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発達障害(ASD/ADHD)のコミュニケーション向上術

01:08 STEP1 会話のリズムを合わせる
05:34 STEP2 表情、声質をチェックし続ける
07:39 STEP3 パターンをマスターする
13:31 定型発達の人の特徴
16:15 固定概念を壊すところから

本日は「発達障害(ASD/ADHD)のコミュニケーション能力向上術」というテーマでお話します。

発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)の3つがあります。
ASDとADHDは合併することが多いので、僕はよく発達障害として一つで括って説明しています。
今回は発達障害の人にも役立つテクニックをお伝えします。

僕が診察室でいつもどのような指導をしているかをお話します。

STEP1 会話のリズムを合わせる

まずは「会話のリズムを合わせた方がよい」ということです。

相手の会話のビート、会話のスピードや言葉のスピード感。
心臓の動きに合わせて言葉のスピードは変わってくるので、それを読み取り同じようなスピードで喋ったり、相づちを打った方が良いと言われます。

会話はリズムです。
リズムさえ合っていればそれなりに成立します。
内容がなくてもリズムが合っていれば会話は成立しますし、相手に不快感はなかったりします。
逆に、会話の内容は合っていてもリズムが全然合わなければ不快です。

定型(普通)の人と発達障害の人との違いですが、発達障害の人は、会話の中身、本質、情報を抜き取ろうとします。
しかし多くの人、普通は会話の中身はほとんど聞いていません。
情報よりもリズムが合ってくることに会話の魅力を感じ、そこに本質があると思っています。内容ではないのです。
内容ではなくリズムを合わせることが重要です。
リズムさえ合っていれば、相手が都合よく解釈していくのでリズムは非常に大事です。

一番最初のSTEP1がなかなか理解しにくいのですがとても大事です。
一般の人が知らず知らずにやっていることです。
これがやれるようになるとだいたい上手く行きます。

注意した方がよいことは、ADHD傾向の強い人は早口になりがちなことです。
僕も早口です。
早口の上にお喋りだから嫌われやすいです。
だから余計にゆっくり喋って言葉の量を減らすと、本当に人に好かれます。

僕はよく「黙っとけば良いのに」と言われます。
言いながら思い出しましたが、筑波大の松崎先生も「もっと静かにした方が良いよ」とアドバイスを受けていたと動画でおっしゃっていました。
往々にして精神科医YouTuberはお喋りだと思います。そして早口。

ですが早口はあまり良くないので、ゆっくり喋った方が良いです。
ビートが合わないと不快なのです。音楽もそうです。
他人の好きな音楽で妙にビートが合わないと嫌ですよね。

また、反応がない場合には相手が不安になるので、ちゃんと相づちを打ちましょうということです。
ASD(自閉スペクトラム症)傾向の人は、聞いているつもりでもリアクションが弱かったりするので、相づちを打つことです。
ドラムのテンポみたいなものです。
相手も喋っているとリズムが崩れるかもしれないので、こちらが相づちを打ってビートを刻んであげます。
メロディーとビートのバランスが大事です。

よく言われますし、患者さんから教わります。
音楽が得意な患者さんは逆にリズムを合わせ過ぎて苦しいこともあるようですが、基本です。
とにかく会話というのは、ビートやリズムが大事なので、テンポを合わせていくことがとても重要です。

STEP2 表情、声質をチェックし続ける

ではビートは一定なのかというと、違います。
最初はスローに始まって、会話の盛り上がりに合わせてスピードが上がったり、最後はゆっくりになったりします。
同じリズムでやっていてもダメなので、相手の表情や声の大きさ、強さ、声質、トーンをチェックし続けることでビートを合わせていきます。

さっきは相づちを打つことでビートを整えると言ったじゃないか、と言われるかもしれませんが、あくまで会話は本人から見たら「主役は相手」なので、相手のリズムについていきます。
そしてそれは表情や声質などで無意識的に定型の人がやっていることです。
ちょっと大変ですが意識してやることが大事です。

ポイントは、表情の出し方や声質、今どんな気持ちでいるかということは、文化圏によって表現方法が違うということです。

例えば日本人とアメリカ人のリアクションが違うということを想像してもらえば、わかりやすいと思います。
日本人だと楽しいときにニコッとしている程度でも、アメリカ人にとってはそれはリアクションが薄いと思うわけです。
アメリカ人だとワーッと全身で表現してスタンディング・オベーションをして伝えます。
日本だとそのようにはしません。

同じように、これは世代によっても男女によっても違います。
相手のカルチャーを理解しつつ、表情や声質を見て「あ、このリズムなんだな」と意識することが重要です。

STEP3 パターンをマスターする

ステップ3はパターンをマスターする、ということです。
会話には定型のパターンがあります。
そのパターンをマスターすることが大事です。

天気の話、最近だとコロナの話、戦争の話、何でも良いのですが、盛り上がるパターンをマスターして何となく会話を合わせていくことが重要です。
中身でみなく、意見の交換でもありません。
何となく交わされている日常会話のパターンをマスターするのが良いです。

自衛隊にいたときは、天気の話、車の話、野球の話はパターンがあったので、ニュースを見ておいて合わせるということをしていました。
料理の話、食べ物の話は盛り上がりやすいです。
こう来たらこう返す、という定型のパターンがあるので身に付けると良いと思います。

人の悪口というのもありますが、これは難易度が高いです。
マスターを目指さない方が良いと思います。
この人の悪口を言うと盛り上がる、ということは職場によってはありますが、このパターンは危険なので、会話が苦手なときに毎回このパターンを使うとただ嫌われるだけです。
無難な天気の話などをマスターするのが良いと思います。

定型の人はチューニングやプルーニングをしながら、自分自身を変化させることができます。
もちろん発達障害の人もできます。

良く使われている知識や経験、単語、概念というのはチューニングによって強化され、使われてない情報や記憶、概念はプルーニングによって忘却されていきます。
そうすることによって頭の中身が変化していきます。
性格や人格も変わっていきます。

お店の商品棚のようなものです。
人気のある商品は残り、人気のない商品はなくなっていきます。
最初は色々なものを仕入れていても、おにぎりしか売れなければ段々おにぎり屋さんになっていく。逆におにぎりに特化していてもそれだけで商売が成立しないので、お茶もお菓子も売るようになって、コンビニに近付いていくような感じです。

人間の脳みそもこれに似ています。
結果的に性格も変わっていきます。
こんな僕でさえ、自衛隊にいたときには自衛隊用の知識、経験、価値観にチューニングされており、自衛隊を辞めた後は自衛隊のことを忘れてプルーニングされていき、今みたいなYouTuber仕様に変わってしまいました。

ただ発達障害の人は、特にプルーニングが苦手です。
会話が得意になるには自分が変わっていかなければいけない、と普通の人、定型の人は思います。
自分のキャラクターを変えていくことで会話が上手くなっていくのだと思うのですが、発達障害の人は変化が苦手です。
しかし覚えるのは得意なので、こういうときにはこうしようということを覚えた方が良いです。

会話が上手くなるというのはポケモンの進化ではなく、フルアーマーガンダムのようにパーツが付いていくというイメージです。
どんどんパーツや武器を増やしていくというのが、発達障害の人のコミュニケーション能力の向上だったりします。

そういうことを言うと「この会話意味ないでしょ?」と発達障害の人は良く言います。
「天気の話は意味がないんじゃないですか?」
「相手は本当にそういうことを言ってもらって良いんですか?」
「楽しいんですか?」
とよく聞かれます。
それは益田が勝手に言ってるだけでしょ、と疑心暗鬼になったりします。

発達障害の人は、自己理解の延長線上に他者理解があると思っている。
自分はこう思うから相手はこう思うんじゃないかと定型の人以上に言いがちですが、どちらかというと自己理解よりも他者理解をした方が良い局面があるということです。
自分なんてどうでも良いのです、変わっていくので。

それよりも今の相手のことを理解した方が良いことがあります。
自分が心地良い会話を覚えて応用していくのではなく、相手を理解していくことが重要です。

定型発達の人の特徴

相手、つまり定型の人の特徴はどういうものかというと、

・本音(本質)<ウソ・慣習
本音や本質の話よりもウソや慣習の方が好きです。
取り繕った会話、いつもしているような情報のない会話を好む傾向があります。
エッと思うかもしれませんが本当です。
本質的な話も嫌いではありませんが、日常会話では良く聞いている話を皆さんはしたいのです。
新しいことは聞きたくありません。

・所属していたい
定型の人はたとえ不利になっても、自分にとって利益がないと思っても、所属している方を好みます。
それならばフリーランスになって一人で勝手にやった方が儲かるんじゃない?と発達障害的な人は思いますが、多少損でも会社にいたい、組織にいたいと思う人が多いです。

・集団の和>進化
ですから集団の和を重視します。
組織が良くなっていく、進化していく、変化していくということよりも、皆が仲が良いことを求める傾向があります。
会話も同じで、何かに気付きたい、本質的な話をしたいということよりも、どちらかというと、仲が良いことを確認しあいたいということの方が会話の本質的なところだったりします。

・共感して欲しい
だから共感して欲しいのです。共感を求めていることが多いです。
共感が欲しいので、本質的な話より共感を重視して欲しい、相づちを打って欲しいということがあります。

・人といることで心身のバランスを保つ
定型の人は発達障害の人より、人といることで心身のバランスを保つ傾向があります。
定型の人は誰かと一緒にいたり会話をしあうことで、自分のリズムを整えて健康を保つ傾向がありますが、発達障害の人は、自分の固有のビートに合わせている方が楽なので、人に合わせていると却って疲れると言います。

こういう違いがあるので、自分はこうだけれど相手は違う、という前提で会話を進めていく方が結果的に会話が得意になるのではないかと思います。
ここら辺をマスターしてから自己理解を深めていくということで遅くはないかなと思います。

固定概念を壊すところから

定型の人は、こんなことをやっていたらうつになるんじゃない?却って疲れそう、と思うと思います。
実際そうなんです。

僕も臨床しているときに、固定概念を壊すところからスタートすることも多いです。
発達障害の人のこだわりを壊したり治したりするだけではなく、定型の人のうつの場合も同じです。

所属していたいという欲望が強過ぎて、転職を恐れすぎているのではないか。
集団の和を意識し過ぎて、自分自身の気持ちをおざなりにしているのではないか。
共感して欲しいという気持ちが強すぎるけれど、そもそもあなたの状況は特殊だから共感できない、他の人に理解してもらえないのではないか、だけど別に意地悪な人たちではないんだよ。
人といることで身体のバランスを保とうとし過ぎているので、他人に依存し過ぎているのでは。
自分でバランスを保つために、マインドフルネスや呼吸法のマスター、趣味を持つなど他人と距離をとって自分なりのバランスの整え方を覚えた方が良いのでは、という指導をしたりします。

どっちが良い、どっちが悪い、ではなく程度の問題です。
僕らは定型の部分もあれば、非定型の部分、発達障害的な部分も併せ持っており、どちらが多いか少ないかです。
どちらにも良いところがあり、どちらにも悪いところがあります。
このバランスをどう保つのか、生まれ持ったバランスが悪いのであれば、それを意識してどうやっていくのか、ということなんだと思います。

社会全体から見れば定型の人ばかりだと困りますし、かといって発達障害の人ばかりでも困ります。
全体から見ると何となく調和がとれているのですが、一個人になるといびつだったりするので、そこは上手く技術で補ってもらえれば良いと思います。

今回は、発達障害のコミュニケーション能力向上術、というテーマで会話がどうやって上手くなるかをざっくり説明しました。


2022.3.29

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