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メタ認知を治療に活かすとは?

01:08 自信がない
03:52 嫌われている?
06:37 主治医への怒り

本日は「メタ認知を治療に活かすとは」というテーマでお話しします。

僕の動画もそうですし、インターネット上の情報や書籍などで「メタ認知が大事」と書かれていることが多いと思います。
メタ認知とは、俯瞰的にものを見たり、いろいろな角度から物事を捉えたりすることを言います。
これが大事だと言われていますが、なぜ大事なのでしょうか?
治療上、大事なのは何となくわかりますが、説明しろと言われてもなかなかできないかなと思います。

今回は、具体例を用いてメタ認知の重要性を語ってみようと思います。

自信がない

1つ目は「自信がない」というパターンです。
誰々と比べて劣っている、誰々と比べてダメなんだな、などとよく思いますよね。

狭い集団の中にいると、比較して自分はダメなのではないかと劣等感を感じやすくなります。
若い時というのも、早く一人前になりたいと焦っていますし、仕事ができないなと思いがちです。
誰々より出世が遅い、恋愛がうまくやれていない、仕事がうまくやれていないなど思います。

これはどういうことかと言うと、サンプル数が足りないのです。
若い人は特にそうで、経験が足りません。だから俯瞰的に考えたり、色々なバージョンで考えることができません。

色々な経験を積んだり様々なことを知ったりすると、自分というのが人と比べて真ん中くらいだったり、真ん中より少し下だったり上だったり、下から数えた方が早かったり、上には上がいるし、下には下がいる、ということがわかります。

また、時代を超えて考えてみると、今はあの人は優れているけれど昔だったらそうでもない。
自分は昔だったら不幸かもしれないけれど、現代だったら幸せだ、など色々なことが考えられます。
確かにそんなに上ではないかもしれないけれど、幸せだよねと見えます。

数を増やして俯瞰的に考えてみると、自分が狭いところで考えていたことがわかります。
もっと長い目で、人生全体を使って、色々な時代のことや大きな集団のことを考えてみると、自分の悩みなんかちっぽけだなと思えるのがメタ認知の1つです。

大きなもので考えると、自信があるとかないとかそんなに大したことではありません。
大した影響は与えません。

嫌われている?

これもよく思いますよね。
「誰々さん声を掛けてくれないけど、機嫌を損ねてしまったかな?」などと思いますよね。

僕もよく思います。
ウチのクリニックの事務員さんや奥さんもそうですが、挨拶をした時に「あれ? なんか違うな」と思うと、「あれが良くなかったかな?」と自分の記憶をガーッと遡って、「あの時なんか偉そうな言い方をしちゃったかな」「ちょっと失礼だったかな」と思い直します。

それ以外にも上司に目をつけられてしまったなど色々あるかと思います。
サラリーマンをやっていれば人生に一度は冷や飯を食う期間はあります。人によっては二度三度とあるかもしれません。

ですが、多角的に考えた方が良いです。
・この人はみんなから嫌われているのでは?
・2年で異動するのでは?
・今回はたまたま自分がターゲットだけど、またターゲットが変わるんじゃないの?
などと、色々な方面から考えていきます。

視野が狭くなり、自分の感情の中で「ああなのか、こうなのか」「嫌われているのか、嫌われていないのか」という一軸で右往左往するのではなく、色々な方向から考えて総合的に見ます。

結局、人に嫌われていようがなかろうが、大した影響はありません。
あったとしても目の前のことに集中する以外ありません。
そしてターゲットが移るのを待ちましょう、ということです。

執着したり恨みを晴らしたいと思ったりすると、あまりうまくいきません。
多角的に分析して自分が一番有利な方向に向かう。たとえ損をしても、「損して得取れ」という言葉がありますから、合理的に考えていく、自分の気持ちに囚われないことが重要です。

主治医への怒り

主治医に対してでも何でも良いのですが、腹が立つことってありますよね。

「なんなんだあいつ」となるのですが、帰り道にふと気づきます。
「あれ? 何でそんなに怒るのかな」「益田先生に対して何でそんなに怒るんだろう」と。
確かにそっけない感じだったし、自分の気持ちを聞いてくれなかったけれど、そもそもなぜ赤の他人に対してそこまで怒るんだろう、と思うわけです。

そうすると、「これが投影か」と気づきます。
なぜ益田にあんなに期待していたんだろう、なんで益田に対してあんなに助けて欲しいという気持ちでいたんだろう、なんであんなに怒ってしまったんだろうとなると、これは投影(または転移)だったんじゃないかとなります。

自分が子どもの時に母親に助けて欲しかったけれど、その母親の姿を益田に重ねているのではないか、理不尽に怒っていた父親を益田に重ねていたのではないか、自分の弱さに対して腹が立っているけれど、その弱さを益田に投影同一視していたのではないか、そういった見方になります。

投影、転移、投影同一視がぐちゃぐちゃになってしまったのでもう一度説明します。

投影…自分が怒っているけれど、自分の怒りに気づかず、相手が怒っていると感じる。
転移…心の中にある父親像や母親像を、主治医や別の人に重ねて、その当時感じていた感情をぶつける。
投影同一視…自分の中にある感情や概念を相手に重ねて怒る、悲しむ、怖がる。

このような無意識に気づくのがメタ認知です。
これは結構難しいです。
これが無意識なんだというのはなかなかわかりません。
臨床をしていてようやくわかるようになってきたという感じです。

なんでこんなことを言われなければいけないんだろう、ということがあります。
SNSをやっているとありますよね、「なんでこの人にこんなに文句を言われなければいけないんだろう」ということが。それは見ず知らずの人がこちら側に投影や転移、投影同一視をしているからです。

これに気づけるかどうかはメタ認知能力に差が出ます。
メタ認知能力が高いと「あ、そういうことか」と気づいて、グッと良くなることがあります。
医者に怒った後、「あの時はすみませんでした」と謝る時はグッと良くなることが多いです。
もちろん医者が悪かったパターンもあると思いますが、極力ないようにしていますし、あったとしてもこのように思えたら良いかなと思います。

今回は「メタ認知を治療に活かすとは」というテーマでお話ししました。


2022.5.31

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