今日は「五月病とはどういうものか」について解説しようと思います。うつと季節性、気圧、天気との関係についても解説します。
五月病
五月病は正式な医学病名ではありません。ですので五月病という病気はないのですが、皆さんがどのような意味で使っているのかを医学的に解釈するとこのようになります。
・新生活からくるストレス性うつ
4月から始まる新生活に伴ううつを五月病と言っていると思います。4月は進級、進学、就職など慣れない環境で頑張る時期で、その疲れが出るのが5月です。ストレス性のうつは「適応障害」と言ったりします。
・欧米では1月病、9月病と言う
1月病というのはクリスマス明けということです。どんよりしていてつまらないなあという感じです。
9月病というのは8月にバカンスがあるのでその後に落ち込む人が多いようです。
・来院患者さん→6~7月に増える
5月になったら患者さんが増えるのかとよく聞かれるのですが、患者さんが増えるのは6月から7月にかけてです。
パターンとしては:
5月ごろに調子が悪くなり→誰かに悩みを相談し→友情、恋愛関係が深まり→夏になったら弾け→そのまま良い感じで行くor 秋ぐらいに元々の病理なり会社の構造の欠陥により潰れてくる人もいるというのが1つです。相談できない人はそのままグーっと落ち込んだまま秋を迎えます。
5月の時点でダウンしていても、そこから復活する人もいればなかなか復活できない人もいます。コロナの時と似ていますね。始まった頃は皆どんよりしていましたが、コロナが始まって1年が経ち、景気の良い業界もあればそうでない業界もあります。在宅勤務が増えて仕事量が減って精神的に楽になったという患者さんも結構いますが、一方で人に会わなくなり、コロナという変化についていけなくて落ち込む人もいます。明暗がくっきり分かれるところです。
うつと季節性、気圧、天気との関係は?
研究はされてはいるのですがまだよくわかっていません。
「季節性うつ」というのはおぼろげながら知られていて、主に冬場が多いと言われています。統合失調症や躁うつ病の人は季節の変わり目に病状が悪化することはあります。
睡眠–覚醒障害や過食症は冬場になると症状が悪化すると言われています。冬の方が寝すぎる、食べすぎるということです。なんとなくそうかなという気はします。僕も冬の方が脂っこくて味の濃いものを食べてしまいます。脳の機能としては、眼窩前頭皮質、左頭頂下葉の活動が低下することがわかっていますがまだ研究段階です。
治療としては光をバッと浴びることでうつを治す光線治療というものもあります。日サロみたいなものですが、やけどの問題もありあまり普及していません。
気圧や天気については、夏と冬ほど大きな違いがある場合でもよくわからないわけですから、気圧や天気などの微妙な差はより研究しづらくてよくわかっていません。でも患者さんの訴えでは気圧の変化があって調子が悪いです、天気が悪くて調子悪いですという人は結構多いです。文化バイアスと言うには皆さんが言うので違うのではないかという気はします。100年後の生物学に期待です。
臨床では、冬で調子が悪いから薬を変える、というようなことは特にしません。なんとなく調子が悪くなる人が多い時期ですから警戒してくださいねとアドバイスしたり、皆さん調子悪いと言いますからあなただけではないですよと共感を示してほっとしてもらうという感じです。
たまにいますけどね、本当にこの時期になると絶対うつになる、絶対そう状態になるという人が。
いずれにせよまだ医学的にはよくわかっていませんので、治療としては季節性のうつであってもなくても同じうつ病として治療をするということです。
ちなみに今日は雨が降っているので僕のアトピーがめちゃくちゃ悪いです。顔が赤くなって痒いです。天気が悪い日、天気が悪くなる前日はかなりアトピーが悪化します。ではまた。
参考(2021.5.1)
救急受診患者における精神科疾患患者数の季節性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/20/9/20_9_763/_pdf