうところが弱かったりします。

・なれなれしい言動や態度、ボディタッチがある

5歳以前に明らかで、こういう特徴を子どものときに持っていると脱抑制型の愛着障害なのかな、と診断します。

大人になるとこれがこじれて、境界性パーソナリティ障害、アルコールや薬物の依存症、場合によっては双極II型と診断されることもあります。

親子関係が最初に崩れているとどういう子どもになるのか、最初の人間関係、ベースの人間関係が安心できる環境でないとどういう風になってしまうのか、ということです。
それは大人になってからも引きずってしまうことが多くあります。

もちろん親子関係だけでその人の人格が成立する訳ではありません。
友だち関係、学校の先生との関係、初めて入った職場の上司との関係、新卒で入った会社のカルチャーなど影響を与えるものは色々あります。
親子関係だけで決まりませんが、一番最初のベースとなる人間関係は、母ー子の関係だったりします。
そこで最初に躓くと崩れてしまいます。
新雪の丘のように跡ができてしまうので、別のルートで行くことが難しかったりします。

今回は、大人の愛着障害というテーマでお話しました。


2022.3.26

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