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発達障害の女性の治療 ASD受動型でよくある例

00:40 よくある例
07:17 治療

本日は「発達障害(女性)の治療」のお話をします。

これは具体的な患者さんではなく、色々な患者さん、本に出てくるような患者さん、自分が経験した患者さんの症例を混ぜて創作したパターンです。

どういう話をしているのか、どういう治療をしているのか、というお話をします。

発達障害の人によくあるパターン

この方は女性で、発達障害では合併していることの多いASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)を両方持っています。
ASDはどちらかというと受動型で、自分から話したりするのが苦手で受け身なタイプの人です。
ミスが多かったりもします。

職場でもミスがあったり混乱したりします。
受動型で言葉が少ないので、なかなか「助けて」と言えません。
だからひとり残って残業することが多いです。

それで疲れが溜まりうつになり、うつと共に不安もあります。
不安が高まるので発達障害の症状も悪化、というループに陥っています。

職場でミスをしたり混乱することが多いので、自分はダメな奴と思っています。
そういう思い込みが激しい人です。
思い込みがあるのでうつも悪化してしまいます。

発達障害の人でよくあるのは、親子問題です。
すごく手のかかる子だったからか、母親が過干渉だったり、その子に任せていると忘れ物が多かったので母親が替わりにやってしまう。すごく心配性な母親もいます。
また、母親も発達障害で、でも母親は受動型ではなく積極奇異型で、余計なことまで喋ってしまったり過干渉だったりします。
母親が本人に依存していることもあれば、共依存の関係になってしまうこともあります。

依存の背景には夫婦仲が悪いということもあります。
夫婦仲が悪いので共依存のような関係になることもあります。
母親の愚痴の聞き役が娘だったということもあります。
母親にも同じ発達障害傾向があって、友だちを作るのが下手だったりするのです。
だから娘にしか言えなくて、娘は母親のために私がやらなくてはいけないと思い、受動型独特の誠実さ、真面目さと母親の積極奇異さが上手く噛み合ってしまい、共依存関係になってしまうということはよくあります。

母親から否定されているパターンもあります。
「あんたはダメな奴ね」とよく否定されたり、母親が普通の人で「なんでこの子はこんなミスをするんだろう?」「なんでこの子は喋るのが下手なんだろう?」ということで、「あんたダメね」と言って小言が多くなってしまうパターンです。

母親自身も全て否定しているつもりはないのですが、親から言われた言葉は子どもの心に残るので、嫌な言葉だけ覚えていることもあります。
親から否定されたことがない人、あまり否定されてこなかった人は、上司の一言や先輩の一言を想像してもらうと良いと思いますが、妙に覚えてしまうことがあります。
「上司はどう思っているのかな」と考えてしまいます。
結局は何も考えてないのですが、上司なんて。だけどすごく気になってしまいます。

母親自身もASDの受動型だとネグレクトになることもあります。
色々なパターンがあって親子問題が上手く行かず、だから自分のことを否定してしまいます。
子どものときに身近にいた人が否定してしまうので、自分のことを価値がないと思いがちだったりします。

悪い男性に騙されることも多いです。
母親からある種の教育をきちんと受けていなかったり、両親の夫婦仲が悪いから同じような男性を選んだり、母親に似た過干渉で依存傾向のある男性を選んだり、色々なパターンがありますが、良い人を選べないことが多いです。

そしてうつになって不安になり、不安が多いので過敏になっていることが結構あります。
不安なときは警戒しているので色々なことに対して過敏になります。
元々の発達障害の過敏さというのもあり、不安の過敏さと発達障害の過敏さで、過敏さがどんどん助長します。
自分の細かい体調の変化に敏感で、変化が起きるたびに「自分は病気になったんじゃないか」と思って不安になります。
ちょっと動悸がする、ちょっと自律神経の眩暈があったときに、過度に不安になり、不安になるからまた自分の中の体調変化に敏感になる、ということがあります。

この悪循環があり、耐え切れない、とウヮーッとなって、興奮したり怒ったり「死ぬしかない!」と思ってしまうということがあります。

これが発達障害の人によくあるパターンです。
グルグル悪循環してしまっていることが多いです。

職場でひとりで残業しているときによく言うのは「皆はそんなに長く残業していないでしょ?」と言うと、「曜日に仕事をしているんです」と言います。
「来てもみんな1~2時間で帰るんじゃない?」と言うと「う~ん」と言ったり、「うまくサボってるんじゃない?」と言うと、患者さんは不思議そうな顔をして「でもルールですから」と言ったりします。

夜の赤信号を皆は渡ります。
でもそれを律義に守ってしまう。
そういう誠実さ、うまく出し抜けない感じというのが悪化させているということもあります。
こういう悪循環があります。

治療

治療はどうしたら良いのかというと、悪循環のどこか1個を断てば良い、というものではありません。
一個一個、全部微調整していく必要があります。

例えばADHDのミスや衝動性は薬が効きます。
ここで薬を使うと悪循環の高速回転がちょっと緩みます。

職場でミスが多い、混乱しやすいのであれば、SST(生活技能訓練)やCBT(認知行動療法)など、本人の特性を踏まえて、特性に合ったトレーニングをすることで、職場でのミスを防げるようにしていきます。
100を0にしようとするのではなくて、100を50、40、30に減らしていきます。
そうすると悪循環の回転が少しゆっくりになります。
自分がダメな奴という認識も少しずつ減っていきます。

親子問題も「あなたが本当に悪かったの?」という話をします。
母親にも問題があったのではと理解を深めていくことで、自分はダメな奴という思い込みを減らし、うつを軽減していきます。

悪い男性がいる場合は、あなたが悪いんじゃなくてコイツが悪いんじゃないの、という話もします。
最初は惚れているのでなかなかそういう風に思えないし、私が悪い、という頭になってしまっていますが、コイツが悪いのは元々の親子問題など色々あったのかもね、という話をしながらゆっくりやっていけば治っていきます。

主治医は自分が初めて見つけてやったという気になるかもしれませんが、そんなことはなくて、患者さんはすでにこうしたことは皆からアドバイスを受けています。
僕が言わなくても似たようなことは友だちが言っていたりもします。

全部を言わなければいけないと焦る必要はなく、ちょっと言うとあるタイミングで色々なことが繋がって、日常の中から色々なヒントを得て一気に良くなることがよくあります。
なので全部を言う必要はありませんが、この循環を少しずつ緩めてあげることは重要です。

感覚過敏に関してはリスペリドンなどの薬が効きます。
うつや不安に関しても抗うつ薬を使うことも場合によっては考えます。

「死ぬしかない!」と発作的になっているときは、クールダウンする必要があります。
マインドフルネスなどを利用しながら、落ち着く呼吸法や落ち着くスキルを身に付けてもらうことも大事です。

衝動性が強い場合は、コンサータ、ストラテラ、インチュニブの中でもインチュニブを使うと結構良いかなという気がします。
感覚過敏とからめてリスペリドンで抑えてあげるとか、オランザピンで抑えてあげる、クエチアピンで抑えてあげるということもあります。
とっさの時に使う頓服的な薬も有効だったりします。

あとは本人は自信がないので非認知能力も含めて評価してあげるのが重要です。
本人の良いところを評価するというよりも、あなたにはグリッドみたいな力がある、誠実性という力がある、という言い方で言います。
長所があるというと日常的に使われていて手垢がついて陳腐な感じがするので、非認知能力のこの部分が高い、という言い方をした方が入って来やすいということがあります。
それを踏まえて本人の能力やスキルを向上させていく、得意を伸ばす、苦手を減らすことが重要かなと思います。

とにかくここだけを良くすればいい、というものではありません。
全体の流れを見て、今日の診察はここをテーマに、次の診察はここをテーマに、と少しずつ緩めていく、流れを抑えていくことで良くなっていきますから、今日はこれ、今日はこっちの調整、と色々なやり方をして段々この悪循環を減らしていくことがとても重要です。

治療はどうしたら良いのかというと、1個だけに集中するのではなく、全体を見ながらそのときやった方が良いこと、そのときに一番困っていること、そのときに患者さんが一番興味や関心のあることを議論して治していくことが重要かなと思います。

今回は、発達障害(女性)の治療について、何となくこういうパターンが多いよねという一例を取り上げてみました。


2022.4.19

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