承認欲求の動画2回目です。
1回目では、嫉妬や劣等感は承認欲求の裏返しであること、他者から認められたいという欲求が自分の中でコントロールできないためにつまずいてしまう人が結構いる。また、誰からどのように認められたいのかをはっきりさせる必要があるというお話をしました。
2回目の今回は、診察の中で母親との関係を聞くことがありますが、どのような目線で聞いているのかを動画を見ながら考えていただければと思います。
コンテンツ
母親とは?
赤ちゃんにとってお母さんとは何でしょうか。
母乳やミルクを与えてくれる(空腹を解決)、オムツを交換してくれる(生理的不快感を解決)、乳首がある(退屈しのぎ、身体的な遊び、不安の解消)、語りかけてくれる(言語や知性、知的な遊び)といった「全能」の存在です。
全能であるがゆえに「羨望(強烈な憧れ)」があり、同時に強烈な「分離不安(離れるのが怖い、離れたくない、独占したい)」に襲われるといわれています。
と、このように語っていますが、これは分析的ファンタジーと言われるものなので、事実(科学)ではありません。精神医学では常識として広まっていますが、それでも一つのファンタジーということは付け加えておきたいと思います。
女性から見た子供
・メリット
かわいい
母性本能(オキシトシン)
生きがい(アイデンティティを与えてくれる)
仲間?(家族、兄弟の面倒を見てくれる)
話し相手?
相談相手?
・デメリット
手間がかかる(お腹にいる間、生まれてから)
お金がかかる
言うことを聞かない
トラブルのもと?
仕事・恋愛の邪魔?
子どもが母親を求めるほど、母親は子どもを求めないということはあります。母親には自分の社会があるためです。それが子どもの不安や罪悪感を呼び起こすのですが、健全なものであったほうが良いものです。逆ギレして完璧な母親を押し付けるのは健康的ではありません。
二者関係で問題が起きるとき
・母子密着
母親と子どもが適度な距離でいるのが良いのですが、近すぎると問題があります。
子どもは母親を独占したいので父親などの他者を排除し、母親もそれに共謀してしまいます。そうすると子どもの自立を妨げることになりますし、母親自身の自立を妨げることにもなります。また、くっつきすぎていると友達や恋人ができない、上司ともうまくいかないなど他者と付き合えなくなります。
・冷たい母親
近すぎるのも問題ですが、遠すぎるのも問題です。
母親のことを信用しにくい場合、誰に頼れば良いのか本能的な距離感としてわからなくなってしまいます。その結果、大人になってからも感情で人を判断することができず、性、お金、地位などで納得するといったことが起こります。
関係性を見つめ直す
精神科の診療の中でこのような構造、関係性を見つめ直すことが大事で、そうすればその人の個性やキャラクター、価値観が解明されていきます。一歩引いたメタ視点を持てると全体を把握しやすくなり、どのようなことが起きているかわかってきます。そうすると、今の人間関係のトラブルの理解に応用をすることができます。
こういう話に慣れていない人は今回のような話に嫌悪感を抱くと思いますし、臨床の場でも時々患者さんに言いますが、これは「真実でなくても良い」のです。物語的に納得できれば良く、すべて真実である必要もありません。
真実をどんどん突き詰めていくと言うことではなく、どこか良いところで妥協する、どこかでなるほどと思い今の自分の生活をより良くしていければよいのです。ということであくまでファンタジーではあるのですが、大事なファンタジーです。
以前、脳科学者の池谷さんがAIが理解できるように脳は理解することができないと仰っていました。人間の脳に理解できるようにするにはある程度情報を省かなければならないと言っていて、それはすごく納得しました。僕らは物語でしか理解できないところがやはりあり、物語は登場人物が多すぎると混乱します。適度な情報量、適度なモデリングというのがあります。
今回は承認欲求について語る上で、母子関係とはどういうものなのかということを考えてみました。
心について考察
2021.1.3