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薬は飲まないのに、通院している意味は?

00:50 薬が必要
03:49 福祉のため?
05:10 会話(精神療法)のため

本日は「薬を飲まないのに通院している意味はあるのか?」というテーマでお話しします。

精神科には、薬の治療をせずに通院している方もたくさんいます。
そういう場合、周りの人が不思議に思ったり、本人も「通院していて良いのかな?」と疑問に思ったり、「通院していたら悪いのではないか」と思ったりすることが多いです。

ですが、薬だけが治療ではありません。
今回はその話をしようと思います。

薬が必要

とは言っても、薬が必要な疾患はあります。

◎うつ病、双極性障害、統合失調症
薬が大事なのは、難治性疾患と呼ばれる「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」です。
これら3つの疾患は、そもそも薬がよく効きます。
「益田はそう言うかもしれないけれど、自分はそう診断されて薬を飲んでるけど全然効いてないよ」と思うかもしれませんが、飲んでいなかったらもっと調子が悪くなります。

うつ病ならば抗うつ薬、双極性障害ならば気分安定薬、統合失調症であれば抗精神病薬を飲むことがとても重要です。
急性期だけでなく、再発予防のためにも薬は重要です。

○強迫性障害、発達障害、アルコール依存症
できるだけ飲んだ方が良いのが、「強迫性障害」「発達障害(ADHD)」「アルコール依存症」です。
アルコール依存症にナルメフェンは結構効きます。

この辺も脳の異常がなんとなく見つかってきています。
精神科の病気はなかなかわからないことが多く未知のものが多いのですが、うつ病、双極性障害、統合失調症もそうですが、強迫性障害、ADHD、アルコール依存症も脳の病気だということがだんだんわかってきています。
これらも薬が効きますので飲んだほうが良いと思います。

強迫性障害であれば抗うつ薬(SSRI)、ADHDであればコンサータ、ストラテラ、インチュニブのどれか、アルコール依存症であればナルメフェンなどです。

飲んでいる中で調子が良くなったら、薬は止めたら良いと思います。
調子が悪い時は飲んだ方が良いと思います。

△不安障害
不安障害、パーソナリティ障害、PTSD、摂食障害の場合は、薬は補助的に使うイメージです。
薬だけで治すものではないのであくまで補助的に使い、メインは対話ということが多いです。

このように、薬を使う疾患はメインは3つくらいです。
そう考えると精神科は意外と薬を使わないとも言えます。

福祉のため?

薬と会話と福祉(環境調整)の3つをもって精神科の治療となりますが、「福祉」のために通院が必要だというのも見方によってはできます。

診断書が必要、適応障害で休職中に薬は使わずに治療をしているが、傷病手当金の申請のために通院しているといったことがあります。

自立支援医療、精神障害者手帳、障害者年金の申請書類のために通院することもあります。
精神障害者手帳は通院から半年経つと取れる福祉サービスです。これが必要で通院している人もいると思います。
通院して1年半経っても回復しない場合は障害者年金の申請ができます。
病気のために生活保護を受けていて通院している人もいると思います。

会話(精神療法)のため

見方によっては福祉のためとも言えますが、でもやはり対話的な治療、精神科の精神療法を受けるために通院している人がメインになります。

「会話で治るんですか?」と思われるかもしれません。
そのような神秘的なことを起こせるかというと、半分そうだし半分違うとも言えます。

患者さんは苦しいのを取り除いてほしい。
適切な診断をして、薬を出してもらい、どうにかしてほしい。今の自分に合った薬を出してもらって少しでも楽になれば良いと言います。
でもそういうことはありません。

会話だけで治していくのは難しいのですが、主体的に本人が取り組んでくれれば心が軽くなることはたくさんあります。

対話をしながらどのようなヒントをもらい、どう日常に活かせるのか。
僕らは向き合います。
「向き合った人」と何を話すかがとても重要です。

患者さんは、きちんと向き合ってもらった経験が少ない人が多いです。
家族、恋人、職場の人がきちんと向き合ってくれた経験がない人が多いです。

日常生活を送っている健康的な人は、そうやって向き合ってくれる誰かがいますが、向き合う相手を手に入れられなかった人も結構います。

恋人や家族がいても、会っている間は常に酔っ払っている。飲んでいる時しか会話をしない。忙しいから会話をしない。楽しい話題、旅行に行く話はよくするけれど、悲しい話や真剣な話は全然しない。
そのようなことです。

ですが僕らは、悲しみやお金のこと、困りごとに真摯に向き合います。
そのような話を一緒にして、何を見出すのか、ということなのかなと思います。

生い立ちや家族について話すことで自分の過去を整理する。自分の生き方や価値観を整理する。
僕らは欲望に歪められています。自分が見たいものを見るようにできています。
ですから、正しく世界を認識することはできません。
自分が調子が悪い時は世界は暗く見えますし、自分が弱っている時は上司に意地悪をされているような感じがします。
自分が調子に乗っているときは、周りの人がバカに見えたりします。

そういうことは人間の本質ではありますが、人と会話をすることでそのようなバイアスを抑えていきます。
向き合った人と話すことで、世の中を「あるがまま」に見られるように調整していきます。

また、目標をきちんと持つと今自分がやるべきことと捨てて良いものがわかります。
楽観性や誠実さを手に入れることも重要です。
でもこのような経験はなかなかなかったりしますし、目標を持てと言われたこともなかったりします。
そういうことも話したりします。

でも、目標と言っても「就職する」のが目標というわけではなかったりします。
それだけが目標ではありません。
人に優しくなる、自己理解を深める、相手の態度や心理を理解するなど、全てが目標です。
何か自分なりに診察にあたり、どのような心構え、気持ちで臨むのか、どういうことを活かしたいのかを考えることが重要です。

とは言いつつ、人によってはなかなかそれができない人がいます。
発達障害や境界知能の問題、虐待が酷くてそもそも人生に前向きになれない、依存症の問題で投げ出してしまう、といったパターンもあります。
その場合は、5分や10分の診察の枠組みだとなかなか積極的に取り組めなかったりするので、もう少し積極性を促すためにワークショップやデイケアを利用するのもあるのかなと思います。

「向き合った人」と何を話すのか、が大事なテーマになるのかなと思います。

周りの人は、精神科に行って精神科医や心理士さんと向き合って話していく、ということが理解できないことはあると思います。
それは、健康的に過ごしてきた人はそんなに向き合わなくても良かったのかもしれませんし、特殊な状況なのでよくわからないかもしれませんが、「向き合う」ということをうまく皆さんの人生に活かしてもらえたらと思います。


2022.6.4

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